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戦場立志伝  作者: 居眠り
22/63

覚醒

一定に鳴る機械音。やや暖かい空気。鼻に入ってくる僅かな薬用アルコールの匂い。


少年は覚醒した。


少年は上体を起こした。すると体中に痛みが走る。その痛さに顔をしかめながらもなんとか少年は体を起こした。

彼の上半身はありとあらゆるチューブと繋がっていたがそのチューブの束の下の肌は無数の傷が出来ていた。つい最近の傷のようだ。

自分の体中を眺め回していると少年はあることに気がついた。

右腕が肘辺りから無くなっていたのだ。そしてもう一つ気がついたことがあった。

近くに座っている人がいることに。

その人は太った体を大儀そうに揺すってこちらを見つめてきた。

「誰だ、あんた」

ややかすれた声で少年は聞いた。

その男は即答した。

「私か、私はウォーベック。トーマス・ウォーベック子爵だ。これでも帝国の兵器開発局局長をしている。聞いたことはあるだろう。裏切り者のウォーベックの名ぐらいは」

少年は驚いた。あのパトリオットを設計した博士が目の前にいることに。

「あんたが…裏切り者のウォーベックか…」

少年は合点がいったようにごろんとベッドに寝転がった。

パトリオットは純連合産ではなく設計図を帝国側のスパイから入手し、それを連合国内で完成させた代物だった。

そのスパイは今、少年の目の前にいる男なのだ。

トーマス・ウォーベック。

帝国貴族の一員で先程も彼が言ったように兵器開発局局長を皇帝より命ぜられていた。

とりあえず少年はここは何処かとそのスパイに聞いた。

「ここは帝国首都コロニー"ジェームズ"だ。

そして君は私の私有病院の特別患者だよ。

アルベルト・フォン・バイエルン中佐。いや

あちらでは戦死扱いで准将か」

少年ことアルベルト・フォン・バイエルンは特徴的な赤い髪が伸び過ぎたことに気がつき鬱陶しそうにいじっていた。


アルベルトが覚醒したその頃アンハルトたちは決断を迫られていた。新政権と戦うのか否か。戦うこと自体は決まっていてもどれだけの戦力が味方してくれるか分からない以上、

あまり派手な行動は出来ない。

第二宇宙港には帰還した遠征艦隊が駐留している。この四個艦隊が全て味方するとしても現在は半数しかおらず、連合十七個艦隊の内一体何個艦隊が、何万の軍勢が味方してくれるのだろう。

エリザベートの安全はクーデターが起こったことを確認したシュムーデ准将がバイエルン宅から第二宇宙港に避難させているため安心している。

だがこのゾラ星から脱出するべきか、待機して状況を確実に確認するかで議論は熱を帯びた。

前者はアイスナー大佐とシュムーデ准将、後者は合流したブレーメン中将含む提督三名というふうに別れていた。

もちろん他の幕僚や将校も会議に参加していたが彼らのほとんどは後者に意見を寄せつつあった。

会議が始まって以来一言も発さない、恐らく連合軍最強のエースパイロットは熟考した上で上官に具申した。

「バイエルン閣下、ここはゾラ星から脱出すべきと小官は考えます」

「何故か、ホーエンツォレルン大佐」

アンハルトの長い苗字を噛むことなく流暢に発音したウィリバルトは上官の目で大佐を見つめた。

「はい。その理由はたったの一つです。ここに留まっていては危険です。それに我々が起つことにより、反クーデター派が集結しやすくなります。直ちにこの惑星を離れるべきです」

視線が最年長の提督に集まる。

彼は大きく息を吸い込みそして吐いた。そして決意の眼差しとともに言葉を発した。

「ゾラ星から脱出する!」



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