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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編・ショートショート

ナニモナイ世界

作者: いと

挿絵(By みてみん)

 ここはどこだ。俺は誰だ。

 そんな単語が頭に浮かぶ。

 目を覚ますと大きな音と共に霧が噴出し、目の前の扉が開く。

 いや、俺は何かの箱の中にいて、それが開いたという感じだった。


「体が……所々傷むな」

『ステータス確認。記憶ストレージニ損傷確認。自動修復ニヨリ修復可能』

「誰だ!」

『発声ニ問題ナシ。実験概ネ……ジッケ……ジ……セイコ……セイコウ』


 一体どこから声が聞こえるのか分からない。耳の調子がまだ良くない。

 聞こえてくる音声も変だ。人? いや、まるで作られた声のようにも聞こえる。


「ここはどこだ?」

『疑問ヲ察知。回答。ココハ地球ノ日本。ウシナワレシ……ウシナ……ウシ』


 地球? 日本? 聞き覚えのあるような、無いような、あやふやな感じだ。ただ、質問には答えてくれるらしい。


「俺は何だ?」

『人類ヲ未来ヘ残スタメ、コールドスリープサレタ人間。最後ノ……サイ……ゴノ』

「最後? 人間? 一体どういうことだ」

『予備バッテリーノ残量、ノコリイチパーセント。最終フェーズノ成功ヲ確認』

「まて、なにやら終わる流れだが、まだ質問が!」

『最終フェーズ『リエン』ノ修復完了。コレヨリ『プロジェクト・リブート』開始ヲ宣言……センゲ……ン』


 ブーン


 そんな音が鳴り響き、わずかに輝いていた電灯も徐々に光を失っていった。


「何だここは」


 ☆


 徐々に頭が冴え始め、色々と単語が浮かんできた。

 機械、スイッチ、モニター。そういった物の総称などの単語は思い出せる。


「これは『赤色』。うん、そういう言葉は思い出せる。だが、肝心な俺のことが全く思い出せない」


 散らかった部屋。電線や鉄の破片などが床に落ちている。何よりも床から植物が生えている。


「俺の認識が間違っていなければ、こんな固い床から簡単に草が生えるとは思えない」


 作り物ではない本物の草。よく見ると床も所々歪んでいた。


「廊下? いや、外から光が?」


 長い廊下を進み、扉の前に立った。

 ドアノブは錆びていて、全く回らない。

 だが、この先に何かある。そう思い俺は思いっきりドアノブを回し、ドアを押した。すると



 ばああああん!



「……あー、いや、ドアそのものが壊れかけているのは予想できなかった」


 扉が倒れた。

 認識が間違っていなければ、ドアはこう……回るイメージがあるんだけど。

 とりあえずその考えは置いといて、外を眺める。


「森? いや、町か?」


 建物らしきものが沢山あるものの、全て草木に覆われている。

 所々木が建物を貫き、廃墟と言っても過言ではない。


「元々町だった……いや、そもそも町という存在をまだ思い出せていないのになぜそんな言葉が出たんだ……」


 まだ記憶が曖昧だ。反射的に何かを言うということは、きっとまだしっかり思い出せていない記憶があるのだろう。


 しばらく外を歩くも、似た景色が続いていた。

 周りは廃墟だけ。風の音と草木が揺れる音しか聞こえない



 そう思っていた。



「……あの建物だけ不自然だ。草木が張り付いていない」


 立ち並ぶ建物は全て草木が覆っているが、一つだけ周囲よりも綺麗な状態の建物があった。

 そして。


『カチャ』


 何か音が聞こえた。

 人がいるのか?


