狂乱
第六十話です。
十月十三日午前一時五分。
軍事同盟軍総司令官ハラー・パウルス高等大将は全軍に戦闘停止命令を発令。
有志連合軍に降伏した。
軍事同盟軍右翼のゼッフェルン中将の第四戦闘艦隊やヨハネス中将の第十航宙艦隊は第九航宙艦隊を圧倒していた。
そんな状況にもかかわらず戦闘を停止しなくてはならなかった二人の中将は大いに悔しがった。
第九航宙艦隊は百二十隻のうち八十隻ほどが撃沈、もしくは戦闘不能だった。
旗艦である航宙戦艦ウンフェアツァークトを含む五隻の航宙戦艦も撃沈され、司令官ジョーゼフ・フォン・ルートウィヒ中将は戦死していた。
あと五分早く戦闘が終わっていれば彼は生き延びれただろうと言われている。
十月十三日午前一時。
ジョーゼフ・フォン・ルートウィヒ中将戦死。享年35歳。
中央で大乱戦を繰り広げていた混成艦隊、第五戦闘艦隊のハルコルト中将、バンベルガー少将と旗艦同士の超接近戦をしていた右翼艦隊の各司令部はこの情報を受け取れなかった。
唯一受信出来たのはリーコン要塞だけだった。
ルートウィヒ中将はこの後、勇戦し有志連合軍を支えた名将として元帥に二階級特進となった。
午前一時二十分。
パウルス高等大将は惑星ゾラの軍事同盟軍総司令部に連絡をした。
この内戦で軍事同盟軍宇宙艦隊は総艦数千七百十隻中六割にあたる千三十五隻が撃沈、大破、航行不能になった。
有志連合軍は総艦数七百十隻中四割の三百隻が撃破された。
ゾラ連合軍宇宙艦隊所属の艦船がたった三日で約千四百隻、宇宙の塵となったのだ。
それらの詳細な情報は後日確認されたもので現在では正確な残存艦数は不明だったが。
これらのことをエクムント新大統領に報告した。
エクムント新大統領は怒るでもなく、悲嘆することもなく、ただこう言った。
「使えん奴らめ。裏切り者が」
「…閣下!」
裏切り者と言われたことに憤慨したパウルス高等大将だったがそれを遮ってエクムント新大統領は指示を出した。
しかしそれはパウルス高等大将に向けられた命令ではなかった。
「電磁兵器“ヘレ”…発射用意!」
地獄を意味する言葉に戦慄したパウルス高等大将は一体何をする気だ!と大声で問いた。
「黙れ!貴様らごと消しさり、新たな世界を私が作ってやる!」
そう言って通信は途切れた。
「何をする気だ…!?」
パウルス高等大将は慌てたが相手が何をするか皆目見当がつかなかった。
電磁兵器というからにはジャミングでもする気か?
そう思っていたその時。
「総司令官閣下!ゾラ星より高エネルギー接近!強力な電磁波です!」
「何!?どこに向かってきている!」
「ここで…」
そう言った時には総旗艦ライヒスブルクは爆発四散した。
第一戦闘艦隊のほとんどが爆発したのだ。
事後処理に追われていた各艦は対応出来ず次々と炎が船体より噴き出る。
その電磁波は中央宙域を駆け抜け、敵味方問わず爆沈させ、リーコン要塞砲”グングニル“の浮遊砲台まで届いた。
ただグングニルは爆発しなかった。
おそらく有効射程距離ギリギリだったのだろう。
突然の無差別攻撃に両軍困惑した。
中央艦隊らからの連絡が無い。
当然だ。
強力な電磁波により直撃を避けたとしてもありとあらゆる機器が使用不能になったことぐらい想像に難く無い。
ルートウィヒ中将は戦死し、中央のハルコルト中将、バンベルガー少将らは生死不明。
ウィリバルトは意識不明の重体。
ハウクウィッツ少将は要塞内の療養所で安静を命じられている。
そうなると指揮することが出来るのはハル平和連合軍第二防衛艦隊司令官のティーメ少将だけだった。
一体何が起こったのかよく分からなかったがおそらく強力な電磁波により対艦ミサイルの信管に電流が走り、暴発したのだろう。
幸いにもミサイルを撃ち尽くした艦は機関が暴走したのだろう。
そうまずは考えた。
さらに人体に影響を及ぼす可能性が高い。
電磁波は体に当たれば一部は反射し、残りは体に吸収されるのだが吸収出来る量を超えた場合体温が上昇する。
この時点で既に大きなパワーを体に与えられていることになるが、もっと大きなパワーの電磁波が与えられればどうだろう?
血液は沸騰し、内側から焼かれるのだ。
最悪の場合死に至る。
想像したく無いが運良くミサイルを撃ち尽くし、機関が既にやられている、停止している状態だとしても内側から焼かれ、死ぬ。
もはやどうしようもない。
ただ手がないわけではない。
電磁波発生距離が遠ければ遠いほど効果は薄い。
ゾラ星からリーコン星まで三十六万キロメートル。
射程距離はこれぐらいが妥当だろうか。
そうティーメ少将が推察してるときに参謀長のケスラー准将が具申してきた。
「提督。とにかく軍事同盟軍宇宙艦隊との戦闘は終わりました。今は負傷者を救出しましょう。あの電磁波攻撃が次いつ来るか分からない以上、急ぐに越したことはありません」
「そうだな…では、有志連合軍、軍事同盟軍関係なく負傷者は収容するように」
その言葉にやや戸惑いの表情が出た准将だったがすぐに各艦に指示を飛ばした。
「この通信が届く全艦に命ずる。直ちに両軍の負傷者を救出せよ。その後、リーコン要塞へ帰投する。以上」
准将の指示を聞きながらティーメ少将はこの後どうなるか全く見通しが立たなくなってしまった現状にほとほと参った様子でため息をついた。
負傷者の捜索開始から僅か五分。
リーコン要塞から驚愕の知らせが全軍の通信網を駆ける。
「こち…ーコン要さ…現在…グニルが…っかを開始…繰り返…グングニルが落下…いし…」
十月十三日午前一時半のことである。
最近模試に定期テストに新作の会議にと忙しいので毎週日曜日投稿が遅れても許してくださいなんでもしますから(°▽°)




