で、ママとはちゃんと関係進められた?
「収穫祭なんていつぶりかしら。あんまり積極的に参加しようって思ったことなかったのよね」
「ちょうど良かったなぁ」
勿論、俺のこの言葉は韜晦であり、知ってて誘ったのだ。
王都ベルロンドはこの時期、秋の収穫祭で大賑わいであった。
結構強引に誘った俺だったが、マゴリアは楽しそうにしていた。
「おっ、見てみろよマゴリア。美味そうなもん売ってる。あれ何だ?豚肉?」
「虹色トカゲの尻尾焼きじゃない?微かに表皮の色が見えるわ」
異世界のよく分からんモンスターの肉を焼いてる屋台を見て、俺はへぇ~とマゴリアの言葉に興味深く耳を傾けた。
「食べる?元の見た目はけっこうエグい色合いのモンスターだけど、食肉用としてメジャーで人気だし」
「おう、食べたい食べたい!」
マゴリアが2人分ね、と虹色トカゲの尻尾焼きとやらを買ってくれた。
あ、因みに奢らせてる訳じゃなく、単純に財布(つうか支出とか収入)はまとめて管理したいマゴリアの性格上らしい。
……完全に大蔵省(言い方のセンスが古いか?)って感じだよな。
「はいどうぞ。あたしも屋台のトカゲ焼き食べるのなんて随分久しぶりで、どんなものか忘れかけてるわ……はむっ。……美味しいわね、こういうのもたまには」
「サンキュー。んぐっ……普通にうめぇな、味付けちょっと濃いけど」
屋台の食い物にありがちな、強烈に濃いソースだかなんだかのタレの味が本来の肉の味を若干隠してる気がするが、肉厚でジューシーなトカゲ肉はなかなかの味わいだった。
ジャンキーな食い物特有のB級グルメ感というか……まぁ、正直これ家で食いたいという感じじゃないけど、縁日で買うと美味く感じる、ってアレだ。
「マリルも連れてくれば良かったかしらね」
そんな風にマゴリアは言うが、俺は今日は2人きりで来たかったので適当に流す。
「ま、収穫祭はまだまだ続くしな。今度はマリルと来よう」
「そうね」
俺たちはそれから異世界の甘味だの軽食だのを食べ歩きしたり、大道芸人に湧く人混みで大笑いしたり、収穫祭の由来であったりをマゴリアから聴かせてもらったり……楽しい1日を過ごすのだった。
◇
「あー、お腹いっぱい!それにこんなに外を歩いたのも結構久しぶりね、楽しかった!」
「俺も腹に溜まっちゃったな。ふいー、お疲れ」
俺たちは収穫祭を昼から夕方までたっぷりと楽しんで、家に帰ってきた。
「お帰りパパ、ママ。収穫祭、楽しかった?」
「うん、すっごく!ママあんまりこういう事したことないから分からなかったけど、お祭りって楽しいわね」
「俺も楽しかった。マリルはお留守番ありがとう、今日はごめんな。明日はキチンと戸締まりして、3人でお出かけしようか」
「うん!」
別にセキュリティ的な不安があってマリルにお留守番を頼んだわけではないが、マリルもなんとなく俺の気持ちを察してくれて、じゃあ今日はお留守番してるね、と素直に聞き入れてくれたのだ。
いい娘だ……。
と油断していたら、マリルが急に俺に耳打ちしてきた。
「で、ママとはちゃんと関係進められた?」
俺は驚愕する。
「え、え、え、な、何がかな???」
マリルは呆れ、そして言う。
「キスくらいはしたのかなって。……でもその様子だと進展ないみたいだね」
ま、マリル……いつの間にそんな情緒を……
俺はマリルに見透かされていた事も驚きだったが、まさか自分の娘(娘じゃねえけど)からそんな話をされるとは思わず、動揺してしまう。
「ママも鈍感だから、パパの気持ちに気付いててもあんまり察してくれないんだよね。私から言うのもなんだし、すぐにとは言わないけど、いつかちゃんと言おうね」
母親(母親じゃないけど)との関係の進展について娘に諭される父親て……
俺は苦笑し肩を落とす。
「何話してるの?さ、今日はマリルの夕食はもう入らないし、せっかくだからお土産買ってきたわ。ほらマリル」
「わ、ありがとママ!美味しそう」
「ちょっと冷えちゃってるから温め直そうか」
マゴリアはマリルが俺に何を言ったのかは気付かず、お土産の屋台飯を取り出して見せた。
俺は気を取り直して、少し冷めてしまったその料理をフライパンで軽く熱する作業を始めるのだった。
妄想★マテリアライゼーション32話!
初のデート回、収穫祭です。
この話も『まちがいだらけのプリンセス』と若干リンクしてます(あっちで言うと2話くらいっす)。
あっちのキャラは一切出ませんが……。
そしてついに、シェリルだけでなくマリルにまでお前らはよくっつけや!と言われてしまう雄臣君……。
これ、ハーレムじゃなくなってきたよね。完全にマゴリア一択の流れ。
それにしても僕の書く横文字ヒロインの名前はラリルレロ系が多いですね。
レリア、リリエル、エルフィ、リエル、マゴリア、マリル、シェリル……
舌噛みそう。




