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四代将軍とも  作者: 山田靖
「源とも物語」
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十六、四代将軍源とも、鎮魂ノ祈リ!

 暑さもようやく和らいだ八月末、京の八幡宮において清和源氏主流将軍家、頼朝・頼家・実朝の法要が盛大に執り行われた。喪主は勿論、四代将軍源とも!

 帝や院、皇族方は代参であったが、左大臣はじめ多くの公家が参列。神社仏閣からも多くの寄進があり、一般の焼香は数千もの列が連なった。

 さて武家である。北條及び鎌倉方は当然の如くこれを無視。また各地にも参列せぬよう通達した。しかし、かねてより北條に不満を持つ者はこの機会に旗幟を鮮明にしたのだ。別流源氏はもとより、西国の主だった武家が出席。なかでも、河内・大内惟信おおうちこれのぶ、尾張・山田重忠やまだしげただなどは堂々と、ともに従い、存在を誇示する有り様。

 喪主挨拶で、ともが「国家安康こっかあんこう君臣豊楽くんしんほうらく!」と締めるや、満場がこれを唱和!異様な盛り上がりは、さながら反北條決起集会!

 この法要は、ともの人気と勢いを改めて満天下に示すものとなった。


 四代将軍源ともの行状は、当然鎌倉にも聞こえてくる。今や満天下に、ともの評判が広がる中、鎌倉のみが苦々しく押し黙っていた。殊に幕府中央で、ともの名は禁忌。尼将軍政子が怒り狂う。そればかりでなく実害も出ている。幕府の権威が著しく低下しているのだ。

「将軍の居るところが幕府」であるとし、ともは六波羅を「幕府」と呼ばせている。そして北條方を「鎌倉幕府」と命名。これで一気に地方組織に格下げの印象を世間に与えた。この鎌倉幕府の名称は、区別にも便利なので都を中心に広く定着してしまった。どころか、歴史書にも採用されてしまい、遂には後続の幕府まで室町・江戸と在所で呼ばれる羽目となるのです。

 更には四代将軍立案の「北條征伐策」なるものが流布している。

 ともの戦略は雄大でした。

 鎌倉は頼朝公が手塩にかけた難攻不落の要衝。十万の大軍を以てしても苦戦するでありましょう。攻略するには先ず敵を引き摺り出さねばなりません。とも自身を囮として討伐軍を率いて進撃!まんまと手に乗り、ウカウカと出陣すればしめたもの!小規模な鍔迫り合いで、戦場を西へ西へと誘導します。充分に引き付けておいて、その隙に空国となった鎌倉を、背後から関東源氏が襲撃占拠。そして補給の伸び切った幕府軍を美濃あたりで東西から挟み撃ち!・・・ちなみにこの作戦、およそ百年後に源氏・新田義貞にったよしさだによって完全に遂行され、鎌倉幕府は滅びるのです。

 驚いたことにこの謂わば秘策が、堂々と世間に論じられている。六波羅が拡散しているは明らか。ともが手の内を明かしたのは、鎌倉方を追い詰める為でした。勝ち目がないと思い知れば、幕府は内部から崩壊するでしょう。そう、ともは仲間割れを期待しました。実際、鎌倉は少なからず動揺・・・殊に尼御台などは震え上がります。

 ともの執拗な挑発と工作はジワジワと効いてくる。ともかく、北條支配を快く思わぬ西国筋の武家が本気で、四代将軍を担いでくる事態が現実味を帯びてきた。最早、看過できない問題となっている。政子は事あるごとに「あの娘を殺せ」と喚き散らす。

 執権・義時は、手を打たねばならぬ。


 北條泰時ほうじょうやすときが東山に入った。鎌倉武士の質実剛健を絵に描いたような男。この執権北條家惣領は、唐土のぎょうしゅんに比される程評判が高い。若いながら父・義時の右腕として、幕府を実質動かしていた。その泰時が何故、京にあるか?鎌倉は将軍実朝暗殺の混乱から、ようやく立ち直ったばかり。新しい体制を早急に固め、武家政権が揺るぎないことを満天下に示さねばならない。この重要な時期に泰時は京に、それも秘密裡に潜んでいる。

 悪化した朝廷との関係改善!及び、悲願の宮将軍実現!

 これら難題に、泰時自ら陣頭指揮を執る覚悟!

   

 そしていまひとつ・・・最大の懸案「四代将軍源とも」



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