自分の娘に手ェ出すんじゃないわよ
「どーすんのよアンタこれ」
「俺に言われても……」
「ぱぱ、まま」
目の前に現れた全裸の金髪巨乳エルフちゃん(制作:俺の妄想とマゴリアの魔法)は、ぱちりと目を開けて開口一番そんな事を言い出してしまうのだった。
「小鳥の雛は初めて見たものを親と思い込む性質だな……刷り込みって言うんだけど」
「知ってるわよ、ってかコレ、解除して良い?」
マゴリアはせっかく作ったエルフを魔力解除で元のマテリアルに戻そうとする。
まぁ、戦力にはならなさそうかな……これは解除して良かろう、と俺は頷く。
しかし。
「あら?なんで……魔力は回収したのに、マテリアルに戻らない……」
マゴリアは困惑する。
「えっ」
これまで一度もなかった事だ。
伝説の宝具とかを具現化できたら固定化して使おうという話はしていたが、役に立たなさそうなものはマテリアルに注いだ魔力の無駄遣いを少しでも減らすため、マゴリアが自らの身体に戻していた。
その結果、生成された生物や物体は、元のマテリアルに戻るはずだったのだ、が……。
「おかしいわね。別にあたしの魔力が吸い続けられてる訳じゃなさそうだし、純粋にマテリアルにこの生成された肉体が定着して離れないのかしら……困ったわね」
「戻せないならどうするんだ?」
「物理的にマテリアルを破壊すれば多分マテリアル自体は回収できるけど……色々勿体ないわ、貴重なのよ?マテリアルって」
「まあお前、初日からずっと同じ球使ってっしな」
物理的に破壊、という言葉を聞いて俺も顔を顰める。
いくら人工的に生み出したとはいえ、生き物を殺すのは抵抗がある。とはいえ、
「しょうがないわね……新しいマテリアルはおいおい用意するけど、その子は何かに使えないか、しばらく飼ってみましょう」
などとマゴリアが言い出すのも意外ではあった。
「良いのか?」
「まあ……エルフなら魔法を使える可能性もあるし、すぐ破棄するにはちょっと、ね。生命倫理なんて面倒なしがらみからは私たち魔道士は解き放たれるべきなんでしょうけど」
と、どうやらマゴリアも生み出したエルフの娘を殺すのは忍びない、と言いたいらしい。
「んじゃまあ、名前と……あと服を用意しないとな……」
俺は赤子のように無垢な瞳で俺とマゴリアを父、母と呼ばわる金髪巨乳エルフちゃんに『マリル』の名を与えて、服を着せてやるのだった。
◇
「ぱぱ、あそんでー」
「ごめんねマリル、俺とママはこれからお仕事しなきゃだから」
「ナチュラルにママ言うな。まあ別に良いけど」
マリルが生まれてさらに5日。
元に戻す事は出来ないまま、修業は続く。
「なぁ、全然戻る気配ないんだけど、大丈夫なのかアレ」
「もう無理かもね、マテリアルの反応はほとんどあの肉体に埋没して、完全に一個の生命体として息づいているみたいに見えるわ。あたしの魔力供給もなしにファンタズム・マテリアライゼーションの具現化がここまで強固に現世に留まれるって事例が一つの奇跡みたいなものだけれど、再現性がないから対処法も見つからないし」
冷静にマゴリアは分析する。
自分の魔力を失わない以上、単に食い扶持が一人増えた程度の認識らしい。
マゴリアはそこそこ優秀な魔道士らしく、俺と共に具現化修業をする以外の時間は基本的に仕事をしている。
魔法薬の研究、マジックアイテムの取引、魔物討伐……
故に、マリルの世話とかの些事は俺に一任すると言って、放任状態である。
くそっ、旧態依然とした価値観に縛られる気はないが、まるでヒモじゃないかと悔しい思いに囚われる。
「アンタはその子の世話と妄想に励んでれば十分だから気にしないでよ」
その事をマゴリアに思わず愚痴ってしまった時は、まるで健気な妻のような事を言われてしまい、ますます俺の立つ瀬はなくなってしまうのだった。
マリルの世話は基本的に楽しい。
手足が伸び切っているので、赤ん坊とは違ってある程度自分の身の回りの世話はできるからである。
彼女の世話の大半は、知識を覚えさせる事だ。
しかし、いくら言っても……
「ぱぱー、おふろー」
「マリル、それは悪いけど自分一人でって何度言ったら分かるの!?」
こんな身体のマリルと一緒にお風呂なんか入ったら、理性が保ち切れるわけがない。
その様子を横目でジトっと眺めながらマゴリアは呆れる。
「……自分の娘に手ェ出すんじゃないわよ」
「娘でもない!!」
俺の抗議は虚しくマゴリアの家中に響き渡るのだった。
妄想★マテリアライゼーション!8話をお読みいただきありがとうございます。
金髪巨乳エルフの形に具現化されちゃったマリルちゃん、精神は赤ちゃんで肉体はヤバヤバなのでみたいな感じでオスオミくんも困り果てております、的な。
擬似家族なネタははたらく魔王さま!で楽しく読んでましたが、マゴリアは別に嫌がってる感じじゃないっすね。故に擬似ハーレム。
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