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1話   出会い


この世で一人だけのSSランク冒険者は全てが謎に包まれていた。名前や姿を知っているのは、ギルドの上の人達の一部のみ。


命令されて動く事はなく、自分がやりたいと思った依頼だけ素早くこなす。誰にも姿を見せず、SSランクの座に五年間存在し続けている。


そんな彼はいつしか、『影の王』と呼ばれるようになった。



それが彼、ルイなのである。



♢♢♢


現在、冒険者がギルドを置いて活動している国は三カ国ある。


1つは俺が拠点としているアルファード王国。


アルファード王国の北側にグラニア王国があり、西側には武装国家アベルがある。


どの国も人間の国だがアルファードは獣人が多く滞在している。理由はアルファードが亜人の入国を許可しており、アルファードの南側に獣人の国ユークトバニアが隣接しているからだ。


それに対してグラニアは亜人の入国を許可していない、グラニアの国王が大の亜人嫌いだからだ。以前のグラニアは亜人も受け入れていたのだが、前代国王がエルフに殺されてから亜人を敵視するようになった。エルフは元々五千人もいない種族だったのだが、国王を殺されて怒り狂ったグラニア軍から領土を侵略され大きく数を減らした。今では百人にも満たないと言われている。


「クソっ!あの娘どこに逃げやがった!!」


俺がアルファード王国を出ようとしていると、何やら門の方から怒鳴り声が聞こえてきた。咄嗟に物陰に隠れて様子を見るとトニーノ伯爵と三人の兵士…いや、あれは護衛だな、三人の護衛が怪しい会話をしていた。


「お、恐らく死の森の方かと……」


「追え!絶対に逃がすな!」


「し、しかしあの森はレベル(スリー)から(フォー)の魔物が多く出没すると―――-」


「ええい!うるさい!そんなもの遭遇しなければよい のだ!いいか?絶対に連れて帰れ。失敗は許さん!行け!!」


「「「ハッ!!」」」


え?行っちゃうの?ちょっと困るなぁ…

死の森はアルファードの東側に広がっており、アルファードと同じくらいの広さを持つ。名前の由来はその名の通り一度入ると生きては戻ってこれないからだ。森の中にはレベル(スリー)から(フォー)の魔物がうじゃうじゃ生息しているため、よっぽどの強者でないと生きて戻って来れない。


魔物のレベルには七段階ある。


レベル(ワン)


一般成人男性が二人以上、Eランク冒険者が一人で倒すことのできる強さ。


レベル(ツー)


Eランク冒険者が二人以上、Dランク冒険者が一人で倒すことのできる強さ。


レベル(スリー)


Dランク冒険者が二人以上、Bランク冒険者が一人で倒すことのできる強さ。


レベル(フォー)


Bランク冒険者が二人以上、Aランク冒険者が一人で倒すことのできる強さ。


レベル(ファイブ)


Aランク冒険者が二人以上、Sランク冒険者が一人で倒すことのできる強さ。


レベル(シックス)


Sランク冒険者が二人以上で倒すことのできる強さ。


レベル(セブン)


測定不能


※ SSランク冒険者の強さは見た者がいないので参考にする事が出来ない。


レベル(スリー)から(フォー)の魔物はBランクやAランク冒険者と同等の力を持つのだ。そんな魔物に一貴族の護衛が相手になる筈がない。見つかったら即死だろう。

でも俺が心配しているのはそんなことじゃない。あの森には俺の家があるのだ。不可視の結界を張っているので見つかることはないと思うが、それでもやはり心配だ。


「はぁ……」


厄介な事に巻き込まれそうだと思うと大きな溜息が出た。三人の護衛が森へ入って行って、トニーノ伯爵が帰って行くのを見届けてから俺もアルファードを出た。


♢♢♢


森の中は街の灯りも通さず真っ暗で、不自然なまでに風邪も吹いていない。そんな森の中をどんどん進んで行く。俺は多少暗くても目が見えるし、ちょっぴり強めに魔力を放出しているので魔物に襲われる心配もない。


