……な、何言ってんのよ、バカ
ネカフェデート……もとい、情報収集を終えた俺たちは、無事異世界へ帰還できた。
まあ、あんまり心配してはいなかったが、シェリルの言う命綱とやらがなければゲートの安定と道標が確立できずに異次元空間で迷うリスクもあったそうなので、邪魔だなと思いつつシェリルについてきて貰ったのは正解だったかも知れない。
確かにマゴリアと2人っきりの方が、という気持ちはあったが、それはそれで間が持たなかったかもだしな。
「いやあ、有意義な時間だった。私はさっき見た記録映像を脳内整理してくるよ。脳に映像を焼き付ける魔法は、中々疲れるんでね」
「精神系の魔法得意っすねシェリルさん……」
脳内に映像を焼き付けるって。そんな事してたのかよ。
「あ、シェリル。良かったらその映像情報、後で魔石に入れて分けてくれない?お金はちゃんと払うし」
「言われずともそのつもりだったよ。ま、友達価格で安めにしておいてあげよう」
そういう事ね。
シェリルさん自身がマテリアライゼーションする訳じゃないし、そのために記録映像を撮ってあげるとか、良い友達だな(性格は最悪だけど)。
俺は女2人の美しい友情を見て心洗われる気持ちになりつつ、マゴリアの家に入る。
「ただいまー。マリル、良い子にしてたか?」
「あっ、パパ、お帰りなさい!ママ、お疲れ様!」
「ただいまマリル。今何時くらいかしら、夕飯は……」
俺たちの様子を見て少し寂しそうな顔をして、シェリルは「じゃ、帰るよ」とだけ言って、屋敷へと帰っていった。
……羨ましい、って感じなのかな。シェリルの気持ちを考えれば、まあ、6年間一緒だったルームメイトが自分よりポッと出の男と仲良くして、擬似家族みたいに娘まで設けている事実は、堪えるのかもしれない。
俺は不思議とシェリルの気持ちが少し分かってしまった。
あの女の性格とやり口が割と最悪である事は間違いないし、マゴリアを譲る気もないけれど。
ただ、彼女が1番最初にマゴリアを好きだったのに、順番抜かしをしたみたいな、変な罪悪感に囚われるのもまた事実ではあった。
◇
「あー、楽しかった!異世界……っていうか日本、また行きたいなあ」
帰ってきてマリルの作ってくれた夕食を食べながら(最近はずっとマリルがお当番になっている)、マゴリアはそんな風に言う。
「隣の芝は青い、ってやつだな。俺はあの文明の恩恵は確かにありがたいけど、マゴリアやマリルと過ごすこっちの暮らしの方がずっといいよ」
俺は何気なくそんな風に言う。
すると、途端にマゴリアが顔を赤くする。
「……な、何言ってんのよ、バカ」
……え。マゴリア?
「私も、パパとママとの生活が楽しい!2人が私を産んでくれて、毎日が新鮮で、面白いもの」
マリルの純粋な言葉に心癒される俺たち。
その場は和んで終了だったけど、俺はマゴリアの様子に、胸をドキドキさせていた。
◇
「マゴリア、俺との生活は成り行き程度に考えてると思ったけど……さっきの態度だと、脈アリなのかなあ……」
俺は「今日は疲れたから修業はパスね」とマゴリアが言うのでもう寝ようとベッドに入り込んでいたが、夕食時のいつもとは少し違ったマゴリアの反応に、自分に都合の良い妄想を繰り広げては興奮して、中々眠りにつけなかった。
「あ〜〜〜、マジでどうしよ」
マゴリアにこの気持ちを今すぐ伝えたい。
でも断られたらどうしようか。
そうなったら妄想力も多分弱まって、マゴリアのマテリアライゼーションの邪魔をする事になる。
「……もう暫く、保留にしよう……俺が自信持って、言える時まで……」
ベッドの上でゴロゴロと懊悩しながら、俺はマゴリアへの気持ちを募らせ、やがて眠りにつくのだった。
妄想★マテリアライゼーション!18話をお読みいただきありがとうございます。
マゴリアの気持ちも少しずつ動き始めている……?
オスオミの恋心はこじれ始めてますね。そしてシェリルは最初からこじらせてる。
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