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源朝子に関係した者共にも、幕府の魔手が伸びる。
逸早く危険を察知した卿ノ局は、聡・郁を若狭に逃がした。西面の武士から出向していた家人達も一斉に姿を消す。が、他の多くの者は悲惨であった。朝子に仕えていた者はもとより、下人や手伝い、出入り商人に至るまで、少しでも接点があれば容赦なく捕えられ処罰された。
粛清の嵐の中、西面の武士・藤原秀澄は自ら敢然と東山へ出頭する。兄である院北面・秀康は既に捕えられている。どのみち逃げきれない。ならば秀澄は、泰時と対決し堂々と論陣を張るつもりでいた。しかし、秀澄はそのまま牢に放り込まれ拷問。遂に仲間の居場所を白状に及ぶ。結果、橘善行が潜伏先の田辺で大立ち回りの末捕縛。五条河原に引き出された善行は、傍らの秀澄に対し「この、裏切り者!」と罵り、面体に唾を吐く。・・・直後、共に首を刎ねられた。




