再会
ウィリバルト所有の屋敷はゾラ連合国首星の中心部に位置する。彼と甥、アンハルト兄妹が一緒に住んでもあと五十人は住める程の広さを有している。ちなみに警備兵は最小限いるが使用人は一人もいない。
ホーエンツォレルン家虐殺事件以前はどの軍人家庭も警備兵などいなかったが事件以降佐官級以上の軍人家庭には憲兵出身の警備兵が配置されることとなっている。
そんな所に居候三人組は帰ってきた。警備兵との短い挨拶をした後三人は食堂でエリザベートが作ったクッキーを片手に談笑していた。
「兄さん、小父様はどちらに?」
「親父さんはユランガルで戦後処理中だってさ」
「伯父上は大変だなぁ。俺達、パイロットで良かったな、アンハルト?」
他人事のように言ってのけたアルベルトを一瞥したアンハルトは呆れた視線を赤髪の少年に向けた。
「私達も昇進したらそうなるがね」
「うっ!」
アルベルトの一つ上の階級であるアンハルトが諦めたような声で言い、そんな二人を見てエリザベートが微笑を浮かべた。
真空の大海に浮かぶ四つの円柱に瀕死の駆逐艦が接近していた。ここはガンダー帝国の中心部である一番コロニー"ジェームズ"である。
ガンダー帝国の首都はここであり、周りに二番、三番、四番コロニーという風に配置されそれぞれ"ウィリアム"、"エドワード"、"チャールズ"という敬称を与えられている。
その"ジェームズ"に接舷しようとしている船は帝国軍第八艦隊の残存艦艇であった。
その知らせは直ちに皇帝と側近達のみに伝えられた。
「皇帝陛下、既にお聞きになられていると思いますが第八艦隊が駆逐艦一隻のみを除き、全滅したとの事で御座います」
「うむ」
少し緊張した声で報告したのは
ダニエル・オズワルド公爵である。歳は五十一歳。口のチョビ髯が特徴的である。
そして重々しく返事を返した者こそガンダー帝国十六代皇帝ジェームズ九世である。
歳は公爵の一つ上で五十二歳。オールバックの金髪は見た者の印象に強く残る。
「おぬしが推薦したパーシー少将は戦死したそうだな」
「誠に申し訳ございません」
公爵はより一層頭を下げた。そこへ若い声が飛び込んだ。
「父上!此度の戦の責任は公爵ではありますまい」
彼の名はジェームズ九世の第一皇子の
チャールズ皇子だ。歳は二十一歳で父親と同じく金髪だが長く伸ばして束ねている。
彼こそが母親の位からして次の皇帝ではないかと言われているのであった。