表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四代将軍とも  作者: 山田靖
「源とも物語」
1/83

一、四代将軍源とも、颯爽ト登場ス!

東西とざい東西とぉざいィーっ!


さぁさ、お立合い。諸君、皆々様よ。女とは怖いものよ。うん、怖い。怖いなぁ。


いにしえより傾城傾国けいせいけいこく

一度逢えば城が傾き再び逢えば国が傾く、の例え。

唐土(もろこし)において、妲己だっき西施せいし呂后りょこう楊貴妃ようきひ・・・

いずれも絶世の美女ではあるが、悪女も悪女!

己の欲望に貪婪で、男を惑わし道を誤らせ国を滅ぼしたのであります。


翻って本朝に傾城傾国ありやなきや。

鎌倉に尼将軍・北條政子ほうじょうまさこましませば、この頃都に流行るもの四代将軍・源朝子みなもとともこ

ひしと世間を取りにけり。


慈円じえんという、偉いお坊さんが云ったとな。

女人入眼にょにんじゅげんの日本国、いよいよまことなり」


 これから申しますのは、女だてらに武家の棟梁!

「四代将軍源とも」の、おはなしです。


 頃は承久元年、弥生三月、春たけなわ、花爛漫!

 都に陽がさしてきた。山際からだんだんと白んでくる。紫がかった雲が細く棚引いてゆく。春眠、暁を覚えず。新しい朝がきた。目覚めの時だ。それぞれの日常が始まるのです。

 ところが、まだ早朝というに、都大路は既に大変な賑わい。民衆が口々に何やら叫びながら走ってゆく。老若男女、町人もいる。百姓もいる。武家も僧侶までも、いる。一体、何事であろう?

 時ならぬ、わぁっという歓声。振り向けば、煌びやかな行列。

 極彩色の鎧武者に囲まれた、一際輝く馬上の美丈夫!

「四代将軍!」

 “そのひと”は白い直垂ひたたれ水干すいかんを身に着け、立鳥帽子たてえぼしを被り、白鞘巻しろさやまきの刀を帯びている。かなりの背丈。そう長身ではあるが、細身で華奢。顔が小さく目と耳が大きい。首が長く手足も長い。所作は優美で、さながら水辺に鶴の舞うよう。己に向けられる熱狂も意に介さず、伏し目がちに小首をかしげ口元には笑みさえ浮かべて・・・その表情からは、まだ少年のあどけなさが残る。いや、待て!少年ではない。”そのひと”は女だ、どう見ても女だ!女が武家の装束?しかし、群衆は狂喜乱舞!奇声をあげ、無闇に駆け出したり、踊ったり、土下座して拝んだり!満都の興奮は最高潮に達した。


 このひとこそ誰あろう!清和源氏主流河内源氏為義流、鎌倉幕府創設者にて初代将軍、正二位権大納言右近衛大将・源頼朝みなもとのよりともが忘れ形見、「従五位下征夷大将軍・源とも」!

 源氏将軍亡き後、ますます増長する北條一族!その専横に苦しむ庶民の難儀救いたいと、女だてらに将軍家を継ぎ巨悪に対峙する、純情可憐な一輪の花!


「いよぉーっ、征夷大将軍!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