 何も感じられないこの場所で、何かがいる。もしかしたら危険な存在かもしれない。しかしこのままでは何も進まない。そもそも俺は何をすれば良いのかもわからない。

 色々思考を巡らせ、出た結論は『怪しい建物に入る』だ。


 前へ進み、建物の扉の前に到着。そしてドアを叩く。


 コンコン


 鳴り響く音。周囲に何も無いからこそ感じ取れる音。

 そして……。



「ど、どちら様ですか?」



 目の赤い青い髪の少女が中から出てきた。


 ☆


「粗茶ですが」

「ああ、ありがとう……」


 木で作られたコップにお茶を注がれ、それを渡された。優しい香りが心を落ち着かせてくれる。


「お口にあいましたか?」

「あ、ああ。しかし驚いた。まさかこんな場所に女の子が生活しているとは」

「ワタチも驚きました。『この世界に』まだ人間がいたとは」


 彼女の発言に違和感を思いつつも、俺自身まだ頭が追いついていない。とにかく会話をして少しでもして頭をすっきりしたい。


「えっと、ごめん。君は?」

「あ、申し遅れました。ワタチは『フーリエ』と言います。様々な事情を抱えているこのお店の店主です」

「様々な事情?」

「あまり多くは語れませんが、人より少し長生きできるのです」

「へー」


 すすーっとお茶を飲みながら聞く。すると


「え、興味無い感じですか!」

「いや、俺も『さっき目が覚めて』何が正しいのか分からないんだ」

「目が覚めた?」

「ああ。機械の箱の様な物で寝ていたらしく、目が覚めて最初に会ったのがフーリエなんだ」

「機械の箱……もしかしてカプセルの中から?」

「ああ、多分その単語の物からだ」


 そう言うと、フーリエは空になったコップに再度お茶を注いでくれた。


「そうですか。でしたらこの状況について分からないのも無理はありませんね」

「というと?」


 そしてフーリエはまっすぐ俺を見て話した。


「人間はこの『地球』にいません。ここは技術も歴史も失った『何も無い世界』です」


 ☆


 かつてこの世界には様々な国や文化が存在し、西暦という番号で歴史を管理していた。

 だが、あるときからこの地球に住む人類はその技術を使い、戦争を始めた。

 技術がまだ発達していない頃は、実力の違いを見せあい、どちらかが降参することで勝敗が決まった。


 しかし、技術が進歩しすぎた時代に事件が起こった。


「『人工魔術師』の暴走?」

「そうです。対人兵器として武器が作られ、それが進歩し機械が作られ、最終的には人を倒すための人……いや、怪物を人間は作ったのです」

「つまり、この辺一帯の惨状はその怪物のせいだと?」

「この辺ではありません。この世界全部です」


 世界というものがどれほどの大きさか分からないが、少なくともこの表現から察するに『全て』で間違いないだろう。


「そうなると、どうして君はこの世界に生きているの?」

「ワタチは例外なので。それに人工魔術師の攻撃もワタチなら大丈夫です」

「そう」


 ……………………。


「先ほどと言い反応薄く無いですか! 『人工魔術師』の攻撃も余裕なのですよ!」

「いや、『人工魔術師』の攻撃がそもそもわからないし、どれくらい凄いのかも分からないから何も言えないんだよ」

「なっ!」


 この反応から察するにその『人工魔術師』というのは人間にとって脅威なのだろう。

 それに対抗できる技を持っているということは、多分凄いことなんだろうが、それを口に出したらきっと調子に乗るのかなとも思い、ここはあえて口をふさいだ。

 それに先ほどの発言。人間が居ないと断言したところを察するにこのフーリエという少女は『人間』ではないのだろう。


「うむむ、まあ良いです。それよりも久しぶりのお客様ですし、何よりそれが人間ですからね。もっとお話をしましょう」

「長居も悪いし、外の様子も見てみたいから、そろそろ出ようかと思ったんだけど」

「それはお勧めしません」

「何故?」


「さっきも言いましたが、この世界に人間はもういません。どこも草木が生い茂った地形しかありませんよ」


 ☆


 シャカシャカと鳴り響くハサミの音。

 パラパラと落ちる髪。

 切られて気がついたけど、相当髪が伸びていたらしい。


「はい。これで良いですね」

「ありがとう」

「いえ、それにしてもコールドスリープ中も髪は伸びるんですね」

「機械がそう言っただけで、そもそもコールドスリープが何かも分からないからね」

「あ、そうです。今更なんですが、質問よろしいですか?」

「ん?」



「お名前は?」


「本当に今更だね」



 そういえばフーリエの名前だけ聞いて、俺は名乗ってなかった。名前ー、なまえー。


「俺……名前……何?」

「いや、ワタチに聞かれても」


 苦笑するフーリエ。いや、苦笑したいのは俺なんだけど。


「そういえば機械が意味深な単語を言ってたな。『リエン』って」

「リエンさま。ふむ、機械が言っていたならそうなのでしょう」

「深く考えないの?」

「考える頭を持っていないので」


 箒を持って切り取った髪の毛を集め始めるフーリエ。


「あ、俺がやるよ」

「助かります。では髪を回収するモノを持ってきますね」


 そして別な部屋へフーリエは移動。俺はその間に髪の毛を集めていた。

 そしてフーリエが戻ってきた。


「集めた髪の毛はここへ入れてください」



『ニンゲンノ髪。ヒサビサ。タベル』



 大きな目玉に翼が生えた『何か』を見て、俺はその場で気を失った。


 ☆


「す、すみません。色々と聞き分けが良いので『空腹の小悪魔』を見せても大丈夫だと思ったのですが」

「いや、ちょっとおどおどおどろいただだだけで、今はぜんぜんぜん大丈夫ぶぶだよ」

「大丈夫には見えませんよ! そしてこの子は安全なので安心してください!」

『人間。ウマソウ。アトデ、タベタイ』


 大丈夫な要素が全く感じないんだけど!

 え! そもそもこの『目』はどこから声を出しているの!

 何か直接脳に信号を送っているようにも思えるんだけど!


