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四代将軍とも  作者: 山田靖
ーあとがきー
68/83

1.

 源朝子みなもとともこは忽然と消えた。


 承久元年九月九日、さきの四代将軍源朝子卒去。

 天下に衝撃が走った。都は沸騰!いや、あまりといえばあまり、唐突な訃報。病没をそのまま信じる者はない。四代将軍に何が起こったのだ?!ひとびとは真実を求めた。洛中に暗雲が立ち込め混乱の渦は拡大する。

 東山の北條泰時ほうじょうやすときは激怒!朝廷に対し厳重な抗議、そして生死にかかわらず源朝子の引き渡しを要求。有無を言わさず三千の軍勢を京に入れた。六波羅急襲するも、既にモヌケの殻。逃亡を手引きしたとされた北面の武士・藤原秀康ふじわらのひでやすは、泰時軍によって拘束される。

 間髪容れず京都守護は「源朝子」を公式に否定。そのような者は存在せず、頼朝よりとも公の末子を騙った大悪人である、と。将軍家遺児、源三郎みなもとさぶろうを殺害した下手人として徹底的に捜索を開始した。

 家屋に踏み込み住人に尋問する。武家・商家・百姓家までも虱潰しに荒らしていく。神社仏閣・公家も容赦しない。都を上下する街道という街道は総て封鎖され、旅人は厳しい詮議を受けた。


 源朝子は何処にも居なかった。




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