83/83
16
山門の学僧・伸晃が、この老人を保護。
伸晃は老人と互いの掌に字を書かせるやり方で対話した。平元盛は何故か左手を差し出し、右の掌を決して触らせようとしなかった。
元盛は掌で熱く語る。「源朝子」「四代将軍」「六波羅幕府」・・・
伸晃は、元盛老人の不思議な体験に驚愕!抹殺された歴史がそこにあった。伸晃は知りたかった。何が起きていたかを!伸晃は行動を開始した。情報を収集する。今や関係者のほとんどが亡い。公文書も消されている。それでも、痕跡はあった。断片的な覚書や物語、歌集、公家や僧侶の日記、反乱の檄文、故老の談話、言い伝え・・・「源朝子」の生きた証!それは虐げられた者共の執念であった。
伸晃は膨大な時を費やし、丹念な取材と綿密な考察を重ね、源朝子の事跡を纏めた。
「四代将軍記」である。
しかし幕府を憚り門外不出。近年になって、ようやく公開された。




