君の旦那は中々の助平さんだね
「お待たせー。紹介するわ、あたしの友人で、この魔法陣の作成に協力してくれた……」
「やあ初めまして、君が噂の異世界転移者オスオミ君?私はシェリルという。彼女の魔法陣作成に多大な協力をした魔道士だよ」
「あ、ども。マゴリアがいつもお世話んなってます」
「ちょっとシェリル、多大な、を付けて何気に恩を重ね着させないで。感謝してるけど。あとオスオミ、アンタなんでそんな言い方なのよ」
マゴリアが友達と俺にダブルでツッコミを入れる。律儀な奴だ。
シェリルと呼ばれた魔道士は、薄い青色のショートヘアと金色の目をした細身の女だった。
黒髪ロングの黒目でぱっと見がオリエンタルなマゴリアとは結構対照的だ。あと肉感とか。
「ほう、初見で女性の体型に視線を這わせるとは、マゴリア、君の旦那は中々の助平さんじゃないか」
「え!?いや、全然見てないす!!誤解されるような事言わないで!!」
「誰が旦那だっつーの。あとオスオミ、嘘ついても無駄だから。アンタの視線、割とマジでいやらしいし、分かりやすすぎだっつったでしょ」
俺はシェリルさんの身体のラインをマジマジと眺めてしまっていたらしく、その無遠慮な視線を窘められてしどろもどろになってしまった。
「ごめんねシェリル、諸事情あって異世界のゲート、また開きたいの。ちょっとだけ協力して」
「ははは、他ならぬマゴリアの頼みだからね。見返りはそこの彼を半日ほど研究させてもらうくらいで良いよ」
「他ならぬ友人の頼みに対する代価の要求が人身て」
俺はサラッととんでもない事を言われて困惑する。
「別に良いけど、そいつの妄想力は今後も必要になるから、そこら辺は削がないようにしてよ?」
「弁えているよ、マゴリア。ではオスオミ殿、事が終わったら私の屋敷に来てくれたまえ。歓迎する」
「勘弁して下さい……マゴリアもサラッと俺を売らないでくれよ……」
「アンタちょっとその旺盛すぎる性欲はマジでシェリルに削って貰うくらいで丁度良いんじゃない?」
酷い事を言う。
大体、性欲だって妄想力を高めるファクターなんだからな!
◇
ともあれ、俺はマゴリアとシェリルが開いたゲートから、一時帰国する事になった。
ゲームと、その他色々な私物を持ち帰って、先輩にお礼言って……。
電波も届かんのにゲームがこちらでプレイできるかは怪しいが、ないよりはマシだろう。
「では開くよ。気をつけて行ってきたまえ」
「ちゃんと帰ってきなさいよ」
「おう」
俺は意を決すると、日本へ戻るゲートへと飛び込んだ。
◇
「予想してた事態にはなってねえな」
俺が日本の自宅に戻ると、なんと自分がこちらに旅立った日の翌日の朝だった。
時間経過はほとんどないも同然だ。
「うーん、異世界とこっちの時間差か」
まあ、面倒がなくて良かった。
俺はマゴリアから渡されていた魔法のケースを広げると、そこには不思議なくらいいっぱいモノが詰め込めた。
いっそアパートの中のモノ全部入れられるんじゃないかって感じである。
電源系を引っこ抜いて、万一こっちに戻ってきても無駄な電気代を消費しないようにしておく。
冷蔵庫……も、あんま中身ないけど、中身全部持っていくか。
いや、冷蔵庫丸ごと行けそう。行けた。理屈は分からんが完全に未来の世界の猫型ロボットのポケットと同じノリである。
片っ端からケースへ放り込み、最後にスマホから先輩のアドレスを見つけて、お礼のメールを送る。
文面は馬鹿正直に全部明かすわけにいかないから、誤魔化した。
「アパートの契約も解除しておくか……」
面倒だが、万一戻ってきたときに家賃滞納はしたくない。
俺はアパートの契約会社に電話し、電気ガス水道なども契約解除し、各種手続きで半日近く費やした。
ベッドとか家具とかはケースに全部放り込んだので、家の中は空っぽ。
この世界にいた痕跡を雑に思い浮かぶ限りほぼ全部消去してから、満を辞して異世界に戻る事にした。
「さようなら日本、戻ってくる事はねえと思うけどな」
俺はフラグみたいな台詞を呟いて、部屋を後にした。
妄想★マテリアライゼーション!12話をお読みいただきありがとうございます。
マゴリアの友人のシェリル登場。
スレンダー美少女。毒舌家で非人道的な研究も辞さないマッド系。
笑顔を絶やさずに人を殺せるタイプ。コイツだけはハーレムに入れたくねえと思うか受け入れるかは……ま、わかんないすね。
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