2:ヒメの始まり
私の名前は妃ヒメ。今年で普通であれば中学生として学校に通っているはずの年齢。
これを聞くと私が引きこもりか何かだと思われるから訂正。
私は今、日本の本島から離れた、嘗て名もなき小さな島だった島に創られた、数十年前に現れた”神秘”と呼ばれる魔法に目覚めた少年少女が、目覚めた“神秘”を扱う術を学ぶ事が出来る場所、時計塔学院。ほとんどの人は【ウィストレア学院】と呼んでいる場所に在籍している。
今年で中等部2年になる。
つまり私も”神秘”の力を持つ者と言う事だ。
私がこの”神秘”に目覚めたのは小学4年の頃だった。
つまり私は【後天性適格者】だった。ただ、私は一般的な【後天性】ではないみたいだけど。
まあそんなことは今はどうでもいいこと。
今、私はある場所に向かっている。
まだ日の出が上がるかの時間。そんな早朝に私は向かっている。
私にとって何よりも大切な――そして私が必ず成し遂げないといけないこと。
その場所に歩きながら、あの日を思い出す。
まだ私がただの普通の人間だった頃。
周囲には友達もおり、優しい両親に囲まれたありふれた日常を送っていた頃。
そして全てが変わったあの日を。