51/83
朝子
京都守護・伊賀光季は、石垣の報告を受け取った。
四代将軍源朝子の正体は、田楽一座の踊り子玉に相違ない。朝子は、玉なのだ。源朝子とは、年端のゆかぬ下賤な娘の妄想に過ぎなかったのだ。舌先三寸に、朝廷も幕府もまんまと騙された。天下の熱狂は総てが虚構であった。
だが、最早言い逃れは出来ぬ。年貢の納め時だ・・・
京都守護が六波羅を急襲せんとす正にその矢先、事態は一変!
故右大将源頼朝が三男、源三郎の惨殺死体が三条河原に打ち棄てられたのである。
捨て札には墨黒々と大書。
「自称源三郎
源家末裔を騙りし大悪人
天に代わって成敗
四代将軍源朝子 花押」




