お、俺に魔力ってあったの!?
「マゴリア、この書類どこにまとめれば良いの?」
「んー?それ、未処理だからそこに置いといて。ていうかアンタ、別にあたしの書類仕事なんかに付き合わなくていーのに」
収穫祭もひと段落し、俺はマゴリアがまたお得意様から依頼を受けたという魔法書の執筆やそれに関わる稿料の領収書らしきモノの処理をこなしているのを見て、何か手伝えないかとマゴリアの周りでソワソワしていた。
「手伝ってくれるのはありがたいけど、要領分かんないでしょ?無理しないでよ」
「そっか……まぁ、俺は魔法の事なんて分かんねえしなあ」
精々このクソ重たい紙束を運んでやるくらいの雑用しか思いつかない。
「マリルからの料理の授業とか家事の方は良いの?」
マゴリアからそう尋ねられたが、
「今日の分は終わってるよ……割と暇になっちゃってさ」
最近じゃ家事も料理も慣れてきちゃったので、俺は暇を持て余しがちになっていた。
「ふーん……じゃ、アンタも魔法の勉強してみる?」
するとマゴリアは妙な提案をしてきた。
「魔法???俺が???」
それは無理だろ……と思った。
俺はただの一般人であって、魔法を扱える才能なんてない。
あくまでも俺の妄想力っていう、元の世界じゃ役に立たないどころか人生の足枷になっていた悪癖が、マゴリアの幻想具現化魔法と相性が良かっただけだ。
なので、俺はすぐさま首を振って『それは無理だろ』と言ったが、
「無理じゃないと思うわよ」
とマゴリアはあっさりと言ってのける。
「何で?」
俺は純粋に疑問だったので尋ねた。
「魔法っていうのは、まあ、あたしのマテリアライゼーションなんかは特殊例ではあるけど、基本的にはイメージを力にする技術よ。自然の中にある様々な現象の再現、幻想の中にしかいない生物の召喚、本来なら人ならざるものにしか為し得ない数々の奇跡を現実化するわけ。だから、アンタのイメージする力っていうのは、ある意味で魔法の素質と近しいのよ」
長い説明だったので俺は良く理解できなかったが、なんか褒められてる?という雰囲気は感じ取れた。
マゴリアに褒められると嬉しいな。
俺は単純にそう思って自然と笑顔がこぼれる。
「でも俺、魔力なんて持ってないよね?」
「いいえ。魔力自体は多かれ少なかれ人体に普通にあるものよ。アンタの身体にも、普通にあるわよ?」
「え」
今日一番の驚きだった。
「えええええ!?お、俺に魔力ってあったの!?」
そんな不思議パワー、感じた事なかったぞ!
「そりゃあ、アンタは異世界の人間だから、魔力を扱うための訓練してないし。魔道士になるための訓練を積まなきゃ、誰も自分の魔力なんて普通は感じ取れないわね。天才みたいな人もたまにいるけど……あと生まれついて感じ取れるのは野生の魔物とか魔族とかかなあ……」
「そういうものなんだ……」
よくゲームとかで魔法を使えない職業のキャラはMPが0でそれ以上成長しないって設定になってたりするけど、アレはこの世界の法則からすると間違いなんだな。
この世界の人間は誰でもMPが多かれ少なかれ存在して、でも扱えないから無意味だったりする感じか……。
「ま、あたしが言うのもなんだけど、アンタ多分才能はあるから、良かったらマリルから教われば良いと思うわ」
「え、マゴリアが教えてくれるんじゃないの?」
てっきりそうだと思ったんだけど。
「あたし仕事あるし、手が空いたらね。まずはマリルと一緒に遊ぶ感覚で、簡単な魔法から覚えると良いわ」
ちょっと残念だけど、仕方ないか。
「分かった。じゃあマリルと一緒に魔法の勉強も明日から日課にするよ」
俺はそう言うと、さっそく俺と同様に暇を持て余してひとり遊びに興じていたマリルに声を掛けるのだった。
妄想★マテリアライゼーション、35話です。
雄臣君にも魔力はありました!という事実の開示です。
この『誰でも不思議パワーの源泉は身に宿している』設定って好きなんですよね。
古くはゴーストスイーパー美神における、横島が霊力に目覚める時の解説だったり、
比較的新しい有名どころならハンターにおける念能力ですか。
本人は意識できず垂れ流しているだけの魔力を、修業などで制御する事で扱えるようになる……
才能がないという劣等感を根強く持ち続ける雄臣君には、希望とも言えるかもしれませんね。




