立派に成長したな……!
「今日こそはちゃんと作るぞ……」
「期待してるわよ」
俺は魔剣のイメージを頭の中で膨らませる。
何度も何度もイメージした。黒い刀身、立ち上る闇のオーラ、そしてそれは魔王軍を撃退する力……!
バシュン……
だが俺の妄想とマゴリアの魔法は結実せず、そこには虚しく響き渡るファンタズム・マテリアライゼーションの不発音と魔力の残留が浮かび上がるだけだった。
マリルの件で失われたマテリアルの代わりに用意された薄緑のマテリアルも、ここ2週間ずっとなんの反応も示さない。
「ちくしょぉ……なんでダメなんだ」
「伝説の魔剣、本当に製造難易度高いわね……あたしも流石に辟易してきた」
マゴリアは「無理じゃないか」などのイマジネーションを削ぐ言葉は極力避けるように努めている。
とはいえ、気持ちは俺も同じだ。
このまま延々と同じ事を繰り返していても、突破口は開けそうになかった。
「休憩しましょう……魔力、使い果たしちゃった」
「おう……俺ももう今日は頭働かねえわ……」
二人してリビングで倒れ込み、マリルが心配そうに駆け寄ってくる。
「大丈夫?パパ、ママ」
ここ1週間で脅威的なスピードで言葉を理解し始めたマリルは、そろそろ魔法の講義など教えても良いかな、とマゴリアが提案し始めるくらいであった。
知性レベルとしては既に高校生くらいだろうか?
まあ、相変わらずパパママ呼ばわりなのはご愛嬌。説明はしたけど口に馴染むからと本人が頑なに変えようとしないのである。
「おう……今日もパパ、剣を作れなくてな、疲れちゃった」
「ママは魔力すっからかんで動く気力がないの……今日は悪いけど、料理は……」
とマゴリアが俺と共に泣き言を言っていると、
「大丈夫だよママ、わたしが作ったから」
と、甲斐甲斐しい事を言い出すではないか。
マゴリアは驚いた。
「え?アンタ、教えたっけ」
そもそも俺は料理できないので、教えられる訳がない。
マゴリアも身に覚えがないので、独学だろうか。
と、マリルが厨房から準備していたらしき料理を持ってきて、テーブルに並べ出す。
「どうぞ、召し上がれ」
マリルの料理はマゴリアの作るそれに引けを取らない出来栄えだった。
「いつの間にか、あたしの料理してる所見ながら覚えたの?」
そういえばマリルはちょくちょくマゴリアの調理風景を眺めていたな……などと思い返す俺。
「うん。ママ、手際が良いから分かりやすかったよ」
そんな風にはにかむマリルの笑顔に俺とマゴリアは癒される。
「良い子だわ〜〜〜ホントありがとう!」
「マリル、立派に成長したな……!」
僅か数週間で脅威的な成長を見せたマリルにまるで本当の両親のような台詞を言うのはなんだかおこがましいが、俺とマゴリアの間には何となく親心めいた何かが芽生えているのをお互いに感じていた。
「ありがとう、パパ、ママ。さ、冷めないうちに食べちゃおう」
「じゃ、頂きます」
「いただきまーす」
俺とマゴリアとマリルは3人で手を合わせて、愛娘が作ってくれた初の夕飯に、疲れた心と身体を癒していくのだった。
妄想★マテリアライゼーション!10話をお読みいただきありがとうございます。
マリルちゃん成長の巻。
いつまでも精神赤ん坊だと色々と不都合なので。
なんか、家族モノの雰囲気が出てきましたけど、本来の目的は忘れてないですから!
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