「こらこら『空腹の小悪魔』。食べるのはこの人が人生を全うしてからにしてください」

『ヒャクネンクライ? ガンバル』

「いやいや! 止めてくれよ!」

「冗談です。悪魔ジョークですよ」


 舌を出すフーリエ。いや、となりの『目』は今にも襲ってきそうだ。


「普通ではないのは確かだ。この世界に人間が居ないという発言からフーリエは『人間ではない』と仮定していたけど、もしかして『人工魔術師』とかなのか?」

「いえ、ワタチは悪魔です。元人間ですが」

「……その説明で納得してくれる人間が他にもいたなら俺も納得しよう」

「少なくてもワタチの知り合いになった人は納得していました」


 説教チャンスをフーリエの知り合いとやらにつぶされてしまった。


「と言っても、ワタチの知り合いはとうの昔にいなくなりました」

「いなく……」


 俺の考えが正しければ、先ほどの『目』の発言から人間は百歳くらいが限度。一方フーリエは長生きと言っていたから、それ以上なのだろう。

 人間の知り合いもいたのだろうか。


「それは悪いことを言ったな」

「いえ。でもワタチはここで楽しく生活しているので、問題ありません」


 ニコッと笑うフーリエに、内心ホッとしてしまう。不可抗力とはいえ落ち込ませる発言をしてしまったかと思ったからだ。


「この世界の話を聞いても?」

「ワタチの知る限りのことでしたら」

「人類は滅んだ。そして生物はおそらくフーリエと俺とその『目』だけ。それで良いか?」

「いや、この『空腹の小悪魔』はワタチがさっき召還したので、魔力がある限り増幅できます」

『ハラヘッタ。キエソウ』

「あ、ちなみにこれはさっき髪を食べさせるためだけに召還したので、まもなく消えます」

「雑! え、これってフーリエの唯一の友達じゃないの!」

「おお、リエン様もなかなかの悪魔的冗談を言いますね。こんな目に翼が生えた物体が友達だったら皆引いてしまいます」


 いや、そうだけど。そういう常識が欠落していると思っていたんだけど、そうでは無いんだ。


「ワタチも予想外だったのですが、リエン様と同じく眠っている人間がいるかもしれませんね。と言ってもこの国よりも技術が優れた国があるとも思いませんが」

「人工魔術師とやらの技術は世界的にも存在するの?」

「はい。アメリカにロシアに中国にフランス。最終的にどの国でも作られましたが、精度に関してはこの日本が一番でした」


 そして、と続けてフーリエが話した。


「唯一日本は『感情』を持った『人工魔術師』を作った国で、他の国は全て『機械』でした」

「感情?」

「はい。他の国の『人工魔術師』は機械。つまり命令通りにしか動けない人形でした。ですが、この日本で作られた『人工魔術師』は自我を持つ最も人間に近い存在でした」

「でも、外を見る限り、滅んだ」

「はい。ワタチは悪魔なので分かりませんが、リエン様はこの『空腹の小悪魔』を今すぐ殴れますか?」


 そう言われて『空腹の小悪魔』を見ると、なにやらフワフワと浮いて今にも消えそうな感じだった。


「いや、何かかわいそう」

「そうですよね。それが『人間の感情』です。いや、もしかしたらこの『大きな目』という見た目が相当おかしい物体を見たらすぐに排除する人間もいるかもしれませんが」

「……訂正、俺は人間だからいますぐにでもこの『目』を追い払いたい」

「訂正しないでください! 見慣れると可愛いのですよ! ほら!」

『ハラヘッタ。人間ノ血液ヲ、クレ』

「言ってることが可愛いと無縁だよ!」


 可愛そうにーと言って『空腹の小悪魔』を撫でるフーリエ。


