78/83
11.
ある年、雨がジメジメといつまでも続き夏になっても暑くならず、稲に実は結ばなかった。翌年は日照りで干上がり、飢饉がきた。貯えも底をつき喰うものがなくなった。
飢えたひとびとは、馬も牛も喰い尽した。鼠も蛇も蜥蜴も動くものは総て口に入れた。「人食い」の記録もある。雑草や木の皮を齧り、衰弱した身体には消化できず、嘔吐に塗れのたうちまわり死んでいった。
次の年には地震がおき、火山は爆発。津波で何もかもが流された。疫病が流行り何千、何万もの命が失われた。夥しい難民が街道に溢れ行く当てもなく彷徨う。地獄絵図、惨状は目も当てられない。
ひとが死んでゆく。どんどん、ひとが死んでゆく。
時の帝は大掛かりな加持祈祷を行った。
それでも、ひとが死んでゆく。どんどん、ひとが死んでゆく。




