あたしも国を救って落ち着いたら、こっちに永住したいかも
もう二度とくることはないと言ってからわずか数週間後。
俺は再び、日本の土を踏んでいた。
「ここが日本……」
「いやあ、まさか私もこちらに遊びに来れるとはねえ」
「遊びじゃないんすけど……」
俺とマゴリア、そして何故かシェリルさんまで一緒に日本にやってきていた。
マリルは家のお留守番である。
「シェリルさんはゲート維持であっちにいないと困るのかと思ってました」
俺はそんな風に、さりげなくなんでついてきたんだよという空気を醸し出すが、シェリルさんはどこ吹く風である。
「あの時は私とマゴリアでゲートを開きっぱなしにしていたからね。安定のためにあちら側に残る必要があった。でも今回は帰るための命綱を引いている以上、むしろ私たち2人がこちらにいないと、マゴリアだけでは上手くゲートを制御できまい」
いつもの悪趣味なニヤニヤ笑いを浮かべつつもっともらしいこと言ってるけど、俺がこっちの世界でマゴリアと2人きりで過ごして万一の事があったら困るからねえ、と顔に書いてある。
マゴリアは気付いていないようだが、シェリルさんはそういうところある。この女マジで面倒くせえな。
「すごい活気。日本って、私たちの国とどっちが広いのかしら」
興味津々で日本の街並みを眺めるマゴリア。
因みに、マゴリアとシェリルの服装は異世界風だと死ぬほど目立つので、俺が持ち帰った資料や俺が転移時に着ていた服を元にしてマリルが縫製してくれた。
「ママ、シェリルさん、似合ってるよ。パパ、気を付けて行ってきてね」
異世界から日本に旅立つ前にマリルはそんな風に見送ってくれた。良い子だ……。
「いやはや、我々からすればかように平和で高度な文明を誇る国にいながらにして異世界に転生したいなど、理解の埒外にあるがね。まあ、そこはオスオミ君の事情もあるのだろうね」
知ってるくせに。俺がシェリルさんの屋敷に招かれたあの日、俺のマゴリアへの気持ちを確かめる流れで、俺が日本に嫌気が差した事も話しているが、シェリルさんはそらとぼけてそんな風にのたまう。
「あたしも国を救って落ち着いたら、こっちに永住したいかも」
マゴリアまでそんな事を言い出す。彼女の場合は隣の芝は青く感じるだけの、無垢な台詞なのだろうが。
と、こっちに永住したいというマゴリアの台詞から、俺はつい妄想してしまう。
「あなた、お帰りなさい。今日もお疲れ様」
「いやいや、マゴリアこそ」
アホな事を考えているなあと我ながら思うけど、こういうのが俺の性分だからしょうがない。
これこそがあちらの世界でマゴリアに必要とされる理由でもあるのだから。
でも……そこまで思い至ってから、俺は考えた。
「俺は……救国の武器をマゴリアと共に作り上げたとして……その後は、どうなるんだろうな」
その時俺は、果たしてマゴリアに必要とされる男であり続けられるのだろうか。
先の見えない不安に胸を穿たれるような気持ちになりながら、俺は首を振る、
「そんな先の事、今から考えてもしょうがないな」
俺は先を歩くマゴリアとシェリルにはぐれないよう気を付けろよ、と声を掛けつつ、自分自身もネカフェに向かって歩み始めるのだった。
妄想★マテリアライゼーション!16話をお読みいただきありがとうございます。
マゴリア&シェリル、雄臣と共に日本に降り立ちいざネカフェへ、の巻……と思ったけどその手前の会話だけで終わってしまった。
この話1話1話を2000文字くらいで収めるようになるべく意識してるんですが、あっという間っすね。
でも読む側になると2000文字以上って結構ね……。
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