表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四代将軍とも  作者: 山田靖
ーあとがきー
80/83

13.

「 あったかいおまんまを、与えよ

  あったかい寝ぐらを、与えよ


  他には、なにもいらぬ


              四だいしょうぐん とも 」




 四代将軍源朝子?より檄が飛ばされた。

 ひとびとは驚き、そしてその健在を信じた。嗚呼、朝様だ!朝様に間違いない。懐かしい、四代将軍の口癖だ。

「温ったかいおまんま、暖かったかい寝ぐら、それだけあれば良い。それで良い」

 源朝子に思想なるものがあったとすれば、この発言であろう。当時、それは微笑みをもって受け取られた。

「何とまあ、欲のない」

 彼等は、そんな朝子が好きだった。しかし、このささやかな願望が、実は途方もない贅沢だったのだ。

 ようやく気がついた。そして立ち上がった。


 後に「四だいしょうぐんの乱」と呼ばれる暴動が丹波で勃発!

 首謀者は「瑞光」なる雲水とされる。瑞光は流民を率い、地頭を襲い米蔵を破った。鎮圧兵が出されるや、山野に伏し奇襲攻撃で攪乱する。そして「四だいしょうぐん」を奉じ各地に蜂起を呼び掛けた。摂津で、山城で、和泉で、一揆が相次いで発生。同時多発の異常事態に、幕府の対応は後手後手に回った。


 ヤットコセー、ヨイナセー、こりゃなんでもせーっ!


 反乱には妙な明るさがあった。彼らは唄っているのだ。

 そして手を繋ぎ輪になって声を揃えた。


 ひぃ、ふぅ、みぃ、で、「ほぃ!」


 その民衆の先頭にはいつも、華奢な白拍子がいた。ニッコリ笑って皆を鼓舞、扇動していたという。

「四だいしょうぐん」、小柄な少女であった。



「四代将軍源朝子筆」とされる檄文は、信じられぬ程長期間に渡り膨大な量が撒かれた。陸奥から九州に至るまでの全国各地で見つかっている。天から降ってきたという記録さえある。その数は・・・判らない。現存するだけでも二百枚を超える。だが、残されている源朝子の書体とは明らかに異なっており、複数人の筆跡も散見。別人による組織的な捏造とみられる。

 今も時折、旧家の蔵から発見されている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