「まあ、それも人それぞれです。そんな感情がこの国の『人工魔術師』の弱点であり、敵国の『人工魔術師』を倒せなかったのです」

「だとすれば、最も優秀な『人工魔術師』を作った国は残ったのでは?」

「残念ながら、最後に残った国は自然消滅しました。食料の自給自足が間に合わず衰退。そして『人工魔術師』の原動力も無くなり全て消えたのです」

「過ぎた技術が生んだ最悪の結末ということか」


 少し考えれば容易だろう。

 この世界というのがどれほどの規模か分からないが、国がいくつもあって、どこかで支えあっていたと仮定した場合、国そのものが無くなれば他にも影響は出てくる。

 そして最終的に一つの国だけ残った場合、あらゆる物資が足りず、減衰していく。

 この地球とやらの人間はそこまで考えなかったのだろうか。


「じゃあフーリエはどうしてここにずっといるの?」

「答えが難しいです。ワタチはある人にこの世界を任されたので」

「任された?」

「はい。ずいぶん前に言われたことです。ある天才学者がワタチに『この世界が完全に滅んだら、頼む』と言われました」

「天才なのに内容が大雑把だな」

「はい。ワタチも困りました。滅ぶ前提でお話をされ、最終的に『頼む』と言われました。何をすれば良いのか分からず、こうしてここでのんびり隠居しているのです」


 その天才とやらとお話してみたいものだ。

 最終的にこの小さな子に全てを託すとは。まあ悪魔だけど。


「細かい説明は無かったの?」

「『言えない』と。そして『言えば作戦がばれる』と言われました」

「作戦?」

「はい。サイトウ博士は『作戦』とだけ言い、中身を言ってくれませんでした。あとは……遠い未来にわかるとだけ」


 遠い未来。それはいつなのか。

 いや、天才学者というのであれば、技術を持っている。つまり、俺を閉じ込めていた箱を作った張本人という可能性も極わずかだが可能性も……。


 作戦。


「再起動……」

「何か?」

「ああ、俺が目を覚ましたときに人とは思えない声が聞こえてこういったんだ。『プロジェクト・リブート』と」

「リブート……海外の言語で再起動……ですか?」

「ああ。だが俺も目を覚ましてすぐだったから意味が分からない。そもそも作戦と言われても」

「失礼!」


 そういってフーリエは俺の髪を一本抜いた。って、いたあああ!

 それを躊躇無く食べた。って、食べた!?


「なるほど。再起動……したんですね。やっと答えを見つけました」

「勝手に自己完結しないでくれるかい! というか髪を食べるって!」

「貴方はこの地球を再起動させる重要な人物でした。いえ、最後の『人間』です」

「は? え? どういう」

「こうしてはいられません。サイトウ博士の残した最後の希望を無駄にしないよう次の段階に進まないと!」

「待てフーリエ! 考えが追いつかない!」

「考えてはいけません! 考えれば貴方は止まる。ワタチは死ぬこともできませんが、貴方の時間は有限です!」


 本棚をあさり、一冊の金色の本を取り出しました。


「って、フーリエ! 燃えてる! 燃えてる!」

「大丈夫です。ワタチが燃えているだけで、本は燃えていません」

「そういう問題じゃなくて!」


 青い炎がフーリエの手……いや、本から出ていた。


「悪魔が『神の書物』を持てばこうなります。ですが、次第に消えます」


 俺に本を渡すと、青い炎は消えた。


「こ、これは?」

「あちち……。リエン様は『異世界転移』という単語をご存知ですか?」


 いせかい……なんて?