「あ〜あ、やっぱトニーノ伯爵の護衛なんかするんじゃなかったぜ、俺が光魔法使えなかったら今頃とっくに死んでるぜ?」


「だよな、まじありがてぇよ。ちょっと報酬が高かったからまんまと釣られちまった」


「かと言って反抗すると殺されるからな…」


「「「はぁ…」」」


右の方から光が見えて、先程見た護衛の声が聞こえてきた。

おっ光魔法を使える者がいるのか。珍しいな。それにしても、あいつらも苦労してんだなぁ……

トニーノ伯爵のいい噂は聞いた事がない。権力を使って強制的に従わせているのだろう。


「ん?何か今音がしなかったか?」


「お、お前、怖いこと言うなよ」


「い、いや、今確かにしたと思ったんだが」


一瞬近くにいる事がバレたかと思ったが、俺は完全に足音を消している。となると……


「ガァァァァァ!!!」


やっぱりね……


「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」


「あ、あああ、こ、ここいつは!」


「わ、わ、ワイバーンだ!俺たちじゃ相手にならねぇ!!急いで逃げ―――」


男は最後まで話し終えることなくワイバーンに踏み潰された。

ワイバーンはドラゴンの亜種であり、全長五メートルぐらいのトカゲのような姿をしている。普段は空を飛んでいることが多いが、夜になると地上にある巣に戻ってくる。死の森がここまで暗くなければ近づいて来る前に気づけただろうが、もう遅い。ワイバーンの危険度はレベル(フォー)に分類されている。あの三人では勝つことは愚か、逃げることも出来ないだろう。


「お、おい、バルト?嘘だろ返事をしてくれ!!」


「だ、誰か助け――」


今度はもう一人の男がワイバーンの尻尾で薙ぎ払われ、首から上をとばされた。俺の目には止まって見えたが、直撃した奴は何が起こったか分からないまま死んでいっただろう。まぁ幸運といえば幸運かな。


「い、いやだぁぁぁ!まだ死にたくねぇぇぇ!誰か、誰でもいいから!誰か助けてくれぇぇぇ!」


命乞いをしているが、俺に助けてやる義理はない。冷たい奴と思われるかもしれないが、助けた後に「あなたは命の恩人です!」とか言って懐かれる方が俺にとってはめんどくさいのだ。

そんなことを考えているうちにワイバーンはどんどん男に近づいていく。


「ひぃっ!こ、こっちに来るなぁ!!い、いやだ、うわぁぁぁぁ」


パクッ....ムシャムシャ....ゴックン


と、男はワイバーンに丸吞みにされてしまった。いや、ムシャムシャって言ってたから丸吞みではないか。

護衛三人の戦闘?を見ていたせいで夜が明け始めてきた。


「あぁぁぁぁー!」


大きなあくびが出た。眠い....もう限界....早く帰ろ....


「ひっ....」


止めていた足を動かし、帰ろうとしていると後ろからまた悲鳴が聞こえた。今度は男ではなく若い女の声だった。

多分トニーノ伯爵が探していた人だろうが、こいつも俺が助けてやる義理はない。ザザッザザッとワイバーンが少女の方へ近づいて行く音がしているが、俺は振り向かずに動く足を止めない。後ろでは少女のすすり泣く声が聞こえてくる。


「うう……お母さん、お父さん、お姉ちゃん、ごめんなさい……せっかく生かしてもらったのに私、私何も出来ませんでした…ごめんなさい…ごめんなさい…」


この時少女は助けを呼ぶのではなく、命乞いする訳でもなく、ただただ両親と姉、家族に謝罪をした。



―――そんなこと言うなよ



この時俺がそのまま動く足を止めなかったらまた運命は変わっていたかもしれない。





助ける気はさらさら無かった。





ただその少女の言葉が昔の自分と重なって




気づけばワイバーンの首を切り飛ばしていた。




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