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二四、
卿ノ局の邸から、梓が呼ばれた。
万策尽きた秀康の最後の頼みの綱。梓なら、何とかしてくれるだろう。朝子は、梓に懐いていたから・・・
梓は、朝子の様子を訊ねた。目を閉じ右手で胸のあたり押さえ、秀康の説明を聞いている。やがて頷き、静かに立ち上がった。
「では、私ひとりでまいります」
梓は、しっかりとした足取りで奥の部屋へ消えていった。
それきり、梓は戻ってこなかった。
承久元年九月七日、従五位下四代将軍源朝子儀、官位ヲ辞ス。
承久元年九月八日、前四代将軍源朝子儀、御病気。
承久元年九月九日、前四代将軍源朝子儀、卒去。
「清和主流河内源氏将軍家断絶、六波羅幕府滅亡ス」
「(略)下々得心セズ。洛中騒然、一部暴徒化。宛ラ戦場ノ如シ」
「然レドモ、火急ノ懸案ハ鎌倉也。事態著シク悪化。朝幕衝突、不可避。二位法印ニ文ヲ遣ワス。仙洞院ヲ訪フ。午後、参内」
「弾正大忠ヨリ急報、泰時出兵。風雲急、嗚呼・・・(以下、略)」
―九条道家「光明峯寺日記」より―




