四人の皇子
チャールズ皇子の演説が始まる前に釘を刺そうとする者がいた。
「チャールズ皇子。此度の戦の責任は公爵にあることは明白ですぞ」
第二皇子のアーサー皇子だ。歳は十九歳だが兄皇子と違い気位が高くなく、父親譲りの厳格な性格を持っている。
ちなみに第一子のチャールズと第二、第三、第四子は母親が違う。
チャールズはクラレンドン公爵夫人
アーサー、エドワード、ウィリアムの三人は
エジンバラ公爵夫人から生まれている。
クラレンドン公爵夫人は気位の高い女性で歳は四十二。
エジンバラ公爵夫人は歳は三十九。気丈な性格でクラレンドン公爵夫人の悪質な嫌がらせにも屈しない芯の強い人だ。
それぞれの息子達はそれぞれの母親と父親の性格を色濃く受け継いでいる。
「アーサー兄上のおっしゃる通りです」
「そうだ!私も二人に賛成です!」
先に発言したのは第三皇子のエドワード皇子だ。歳は十八歳で政治分野において精通しているため、国内の政治を行う自治省の監視や思想家等の監視を行う国内情勢監察省の大臣に任命されている。
あとに発言したのは第四皇子であるウィリアム皇子だった。歳は十八歳とエドワード皇子と同じである。それもそのはず二人は二卵性の双子なのだ。彼は双子の兄ウィリアムと違い、次男のアーサー皇子と同じような性格をしている。尚二人の髪色は茶髪である。
「貴様等長子である私に対して意見する気か」
それに答えたのはアーサーだった。
「チャールズ皇子。私とウィリアムは軍に所属しており、階級も大佐と中佐ですからそれなりに軍の事情を知っております。」
「だから何だと言うのだ」
「軍人でもない貴方が軍の事情に首を突っ込まないで頂きたい」
金髪の皇子は返答に窮した。
そこへ落ち着いた声で皇帝に具申した者がいた。
「陛下。まずは第八艦隊の再建と全滅の理由を調査すべきかと。報告では三十七隻生き残っているようですが、帰還したのは僅か一隻のみ。駆逐艦のクルーから話を聞く必要がありますが残念ながらクルーは戦死又は重傷と聞いております。しばらくは原因は掴めませぬ」
「さすが監察大臣はよく情報を掴んでいるな。しかし一つたりんぞ。」
チャールズ皇子が意味深な発言をした。
「かの駆逐艦のクルーが入港直前にこちらへ寄越した通信によれば…"アビス"に襲われたそうです。皇帝陛下」
その一言で至尊の冠を持つ壮年の男は勢いよく立ち上がって宰相と息子達に伝えた。
「チャールズの言やよし!宰相!軍務大臣に伝えよ。直ちに第八艦隊の再建をし、アビスが出現したと思われる宙域へ第十三艦隊のオブライエン少将を向かわせろ。よいな?」
今まで黙りこくっていた公爵は自分の罪が有耶無耶になったのを内心喜んで命令を受諾した。