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四代将軍とも  作者: 山田靖
四代将軍記
43/83

二三、

 都は震撼!あまりの惨劇に声もない。殺された源三郎とは何者なのか?下手人は?四代将軍源朝子名義の捨て札は本物なのか?だとすれば何故このような凶行に走ったのか?そして、朝子は・・・源朝子は今、何処で何をしているのか?

 

 四代将軍源朝子は、その日も平然と参内。

 突如、帝に「北條義時追討」を敢然と求めた。しかし、謁見も叶わない。院を訪ねるも、門は固く閉ざされたまま。二位法印は不在。更に、卿ノ局にも拒絶された。虚しく六波羅に引き揚げると、朝廷から使者が来ていた。用件は判っている。出仕停止と謹慎を言い渡された。朝子は黙って肯いた。

 検非違使が現れ、朝子はそのまま六波羅屋敷に軟禁。朝子が「私室」と称す物入が牢となった。身の回りのものは総て没収。しかしどういう訳か、紙は一枚も出てこなかった。例の頼朝が大和の白拍子に宛てたという手紙もない。笹竜胆の印籠も御守りもない。そういえば菊一文字則宗が見当たらない。源朝子の所有物では最も有名なものだ。つい最近まで確かに持っていた。何処かに隠したのか?誰かに渡したのか?

 院北面より、藤原秀康が乗り込む。秀康は秀澄の実兄。これより六波羅は厳重に警戒される。秀康は、弟秀澄等に「騒がぬよう」言い含め解散を命じた。彼等は西面の武士に戻ることになる。梓他、女達も卿ノ局の元に帰された。

 

 六波羅は厳戒のまま夜が明けた。

 秀康は困惑している。何しろ、朝子は人気が高い。下手な扱いはできない。取り調べは慎重に進められた。源三郎なる男を殺害し三条河原に晒したのは、四代将軍源朝子なのか?本当に、この女子の仕業なのか?

 朝子は沈黙している。捕えられてから一言も喋らない。ばかりか、食事を摂らない、湯水も口にしない。夜も寝ていないようだった。ただじっと正座し一点を見据えていた。秀康が何を訊いても、脅しすかし、また哀願しても、朝子は何の反応も示さない。

 秀康は、ほとほと手を焼いた。箝口令を敷いたものの噂は既に市中に広まっている。東山の北條泰時からは、源朝子の引き渡しを強硬に申し入れてきている。早々に事の真偽を明らかにせねば。いや、朝子は仮にも従五位下四代将軍である。申し開きさえしてくれれば如何様にも穏便に済ませられるではないか。何故、ひとことも口をきかない?


 とにかく、朝子の体調が心配であった。もう二日も飲まず食わず、不眠不休なのだ。


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