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戦場立志伝  作者: 居眠り
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Verrückt Wespen(いかれたスズメバチ達)

第五十五話です。

 轟音。火災。響き渡るサイレン。

宇宙には聞こえない音たちは艦内ではけたたましく鳴り響く。

音源である戦艦ドイチュラントの艦橋は機能していない。

艦長が戦死したわけではない。

もちろん副長も無事だ。

ただ全員、呆然としているのみ。

理由は、後にVerrückt Wespenと呼ばれるグレーデン、ギルマン、ゲッツの三人だ。

戦艦ドイチュラントは主砲、副砲、機関をやられ漂流中である。

ただやられただけなら彼らも呆然とすることは無かった。

周りの戦艦三隻、重巡・軽巡洋艦五隻、駆逐艦五隻が航行不能にされたのだ。


たった十分で。


十月十三日午前零時十五分。

第十三機動艦隊の前衛は第七航宙艦隊の攻撃により壊滅した。

前衛だけならともかく援軍に駆けつけた大小二十隻の艦艇も戦場を自由に飛び回る三機を含む空戦隊にやられた。

直掩機はことごとく金色の鷲の機体に墜とされた。

艦隊司令官ゲープハルト少将は戦慄した。

「どうやってあの化け物達に勝つ…?」

すると金色の鷲を除いた三機が接近し、通信で呼びかけてきた。

「閣下…如何なさいます?」

「当然無視だ!連合軍人たる者、最期まで諦めんぞ!撃ち落とせ、主砲斉射!」

主砲が仰角を上げ狙いを定めようとした時には既にグレーデン少佐のW型の砲口が向いていた。

二発ずつ四十ミリ徹甲榴弾が吐かれ、見事命中。

一番主砲、二番主砲ともに火を噴き上げ、そして沈黙した。

「閣下…」

心配を通り越して恐怖にガタガタを歯を鳴らす副官に何も言えずにいるゲープハルト少将のもとへ、また通信が来た。

「…」

通信士官がオペレーターや少将よりも早く、受理のボタンを押した。

もしかすれば命が助かるかもしれないという心の現れであった。

「やっと繋がったか。で、あんたがゲープハルト少将か?」

失礼で無愛想な言動にゲープハルト少将は怒りを覚えたが紳士的に対応した。

「そうだ」

「俺はライナルト・ギルマン少佐だ。単刀直入に言う。あんたの艦隊は組織的抵抗が不可能な状況になっている。言われなくてもわかってるんだろ?これ以上の戦闘は無意味だ。降伏しろ」

淡々と言ってきた青年パイロットを苦々しげに睨むゲープハルト少将は五秒程間を開けて返答した。

「そのようなことは出来ぬ。私は連合軍人だ。一個艦隊の長だ。そして制度としては消えたが、フォンの名を持つ貴族の一員だ。その誇りがある限り降伏するような真似は断じてせん!」

「そうかい。じゃああんたの隣で顔面蒼白な少年はどうだい?彼にはとても継戦の意思は見られんがね。あんた一人の誇りに他を巻き込む気か?………階級は…中尉、か。…バイエルン中佐には聞いていたが本当に軍の若年層が増えたな」