「これからリエン様にはここでは無い世界に行ってもらいます」

「海外ということか?」

「違います。『異世界』です」


 意味が分からない。この『地球』以外に世界があるということなのか?


「そこで地球を『再起動』させる方法を探すのです」

「どうして俺が!」

「サイトウ博士の残した最後の希望だからです!」


 そしてフーリエが俺の足元に手をかざし、なにやら怪しげな光が浮き出した。


「待って、異世界って、仮に行ったとして何を!」


 そういうとフーリエは微笑んだ。



「安心してください。『あっちの世界のワタチが事情を知っています』」



 え?


「先ほどから言っています。『この世界の人間は滅んだ』と。ですが、『別の世界』については……ああ、質問されなかったので言ってませんでした」


 いかにもわざと言わなかった。そういう笑みを浮かべている。


「ワタチは他の魔術師のように心を読むことはできません。ですがなんとなく貴方がサイトウ博士の残した何かだとは思っていました」

「だったら何故先にそれを聞かなかった!」

「『人工魔術師』の生き残り……その可能性が少しでもあるなら、十年や二十年質問し続けても良い。どうせ永遠の命ですから、これからもサイトウ博士の残したヒントを探してもかまいません。『たったそれだけ』です」


 その表情はとても冷たいものだった。全てを失い、ただ自分に課せられた使命を全うするただの『人形』にも思えた。


 だが。



 ばあああああん!


「な、何だ!」

「言ったでしょう。『人工魔術師』の生き残りの可能性について。これだけ大量の魔力を放出すれば、例え地球の反対側でも察知できますよ」

「大丈夫なんだろうな! その、異世界に転移できるんだろうな!」

「大丈夫です。このワタチが責任を持って貴方をここではない世界に飛ばします! 命をかけても!」



 ばああああああああああん!



 壁が吹き飛んだ。


 そこからゆっくりと覗き込むように何かが現れた。アレは……人?


「まもなくです!」

「って、フーリエもこっちへ!」

「ワタチは大丈夫です! あっちのワタチと記憶を共有しています! だから……」



 ザクッ。



「だから、この痛みも残念ながら共有されます。凄く痛いです」

「フーリエ!」


 フーリエの腹部から刃物が出ている。いや、刺されている。先ほど覗いていた人のような物体はいつの間にかフーリエの背後に立っていた。

 アレは……人と言うより武器を持った人型の機械だ!


「行って下さい! 空腹の小悪魔!」

『ギャー! シュジンニテヲダスナー!』


 フーリエの召還した『目』は『人工魔術師』に突撃した。しかしいつの間にか真っ二つに切られていた。


『ギャ……』

「ありがとうございます。そして、リエン様」

「な、何だ!」


「どうか、この地球を『再起動』させてください」


 そして、俺は光に包まれた。

 フワフワと空を飛ぶ感覚だろうか。

 次第に意識が薄れていく。眠くなるような感覚と似ている。



 そして意識が徐々に戻り、目の前は先ほどの廃墟とは異なった世界が……。

 こんにちは。いとと申します。

 いくつか短編を書いていて、いつも何かを課題に掲げて書いていました。

 今回は「異世界転移」をする前のお話という形で、主人公は言葉や名前以外何も知らない状態でツラツラと書いてみました。


 終わり方が「まだ途中っぽく」したかったという私の個人的な考えもありますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


 どうしてリエンは眠らされたのか。どうして悪魔のフーリエは地球で生活しているのか。色々とおかしな部分が多いと思いますが、すごく遠い未来なら恐竜が復活していたり、宇宙人と交流していたりという可能性もあるので、『悪魔も住んでるかもしれない』という可能性も……うん。難しいですね笑

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短編と聞いて読み進めたらフーリエが出てきてびっくり! この世界に1人いる意味をあれこれ想像して、切なさと使命感を感じました。 ラストのところがもう泣けてきて、これから始まる主人公の物語の…
[良い点] おもしろいですね サイトウ博士の目論見は転移先でみつかるということなのでしょうか 「リブート」できるまでの道のりも大きな物語になる予感ですね SFと魔術的要素がまざった面白い設定だと感じま…
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