腕無しの英雄
第五十三話です。
ティーガー・ワン、エアハルトW型三機が空母ヘルダーの飛行甲板上に並んだ。
エアハルトW型は故ウォーベック子爵の開発した戦闘機でエアハルトより五十センチほど大きくなっている。
翼外に大口径の四十ミリ機関砲を二基積んでおり、翼内には副兵装として七・七ミリ機銃を搭載している。
ただ四十ミリ機関砲を積む時に通常のエアハルトではバランスを崩す為、重心を考慮した結果五十センチ伸ばすことになったのだ。
機動力はエアハルトと大差なく、瞬間火力は圧倒的にW型が上だ。
W型は戦艦、重巡洋艦のシールドが展開されてない時だけだが装甲を貫通し、ダメージを与えれる。
といっても戦闘機の機関砲で撃沈を狙うのは明らかな非効率なので主砲、副砲、対空砲塔内の掃討などには適している。
装甲が薄い軽巡洋艦や駆逐艦にはかなりの効果を発揮する。
かなり薄い部分を狙えば発射された徹甲榴弾が艦内で炸裂し、乗員に被害を与えられる代物だ。
ただし初速が遅い為戦闘機にはかなり当てづらい。
もちろん当たれば一瞬で撃墜出来るが高速で上下左右に飛び回る戦闘機に当てれる者は連合にも帝国にも存在しない。
アルベルトやアンハルトもおそらく不可能だろう。
そんな驚異的な威力を持つ四十ミリ機関砲を搭載したW型に乗るのはグレーデン少佐、ギルマン少佐、ゲッツ少佐の三人だ。
各々の機体はネームド機仕様になっておりグレーデン機は濃い灰色に赤ライン。ギルマン機は茶色に白ライン。ゲッツ機は紫色に黄ライン。
ちなみに今まで赤一色だったパトリオットAに乗っていたアルベルトの新機体、ティーガー・ワンの色は黒色に赤ラインと暗い配色になっている。
そして金色の鷲が風防にプリントアウトされていた。
ニヤニヤするアルベルトとは対照的にあまりの禍々しい配色と厨二病っぽいトレードマークに三人は実物を見た時閉口した。
「ティーガー・ワン、エアハルトW型三機。発艦を許可する。続いてエアハルトH型を主力とするハル平和連合空戦隊も出る。それまで存分に新機体の性能を楽しんできたらいい」
ティーメ少将の場違いな朗らかな顔に苦笑したアルベルト達だったがすぐに真剣な顔になった。
「さぁ行け!ゾラ連合を取り戻すんだ!」
ティーメ少将の参謀長、ケスラー准将が厳しい顔つきで出撃を促す。
敬礼でそれに応えたアルベルト達は各々コールする。
「アルベルト・フォン・バイエルンだ!ティーガー・ワン、出るぞ!!」
飛行甲板上を圧倒的な初速で発艦したティーガー・ワンに乗っているアルベルトは一瞬息が詰まった。
やはり大型化した機体を十分に運用するには高性能なエンジンを必要とする。
すると発艦の際、かなりのGがパイロットに襲い掛かるのだ。
アルベルトは耐えたが強化パイロットスーツがあってこそだ。
続いてグレーデン少佐、ギルマン少佐、ゲッツ少佐の三人の機体も順次発艦する。
「ウド・グスタフ・グレーデン少佐、発艦する!」
「ライナルト・ギルマン!行くぞ!」
「ギード・ゲッツ少佐、出る!」
三機が上がった後、次々と飛行甲板にH型が並び出す。
H型はハル平和連合用に作られたエアハルトの派生機で対宇宙海賊アビスを想定している為機動性が高い。
なぜなら小回りの利く宙雷艇を相手にすることがほとんどだからだ。
しかし装甲はあまり貼られていないのと火力はお世辞にも高くはない。
堅い重戦闘機や戦艦などにはほぼ歯が立たない。
たがエアハルトよりH型はコンパクトな作りになっているので量産機としては優秀である。
そして第二防衛艦隊から出撃した戦闘機は延べ三百機に上った。
「九時方向よりハル軍空戦隊急速接近!数…約三百機!?」
レーダー担当のオペレーターが自分が目にした数字に驚愕した。
軍事同盟軍左翼司令官であるマインツ大将も驚きを隠せなかった。
たった一個艦隊から出る空戦隊はせいぜい二百機が関の山だ。
「いや、確か一ヶ月前に新造空母が完成したはずだ。確か名は…空母ヘルダー!オペレーター!敵の空母の名は!?」
「…艦種特定完了。空母ヘルダーと確認!」
合点がいった。
新造空母ヘルダーは戦闘機百機を積める超大型空母である。
ハル平和連合の軍事予算三割を投じて建造された空母だった。
「そうか…やはり…おのれぇ…」
ギリギリと歯を食いしばるマインツ大将の元に麾下のフロイデンタール少将とゲープハルト少将が指示を求めてきた。
「全艦隊対空砲火を密にせよ!たかが戦闘機と侮るな!撃ち落とせ!」
老獪な将、カール・マインツ大将が大声で叫び、援軍三百機と第七航宙艦隊二百五十機の共同作戦が開始された。
アルベルトの生還をアンハルトも、ウィリバルトもまだ知らない。
ゲーミングPC買ってM&Bしたい…(唐突)