前半は嘲笑うように、後半は悲しそうな顔になるギルマン少佐をゲープハルト少将はなんとも言えない気分で見つめる。

そして

「…総員、退艦せよ」

「…閣下!?」

半ばぶっきらぼうに言った退艦命令は艦橋要員達を喜ばせつつも驚かせた。

「ギルマン少佐と言ったな。彼らが脱出するまで。三分待ってくれ。それと彼らの保護を。最後に、私をこの艦と共に沈めてくれ」

「なりません閣下!」

最初は喜んだ艦橋要員達もさすがに止めに入った。

が。

「黙れっ!貴様らはまだ若い!そこの小僧の言う通り他を巻き込むのは本望ではない。若い者は退艦しろ。これは命令だ!」

「…はっ!」

副官は助かることに安堵しつつも上官をおいて逃げる行為を恥じ、泣きながら敬礼した。

「総員退艦!たいかーん!!」

副長が大声で艦内通信で叫び、艦橋要員達は次々と敬礼し、艦橋を後にした。

しかし艦長は動かなかった。

「艦長さんか?あんたは逃げなくていいのか?」

ギルマン少佐が怪訝な表情をしたが老艦長は何も答えず、ただ十字を切った。

三分後、第十三機動艦隊は旗艦グーラの撃沈により組織的戦闘能力を失い潰走、もしくは降伏した。

ギルマンはせめて彼らが苦しまずに死ねるように艦橋にミサイルを二発叩き込んだ。

艦橋が爆発し、艦内の隔壁を爆風が吹き飛ばして対艦ミサイルに誘爆。

そのまま轟沈した。

しかし喜んでいる暇はない。

次は第十二機動艦隊が立ち塞がる。

司令官フロイデンタール少将は既に麾下の艦隊二割を第七航宙艦隊との戦闘で失うも未だ戦線を維持していた。


戦艦グーラを撃沈したグレーデン少佐らはアルベルトに合流し指示を仰ぐ。

「グレーデン少佐は俺と来い。敵旗艦を叩く。ギルマン少佐、ゲッツ少佐は戦艦を集中して狙え。なるべく殺すなよ」

「「「了解」」」

三人三様の返事を返し、まだ終わらない戦いの渦に身を投じて行った。


「オラオラオラオラオラァ!!!」

「うるさいぞーギルマン」

「へっ!文句言うなら何隻沈めた?俺この艦隊でもう三隻目だ!」

「それ戦艦一、巡洋艦二だろ。俺は戦艦三だ」

「はぁ!?」

呑気に会話をしているが彼らは現在戦闘の真っ最中である。

ちょうどギルマン少佐が巡洋艦を航行不能にしたところだった。

「おい!ギルマン後ろ!」

ギルマン少佐の後ろを取った敵のエアハルトであったがすぐにエアハルトH型の編隊が援護に駆けつけ、叩き落としていく。

「ご心配どうも。俺にはどうやら守護神がいるようだ」

「中佐の指示で護衛してくれてるんだからその言いようはないだろう。もっと感謝しろ」

「うぅ…確かに…」

ゲッツ少佐に正論を言われたギルマン少佐は何も言えずに口を尖らせた。

「ほら、次いくぞ。守護神云々を言うなら神に祈りを捧げてからにしとけ」

「俺は無神教者だー!」

三人の中では歳の離れたギルマン少佐はよく遊ばれる立場にあったが戦闘中でも変わらずのようだった。


「中佐、残弾の方は大丈夫なんです?」

グレーデン少佐は敵旗艦を捜索する合間にアルベルトに何気なく問いかけた。

「あぁ。問題ない。ビームサーベルで敵機の翼をなるべく切るようにしてるからな。まぁミサイルと機関砲、機関銃が豊富にあると言えば嘘になるが」

「…一体何機墜としたんです?」

「えー、覚えてない。そうだ。機体でキル数がわかるは…ず…」

「…中佐どの?」

急に黙ったアルベルトに不審がって尚問いかけたグレーデン少佐だったが驚きの返事が返ってきた。

「四十機…」

「はぁああ!?四十!?!?」

「嘘だろ…」

「いやあんたがなんで驚いてるんだよ!!」

あまりのキル数に思わず敬語を忘れたがすぐに落ち着きを取り戻した。

「いやまぁ機体スペックは俺らのとかと比べると段違いですが…」

「あ、あとついでに戦艦を一隻航行不能にしたぞ」

「一体俺たち何隻の艦艇を沈めたんでしょうねぇ…こりゃ船乗りたちは涙目だな…」

自分たちがしたことなのに敵に同情してしまうグレーデン少佐だった。


この話からなるべくセリフ多めにしていこうかなーって思ってます(`・ω・´)

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