13.
「 あったかいおまんまを、与えよ
あったかい寝ぐらを、与えよ
他には、なにもいらぬ
四だいしょうぐん とも 」
四代将軍源朝子?より檄が飛ばされた。
ひとびとは驚き、そしてその健在を信じた。嗚呼、朝様だ!朝様に間違いない。懐かしい、四代将軍の口癖だ。
「温ったかいおまんま、暖かったかい寝ぐら、それだけあれば良い。それで良い」
源朝子に思想なるものがあったとすれば、この発言であろう。当時、それは微笑みをもって受け取られた。
「何とまあ、欲のない」
彼等は、そんな朝子が好きだった。しかし、このささやかな願望が、実は途方もない贅沢だったのだ。
ようやく気がついた。そして立ち上がった。
後に「四だいしょうぐんの乱」と呼ばれる暴動が丹波で勃発!
首謀者は「瑞光」なる雲水とされる。瑞光は流民を率い、地頭を襲い米蔵を破った。鎮圧兵が出されるや、山野に伏し奇襲攻撃で攪乱する。そして「四だいしょうぐん」を奉じ各地に蜂起を呼び掛けた。摂津で、山城で、和泉で、一揆が相次いで発生。同時多発の異常事態に、幕府の対応は後手後手に回った。
ヤットコセー、ヨイナセー、こりゃなんでもせーっ!
反乱には妙な明るさがあった。彼らは唄っているのだ。
そして手を繋ぎ輪になって声を揃えた。
ひぃ、ふぅ、みぃ、で、「ほぃ!」
その民衆の先頭にはいつも、華奢な白拍子がいた。ニッコリ笑って皆を鼓舞、扇動していたという。
「四だいしょうぐん」、小柄な少女であった。
「四代将軍源朝子筆」とされる檄文は、信じられぬ程長期間に渡り膨大な量が撒かれた。陸奥から九州に至るまでの全国各地で見つかっている。天から降ってきたという記録さえある。その数は・・・判らない。現存するだけでも二百枚を超える。だが、残されている源朝子の書体とは明らかに異なっており、複数人の筆跡も散見。別人による組織的な捏造とみられる。
今も時折、旧家の蔵から発見されている。




