Antoine
おれ、あのひとを撃ち落としちまった
──あのひとは空で死ぬんだって言ってたよ
つばさから火をふいて、まわりながら海に落ちてった。ほかのやつらと同じように
──あのひとの目はさいごまで空をうつしていたよ
まさかまだ飛びつづけてたなんて、これっぽっちも知らなかった
──あのひとほんとうに空がすきだったんだ
あれほどのひとがあんなとこにいちゃいけなかったんだ
──だれがいっても聞きやしなかったもの
伝えるものも語ることばも、まだ山ほどあったろうに
──あのひとの目もたましいもまっすぐ空へのぼっていったよ
あのひとを何にもないとこへ行かせちまった
──あのひと、もう砂漠にひとりぽっちじゃなかったんだね
おれ、あのひとのつばさをもいじまった
──空をとぶためのてだてがそれきりなんて
おれのつばさはあのひとがくれたもんなのに
──ぼく、あんたをきのどくに思うよ。あのひととじぶん自身を撃ち落とすのが、あんたのしごとだったんだから……