宇宙の海賊"アビス"
まずこの世界の成り立ちについて話さなければならない。
現在より四百二十五年前、地球人は汚染と温暖化に耐えられなくなった地球を捨て新たな地球となり得る惑星を探すため百億の民を輸送船や軍船に乗せ、地球をあとにした。
そして新天地を見つけ、それは後にゾラ星と呼ばれるようになった。
ゾラ星の他に"キルメア"、"ペロッド"、そしてゾラ星の衛星"リーコン"も見つけた。地球人はそれらに定住したがここで問題が発生した。
それは主義の違いだった。
民主主義と独裁主義という二つの主義が対立した。そして戦争までは発展しなかったが、抗争に負けた独裁主義者たちがまたしても脱出する羽目になった。
しかしながら彼らは新たな惑星を見つけることが出来なかった。その為脱出する際大量に持ち出していた物資を使って小さなコロニーを築いた。
拡張を繰り返し今日には"ジェームズ"と呼ばれるコロニーを作り上げた。
そこからガンダー帝国が誕生した。それで終わりではなかった。
独裁主義者たちの中でも過激派がコロニーより脱出し、ゾラ連合とガンダー帝国との間にある小惑星帯に逃げ込み"アビス"を立ち上げたのだ。その時点で地球から移住して二百二十四年が経過し、連合と帝国との間では戦争が起きていた。
それに必要な物資を輸送する輸送船団を攻撃して利益を上げていた。連合は特に被害が大きく対策を講じる必要があった。そしてできたのがハル平和連合だ。
彼らの任務はアビスの出現宙域の監視と討伐だった。しかしそれらは上手くいかなかったが…。
こうしてこの世界はできた。そして今、皇帝の命をうけ帝国軍第十三艦隊がアビスの討伐に向かうこととなった。
オブライエン少将は二十六歳の好青年だ。
旗艦は戦艦バクストン。彼は若いが実力は、軍務大臣のマンチェスター侯爵から太鼓判を押されるほどだ。彼は討伐命令を受けると勇んで出撃して行った。
「お前達!あのアビスを討つ先陣をあたえられたぞ!大変な名誉だ。今度こそ陛下の御為、討伐してやるぞ!」
若き貴族であり、有能な司令官の激励が艦隊の通信回線を歓声で満たす。
こうして第三次アビス討伐戦が開始された。