親切なことには裏がある...って知りました
クソ熱い。室温の上昇がとどまることを忘れたみたいだ。今度教えてあげよう、君は熱すぎるって。そんなことをぼんやり思う。って太陽には言えないか☆ああ、頭がどうかしてる。思考が止まる。
「あー、さっき見たページと変わらないじゃない」
君の声だけには反応する自分が少し怖い。もう僕はとっくに引き返せないところまで来てしまってるんだろう。
「暑さは人を駄目にする。故に駄目なことは悪にはなり得ない」
「いつもながら何言ってんだが。」
はあ、君は卑怯だ。僕を馬鹿にするときの君の顔はあまりにも...その、なんだ、破壊力的なのが強すぎる。もしかして僕はその顔が見たくて訳分からないことばかり口に出してしまうのかな。僕が駄目になる条件として君の笑顔が含まれているのかもしれない。
始まりは高校一年の部活選びからなのかもしれない。僕は小学5年生からサッカーを始め中学も続けてきた。親は当然高校でもサッカーを続けるものだと思っていたらしい。けど、僕はサッカー部には入らなかった。まあ特に親も何も言ってこなかったし辞めるにはちょうどよかったのかもしれない。
「ねえ、知ってる?」
「え、何々?」
「この学校になんか日本代表が居るんだって!」
「えー本当に?ていうか何の代表なのよ」
「さあ、知らなーい」
「知らないとかウケル」
教室の後ろ、ロッカーのあたりで馬鹿みたいな大きな声で喚く喚く。きっと彼女らは中学からの知り合いなのだろう。でなきゃ、あんなに親しくは話せないだろうから。
今日は各部活の部活紹介があり、一年は帰宅だ。今はそれらが終わりホームルーム中。少し思考を自分のためだけに使う。さて、まずは自問自答から始めよう。僕、内海盛夏は部活に入りたいですか?いいえ、人と関わりたくありません。ですから部活には興味を示していません。
質問が一つで終わってしまうほどには魅力を感じない。あ、もう桜がほとんど散ってしまっている。風に乗って僕の元に来ないかなと、念じ、結果来なかった。風すら吹かんかった。
ああ、雲の流れはいつもより速いというのに。時間の流れは速くならないものだ。
「もし、」
「あ、あれ?おかしいな」
「もしもーし!」
「むむむ、これは無視なのかはたまた試されているのか」
「かくなる上は...」
えい!というかけ声と共に僕の脳天に衝撃が走る。思わず振り返る。
「あーあははは、思わず」
誰?え、誰?
「ごめんごめん。そんなに驚かれるとは思わなかったよ。それにしてもいいリアクション頂きました!」
グッツと親指を突き立ててこちらに伸ばしてくる。元気が有り余り勝手に空回りしている。そう思う第一印象でした。
「何か用でもあった?」
「えっ?気づいてないのね、もう下校時間」
時計を見て驚いた。もう6時。時間も経つのが早くなっていたようだ。
「ぼーっとしてたよ。教えてくれてありがとう。じゃっ」
暗くなる前に帰らないと。席を立とうとしたところを額に人差し指を当てられ強制着席させられた。どうやらただの親切な人というわけではなさそうだ。長くならないといいけど。
「こんな時間まで何もしていないということは部活は決まっていない。そーよね?」
「いえ、部活には入るつもりですよ。」
「え、マジ?」
「あーマジですよ」
視線をそらす。帰宅部だけどね。
「む、へえ、ちなみに何の部活に入るつもりなの」
「僕に興味津々ですね。口説いてるんですか?」
「な、え、ええそうよ。私は貴方に興味津々で、口説きに来ました」
嘘つけ。赤面して動揺しまくりじゃねえか。
「帰宅部」
「な、嘘じゃないですか!」
「う、嘘じゃないヨ」
「女の子に嘘をつく人には罰が必要ですね!」
「ごめんなさい。今これだけしくなくて...」
財布から三千円を取り出し渡そうと
「やめて、やめて!喝上げしてるみたいじゃない!」
「違うんですか?」
「違うわよ!コホン、文芸部に入る気はない?」
「え?ないですよ。人とあまり関わりたくないので」
「卑屈だなあ、私とこんなに話してて今更その言葉に説得力はないかなあ」
むう、確かになあ、言い返せる場面ではないよね。早く帰りたいし、ここは奥の手。
「続きはまた今度にしませんか。門限があるので」
今日は金曜日。土曜、日曜と時間が空けば確実に有耶無耶にできるはず。ましてや門限と言われたらこれ以上何か言ってくることもないだろう。
「では、さようなら」
席をたち早足に教室をでる。教室から何か聞こえるが気にしたら負けだろう。今日のことはポケモンでもして忘れよう。
晩ご飯を母さんと妹で食べ、今日あったことなどを話し合う。新年度に変わって色々なことがあったと妹。職場の上司が変わったと母さん。僕は今日あったことは特になかったと淡々と話した。
今日は特に課題が出ているわけでもないのでポケモンのレートでもして、いい時間になったら寝ようと思っていたし、実際そうするつもりだった。
ピンポーン
言えに響くインターホンの音時間はかなり遅い。何だろう。嫌予感がする。