5:始まり⑤
少年と少女が高校の年齢となった。
2人は隔離された孤島にて穏やかに過ごしていた。
その頃は少年と少女、そして監視目的の政府の大人だけであった。
だがある日、神秘に目覚めたらしい小学生の年齢の子供達が、政府によってこの孤島に連れて来られたのだ。
最初は突然目覚めた“神秘”に戸惑い不安だった子供達だったが、”神秘覚醒者“である少年と少女の存在に触れ、戸惑いの中ゆっくりと馴染んでいった。
そんな島での暮らしの中、ある時2人は政府の人間達に一つの提案をした。
『この島に”神秘”について学ぶ1つの学院を創ってみたい』と。
提案された政府の人間達はこの提案をどうするか考え、結局のところ受け入れることにした。
現状”神秘”と二人が呼んだ魔法の力に目覚めるのは小学生の年代の子供たち。
今後も、今はまだ少ない数でも、こうして”神秘“に目覚めた者が増える可能性が大いに高い。
政府の者達も”神秘”の力の解明や研究を行いたいと考えていたので、2人の提案はある意味此方の要望に沿うものだった。
突然目覚めた”神秘魔法“を操る術を学ぶ事が出来る学院。
”神秘”について研究する事が出来る施設。
こうして御互いの利害の一致にて、この島に唯一の”神秘”を学ぶ【国立時計塔学院】が創設されたのだった。
なぜ【時計塔】と銘打ったのかは、目覚め島に集められた子供一人が『魔法と言えば”ハリ○”だよ!つまりはロンドン!』と言ったからである。
ただ少女が、『国立時計塔学院ってあれな名称ね』、と言った際に、その頃には少女を象徴し通り名となっていた光の神様の【ウィストレア】を学院の名にしよう、と言う流れになった。
少女は「恥ずかしい」と拒否したかったが、自分が言いだしっぺだったのもあり、なにより少年が、「良い名だしいいんじゃない」の一言が決め手となり少女は渋々ではあるが受け入れた。
こうして【国立時計塔学院・ウィストレア】が島に誕生した。
始まりの神秘使いであり、最年長でもある少年と少女が教師役となり、2人は目覚め島に集められる子供たちに学び指導をして行った。
御互いに教え合うのに慣れていたが、少しずつ数が増えていく子供たちに教えていくのは、2人にとっても新鮮で楽しいと思えていた。
少年と少女も、子供達から憧れの目を向けらるのもこそばゆい感じはあるが、嬉しいと感じていた。
そんなふうに過ごし年月が過ぎていく。
*
そして――
2人が成人である20歳となる時が来た。
ただ――この成人を迎える日が近付いて来た頃、いやその少し前から少年の様子が少しずつ変化しはじめていた。もっとも周りの者からは彼の様子は普段通りに見えていたようだが。
だが、愛しい同胞である少年の変化を少女が気付かない訳がなかった。
何だか思い詰めた様に暗い表情を浮かべる彼に、少女は何かを抱え込んでいるのでは?と思った。
少女は心配になり何度も少年に『どうかしたの?』と訊ねた。
しかし、少年からは何時も『大丈夫、問題ないよ』と返って来るだけだった。