パパやママと離れて6年も暮らすの、寂しいな
「じゃ、烈風の剣3本目の製作を記念して」
「かんぱーい!パパ、ママ、おめでとう!」
「乾杯。ありがとマリル、久しぶりの魔力固定化でママ疲れちゃった」
魔力を使い果たしてげっそりした顔で、でも嬉しそうにマゴリアは言った。
マリルも俺も顔を見合わせて笑う。
「ねぇねぇ、3本目の納品っていつにするの?」
「そうねぇ……結局あれから、えーと……3週間?空いたのよね。言っても伝説級武器の納品にはかなりの早さだし、すぐに納品して次を期待させるのもなんだし、2週間後くらいに4本目作ってからじっくりタイミング見極めましょうか」
マゴリアらしい、慎重意見だ。
つまり最低でも2週間は手元に置いて保留。
4本目がキチンと出来ればペースも掴めるから、と考えると最大で4週間保留か。
「急に暇になると戸惑うね」
「もう既に結構暇……っていうか、余裕が出来てたけどね。そうだ、アンタの妄想が消えた件ですっかり忘れてたけど、マリルの入学手続き進めないと」
「そういえばそうだったね。でも、大丈夫?私、そんな急いで学校行かなくても平気だよ?」
そう、生活に余裕が出来た事で、魔法の素質がありそうなマリルをアカデミーへ入学させてやれば?と提案したのは俺で、マゴリアも同意して準備に取り掛かっていたのだ。しかしその矢先に俺の妄想消失問題が起きたので、棚上げになっていた。
「んーん。あたしもマリルが魔道士として育ってくれると嬉しいしね。アカデミーは全寮制だから、ここから離れて暮らすのが嫌じゃなければ、6年間みっちり修業してみるのも良いんじゃないかしら」
「えっ……」
そこでマリルが顔を曇らせた。
「アカデミー、全寮制なのか。じゃあ6年の間、マリルのメインの生活圏が学校になるんだな」
俺はシェリルさんとマゴリアが同室という話を聞いていたので、寮があるという話は知っていた。
しかし、通いの生徒もいるのかなと想像していたので、意外だった。
「特例はなくもないけど……基本的にアカデミーでの魔法の研究や修業って、統率された集団行動の中で研鑽を積むものだから……在野の魔道士みたいに、己の道を往くタイプじゃなくて、王宮の役に立つ研究を基本としているからねえ」
マゴリアは説明する。
なるほど。その考え方は、何となく理解できた。
「ううん……家から通ってご飯作れないくらいなら私、別に構わないと思ったけど……パパやママと離れて6年も暮らすの、寂しいな……」
と、マリルは生まれたての子供らしい意見を述べる。
「それもそうか」
俺は納得する。
知性や情緒の成長が著しいとはいえ、まだマリルは生まれて2ヶ月だかそこらだ。
いきなり親元を離れるのは、やはり抵抗があるだろう。
「じゃあ無理にとは言わないわよ。あたしが魔法教えてあげるし」
「……うん、暫くはそれでいい!気が向いたら、学校も行ってみたい、ってなるかも知れないけど」
マリルはそう言うと、ママ師匠よろしくお願いします、と頭を下げた。
「じゃあまだ暫くは3人一緒で生活できるな」
俺もマリルと同じ気持ちだったので、安心した。
俺たちはそれから雑談などしつつ、夕食の時間を終えるのだった。
妄想★マテリアライゼーション30話!
マリルちゃんのアカデミー入学の件。
忘れてませんよー。
まあ結果的には保留っす。
マリルが離れると雄臣君とマゴリアが2人きりになるしね……(僕の中のシェリルさんが悪趣味なニヤニヤ笑いを浮かべる)




