スケベ心も程々にしなさいよね
マゴリアとの同居生活が始まり3日。
別にラッキースケベ展開とかはなく穏やかな日々と修業が続いていた。
「違うって!もっと具体的な形状を考えて!アンタ以上に妄想に長けた人間そうそういないんだから!」
「いや……つっても、ビジュアルイメージの具体例が……欲しい……」
相変わらず魔剣だの魔槍だのの具現化は上手くいかない。
あれからハムスター以外に成功した具現化は、犬とか猫とかの大きさの動物、タンスとかテーブルくらいの大きさの無機物、調理済みの飯(因みに味は普通だった。俺が自炊経験あればもっと美味しくなったはずよ、とはマゴリアの弁である)、など地味で役に立ちそうにないものばかりだった。
「あー疲れた……魔力ゴリゴリに消費しちゃったわ、休憩にしましょう」
「そうだな……俺も、妄想する事がこんなにしんどいなんて思わなかった……」
妄想こそが安らぎだと思っていた俺だが、修業となるとやはり別というか、妄想を現実にするのは、なかなか容易い事ではないようだった。
「あー汗ぐっしょり……着替えないと」
いつぞやの露出度が多い服は召喚用のイベント衣装だったらしく、あれ以来修業時は普通の貫頭衣みたいなゆったりしたローブを纏っているマゴリア。帽子は相変わらずとんがりだが。
マゴリアは帽子を脱ぐと、額に張り付いた前髪を軽く指で払って、後ろは結んでポニーテールにした。
「首回りが暑いのよねぇ……とはいえ坊主にするのは嫌だし、下手に髪を切るのは魔女としてはあんまり」
「髪の毛を奪われると誰かの言いなりになるからって?迷信だろ」
「伝統って言いなさい」
「はいはい」
そんな感じの話もなんかで聞いたなー。
俺はポニーテールにしたマゴリアも可愛いな、なんて思いながら見つめる。
緩いカーブを描くツリ目、艶やかな黒髪、初日に見た上に揉んじゃったのでハッキリ覚えてるが、体のラインがまた
「スケベな事考えてる目ね、オスオミ。アンタ、分かり易すぎるわよ」
ジトっと睨まれ慌てる俺。
「いやごめん、出会いが強烈だったから」
「まー夢だと思ってたんならしゃあないけどさあ」
あの時は散々ビンタされたので、マゴリアも許してくれてはいるようだ。
「アンタのその逞しい妄想力、人間一人生み出せたりしないかしらね」
何を言い出すのだろう。
「マゴリア、処女は捧げないって言ってたじゃないか」
「何言ってんのバカなの?あたしとアンタで子作りじゃないわよ、ファンタズム・マテリアライゼーションで生み出すに決まってんでしょ」
お前の言い方も悪いだろと思いつつ納得する俺。
人間一人ねえ。
「でも人間を生み出すなんて大変そうじゃないか?そもそも、人間生み出しても戦力になるのかな」
「それが特殊な能力を持っていたら別よ」
ああ……なるほど。
どうやらマゴリアの言いたい事は理解できた。
「例えば伝説の勇者とかを生み出せば戦力になるだろって話だな」
「そういう事」
でもその発案はそう言えば、口にはしなかったが俺自身がハムスターを生み出す前にマゴリアから提案されるかなと思っていた案の一つだった。
なら、それは着想として悪くはない。
むしろ、自分の想像力がマゴリアのレベルに合わせて低下しているんじゃないか、と一瞬危惧したくらいだ。
いかんいかん、俺はもっともっと荒唐無稽な妄想を抱いていてこそだ。
過剰なくらいで丁度いい。
それこそが、マゴリアのファンタズム・マテリアライゼーションの真価を発揮するための触媒なのだから。
俺はマゴリアの提案に乗ってみる事にして、改めて気合を入れ直す。
「じゃあ、そうだなあ。勇者とかめちゃくちゃ強いやつをいきなりだとまた伝説の武器みたいな事になりそうだし、もう少しハードル下げないか?」
「そうね。んー、何が良いかしらね」
俺は思案する。
魔法使い、戦士、僧侶、盗賊、ハンター……およそあらゆるファンタジー系の職業を想像してみる。
と、想像している最中にマゴリアが言う。
「アンタが一番連想しやすいやつで試して、慣らせば良いわよ。それが入り口として多分一番早そう」
「連想しやすいか」
「この世界に来て、こういう存在がいないか、とか、いたら良いな、みたいな想像」
「うーん……あ」
「何か思い立った?」
「一つある」
俺はそれを思い描く。
「じゃ、試してみましょうか」
俺は妄想する。その姿を、目の前に居るかのように想像する。
マゴリアは俺の妄想を具現化すべく魔力を集中した。
そして……
『創造』
いつものキーワードが発せられ、マテリアルを包む魔力が肉を形成する。
そこには人型の何かが生まれた事が、包まれた光越しでもわかる。
「やった、成功……!」
と、俺とマゴリアは同時に歓声を上げるが、俺は固まった。
マゴリアも続いて、目を丸くして、呆れ返った。
「アンタ、ねえ……スケベ心も程々にしなさいよ……」
「ちっ、違うって!これはファンタジーの定番だろ!?」
俺は言い訳して目の前の光景から目を逸らすが、マゴリアの言いたい事も分かる。
だって、そこには。
金髪で全裸の、豊かな胸のエルフが転がっていたからである。
妄想★マテリアライゼーション!7話をお読みいただきありがとうございます。
オスオミ君の欲求不満は限界だな!の回。エルフちゃんは多分ハーレム要因として固定されるな。
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