音のない世界で...最終話
零がいなくなってから2年が経った....。
優也たちは、警察や町のみんなに声掛けをして、零を探していた...。
(零...頼む...居なくならないでくれ...っ)
「お願いします!!あの、この子を見かけたら連絡お願いします!」
「お願いします!!」
「協力お願いします!!」
優也のお母さんやお父さん、零のおばさんと一緒にチラシを配りなるべく多くの協力者を探した。
学校でも協力してもらうため、先生方、生徒全員に声をかけ、学校のチラシや広告を貼っている所にも、零の情報を貼らせてもらった。
それと、生徒自身があっちこっち探してくれるために、チラシを箱に入れ一枚ずつ取っていけるようにもした。
その頃、零は....。
ー神社にてー
「ん...」とムクリと私は起きた。
サラ...
「ん...?やけに髪が...」
と自分の体に異変を感じた。
「っ!?」と私はびっくりした。
髪の毛があの時よりとんでもない髪の長さになっていた。
「稲荷神に恐み恐み白す、為す所の願いとして成就せずということなし!」
と私はお札をもって唱えた。
すると...。
ブワッ...!
「っ!?」
「零様お呼びになられましたか..?」
と結月が目の前に現れた。
私は「結月おはよう。あの...朝起きたら髪の毛が伸びてたのだけれど...」
と聞く。
結月は零の髪が確かに伸びているのに驚きの顔をした。
「これは...」
「なんかわかる...?」
と私は聞く。
「はい。一応は...。前世の主、稲荷様の時と同じでございます。私の予想ですと...今とは違うとこで、時間が長く経ち、2年分の成長になったのではないかと...。お身体事態は、見た目は17~18歳辺りで止まっております。」
と結月が説明してくれた。
「違う次元ってことになるの...?」と私は問う。
「さようでございます...。ここの神社自体には外の世界とは違う結界を貼っております....。ですから、零様の場合四日間しか寝ていなくとも2年が経っているということです...。零様のいた町は2年が経っているはずです..。」
と言われ私はびっくりした。
「え!そんなに経っているの....でも私はまだ18歳のままだったのが本当はもう結構年齢行ってるってこと...?」
とタハハと苦笑いをしながら呟くと、
「どうなさいます...?髪のほう...少しお切りしましょうか?」
と結月が髪の毛のことを言ってくれた。
「あ、じゃぁ...お願いしようかな...。」と言い結月は「かしこまりました...。」と言った。
......。
チャキ...チャキ...
と少しずつ髪を切っている結月は私にこんなことを言ってきた。
「零様...少し迷っておりますね...?」
と言われ私は「え...?」と何でと思った。
結月は「はぁ...零様、あなたは抱え込みすぎです。我々はあなた様の希望があれば何でも行動いたします...。」
とため息をした後に言ってきた。
「零様、優也様のこと気になっていますね...?」
と言われ
ギク...
と図星してしまった。
「な...何でわかったの...?」
と聞くと、
「零様にとっては四日間しか経っておりませんが、外の世界、優也様の世界では2年が経っております...。流石に何も言わないで姿を消したことに根をお持ちかと...」
と言われ確かにそうだと思った...。
あっちでは...優也の世界では私がいなくなってから2年が経つ...。
「......。」
と私は黙ってしまった。
すると結月は私の前で膝立をして手が目の前に出された。
私は「?」と傾げた。
すると...。
ぼわっ!
「!?」
蒼い炎が手から出てきた。
「零様、今のあちらの状況です...。」
と結月が言った。
私はよく見ると優也や優也のお母さん、お父さん、おばさんまでいた。
みんな...私のこと必死に探してるんだと思うと胸が痛くなった...。
暗い顔の状態をみて結月はこんな提案をした。
「零様、優也様だけでもこちらに来させますか...?今ならまだ零様の鬼化は我々が止めることは可能です...。」
「どうやって連れてくるの...?居場所も伝えてないのに...」
と言うと...。
「我々は、人間の姿にはなれます。我々の誰かが優也様のとこに行き一緒に来るのです...。」
「それじゃぁ...!!」
「ですが...零様は狐のお面をつけていただきます...。我々はこのお面で主を守ってきた...。」
「神社の外に出てしまえば...取り返しのつかないことになります...それでもかまわないというのであれば...お面をつけたままお会いすることになります。どうします...?」
と言われた私は決意をそのままいった。
「それでもいい...優也に会えるのならお面をつけてるぐらいなんともない。」
と言った。
結月はコクリと頷き「かしこまりました...。翌日、優也様のとこに手配させます。」
と言って髪を切り終わり、一本に髪の束をまとめ...
