お帰りパパ、ママ。お仕事、大成功だったのね
「お帰りマゴリア、どうだった?」
「すっごく喜んでもらえたわ!ただ、その、ね」
俺たちが精製に成功した中〜上級の伝説武器『烈風の剣』を王宮へ上納して検分して貰ったところ、あちらでも反応は上々、これからも継続して武器の生成に励んで貰いたい、との言葉を貰ったらしい。
しかしマゴリアの表情は少し浮かなかった。
「なんで?マテリアルも新たに貰えて、何も言う事ないじゃないか」
俺は不思議に思って尋ねてみた。
「その、使用回数の制限とかはないのか?って訊かれて。……ええと、それは分からないです、って言っちゃった。迂闊よね」
ああ……それは確かに検証してなかったな。
「一応ね、王宮にもあたしが使ってるのと同じ魔力計測具があったから、試し斬りで減ってないか魔力を見たの。多分減っていない、って言えるレベルで誤差の範囲の目減りだったんだけど、あたし精製成功に興奮しちゃって、うっかり剣だけ持って行って、こっちで計測した記録を持っていくのも忘れたでしょ?だから心証悪かったかなーって」
意外と心配症な所を見せるマゴリア。魔道士としては優秀、なんだっけな。こういううっかりした事を反省できるのは彼女の美点だろう。
俺は彼女を励ますように言った。
「些細な事だろ。伝説級の魔法具を上納した功績の方が大きいと思うけどなあ」
「王宮の仕事なんだからそうは行かないわよ……ま、多少査定には響くと思うけど、手付金でこれだけ貰えてるし上等よね」
軽く落ち込む様子を見せたものの、マゴリアは気を取り直す。そして、ジャラリと重々しい音を響かせ、マゴリアは俺に手付金の入った皮袋を開いて見せてくれた。なんとそこには、今まで見たことのない量の金貨が入っており、燦然と煌めいていた。
「すご……これ日本で換金したら、暫く遊んで暮らせそう」
「させないわよ?」
「冗談だよ。でもホント、手付金でこれなら大成功だな」
「そうよね!マテリアルもこんなに貰えてたし、次も頑張りましょう!」
マゴリアはいつもの元気を取り戻し、俺に言うのだった。
俺も頷き、改めて気合いを入れ直す。
マゴリアのためにも、もっともっと妄想レベルに磨きをかけなきゃな……!
◇
「お帰りパパ、ママ。お仕事、大成功だったのね」
マリルは俺たちの様子を見て察したようだ。
「ただいまマリル!そうなの!ママの作った剣がね、すっごく評価してもらえて!ちょっと報告は失敗したけど、ほら、こんなに!」
「わ、凄い!今夜はご馳走にするね」
「マリルのご馳走、楽しみだな」
最近ますます料理の腕が上がり、本家であるマゴリアを超え始めているマリルは、すっかり俺たちの胃袋の管理人となっていた。
それから俺は食材の買い出しにマリルと共に向かい、マゴリアは研究成果のレポートを改めてまとめていた。
帰宅してマリルの料理が出来上がる間、俺はマゴリアの手伝いをして過ごした。
やがて夕餉の時間になり。
「パパ、ママ、ご飯できたよ〜。今日は張り切りすぎちゃった!」
「すっごいわね。あたし、多分こんなに美味しそうな料理、作れないわ」
「マリルの成長には驚きだよな。いただきます!」
「あ、こら!フライング!」
「もう、急がなくてもご飯は逃げないよ、パパ」
俺たちは仕事成功のお祝いとしてマリルのご馳走を家族3人で食べ、至福の時間を過ごすのだった。
妄想★マテリアライゼーション!20話をお読みいただきありがとうございます。
烈風の剣、上納の巻。
回数の制限とかはどうしようかなと思ったんすけど、まあほぼ無制限の設定で良いかなと。
でも思いついちゃったからマゴリアの台詞に入れただけで、目減りしたからこの仕事はダメねー、とかは無しにしました。そうするほどの意味はないというか、そこは主題じゃないんで。
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