白い布を巻き、その上から紅い紐で結んでくれた。
「今日はゆっくりお過ごしください...。では、また....」
と言い結月はいなくなった。
翌日.....。
結月は、燐と鏡に優也を連れてくるように手配した。
「優也様ってどんなお方なんだろう。零様が好きなほどだから気になるなぁ」と鏡が移動しながら言うと
「こらっ!鏡、零様のご友人様に失礼ですよ。いいですか?あくまで零様が願っていることなのだ。」と燐が言う。
「いてっ!姉さまだってそんなこと言ったって本当は零様にもっと好かれたいからやるんだろ!」
「そんなことない!鏡もいい加減なこと言わないでください!」
と姉弟ゲンカでギャーギャーしてると目の前に男の人が現れた。
「おい...お前ら、笹原零のこと知ってるのか...?」と言ってきた。
「「あ”ぁ”!?」」と怖い顔して二人息ぴったりににらんだ。
すると燐と鏡はその男の人の顔を見て「「あ!」」と汗をだらだら流し
「「す...すみません!!あの..あなた優也様ですか...?」」と息ぴったりに燐と鏡はその男の人に聞いた。
するとその男の人は...。
「あぁ、俺は柳沢優也だ。その様子だと俺のこと知ってるのか...?」
と言ってきた。
そう、その男の人は身長が大きくなっていて声が少し低くなっていたが優也だった。
燐と鏡はお互い顔を見て同時に頷き、
「「零様のところに案内します...。」」
と言って優也の手を引っ張り、電車に乗った。
燐はあることに気が付いた、
(優也様は確かお耳が悪かったはず...)
そう、優也は聴覚障害者でもあった。
けど燐と鏡の声は人間と同じでちゃんと聞こえている。
「優也様は、お耳が悪いとお聞きしていたのですが...。私たちの声聞こえるのですか?」と燐は優也に聞いた。
「ん?あ、まぁ確かに耳はそこまで聞こえないけど、補聴器をしてれば普通の人の声も聞こえるよ」と言ってきた。
「ほら、」と言い補聴器をつけてるのを見せた。
「「おぉ~!!」」と燐と鏡は珍しいものに目が行くと目が輝く。
そして、電車も終点に着くとこだった。
「「優也様、次で着きますよ!」」
と二人は優也に伝える。
「ここに零がいるのか...。」
鬼賀家駅に着き、歩くこと数分....。
(遅いなぁ...。)と零は、狐のお面をつけて神社の掃き掃除していた。
サッサ....
「「零様~!来ましたよ!」」
と燐と鏡は私に声をかけてきた。
燐と鏡は零に抱き着く
「「褒めてください」」
と笑顔で言ってきたので私は「おかえりなさい...燐、鏡。お疲れ様」と優しい声で言った。
「れ...い...?」と優也は髪の長い少女に対して零様と言った二人の言葉に本当に零なのかと驚きでしかなかった。
私は鳥居にいる優也に気付く...。
「優也....。」
と私が名前を呼んだ瞬間...。
ヒュー....
と桜の木に咲いていた桜が舞い散る。
その瞬間...。
「零っ!!」
ガバっ!っと強く抱きしめた。
私は嬉しかった...。
「ゆう...や...っ」
「ごめん...ね...ごめん...っ」と涙を流し、強く握りしめた...。
私は嬉しかった...けど、優也の声が聞こえないのは少し寂しかった...。
私はただただ優也に謝るしかなかった...。
そして、結月に言われてたことが1つあった。
「零様、もしお面を外したいときは神社の中のお部屋でお外しください...。あの部屋なら問題ないので..。」
と言われていた。
だから私は優也に「優也...こっち」と言って、腕を引っ張り部屋へ行く。
「零...?」
と優也は零に問いかける聞こえない...。
「優也...。」と私は名前を呼び、お面を外した。
「!?」と優也はびっくりした。
2年も経ったはずなのに、零はあの頃と全く変わっていなかった。
声も顔も...。
零は微笑んだ...。
「優也は...変わったね..。身長も伸びて、昔みたいな子供っぽくなくなって...。うらやましいな...。」
と私はただ呟いた。
私は少し涙を浮かべた。
「でも...っ。優也の声聞こえなくて...残念だな..っ」と優也に言った。
すると優也は気づいたのか、零は耳は聞こえなくなったままなんだと...。
そこに、結月が入ってきた。
「っ!?誰だ!」と優也は反射的に敵かと思った。
だけど優也には聞こえるから私は「優也、大丈夫だよ。この人たちは私の味方だから。この子は結月だよ。」と結月のことを紹介する。
「優也様、びっくりさせたようで申し訳ございません...。私は結月と申します。」
「零様、優也様とここで過ごすのはどうでしょうか...?我々もおりますし。」という提案を出してきた。
「んー...そうだね。そうさせてもらうよ」と笑顔で答えた。
そして....優也と過ごして40年が経った....。
優也はもうおじいちゃんになっていた...。
変わらないのは私だけ...。
零の姿はまだ19~20ぐらいの成長しかなっていない...。
神社周辺の森で、私は優也に膝枕をして日向ぼっこしていた...。
私はただただ、優也の頭を撫でていた...。
すると...。
「れ...い...。来世も...一緒だと...いい..な..」と呟いた。
優也の手が私の頬に触れる...。
私はわかっていた...。
もう時間がなかったんだって...。
私は「うん...っ。私も来世は優也と一緒がいいな...っ」と涙をこぼし優也の手を強く握った...。
すると優也の手はだんだん冷たくなって....
力が抜けたように手がゆっくり落ちた...。
「....っ。ぅ....っ」と私はただ涙を流した...。
優也はいなくなってしまった...。
でも...私は生き続ける...。
そして....優也が亡くなってから4週間が経った。
私は、今もその来世を待ち続けるように神社で過ごすのであった...。