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2:始まり②

”神秘”と言う魔法の才能に目覚めた者達は、この島に集められ”神秘”の扱いを学び、正しい使い方を習得する為に学院に通う。


正式名称は【時計塔学院】。かの魔法の総本山であるロンドンの時計塔から付けられたものである。

ただ多くの通う者はとある一人の少女の異名であった【ウィストレア】から、ウィストレア魔法学院、と呼んでおり、殆どの者は憧れからそう呼んでいた。



”神秘”を扱う学院の始まり。

それはとある二人の日本人の少年少女にあった。


少年と少女。

この二人は日本の別々の場所で生を受けた。


少年。

彼は日本人の両親から生まれたが、外見は日本人というより外国人に見える風貌であった。

その特徴は、殆どの日本人の髪の色は【黒】なのだが、彼の髪はサラサラの【銀】の色であった。

顔立も少年と言うよりむしろ女の子に見えると、周囲からよく言われるようになるほどであった。これは彼にとってのコンプレックスであり、女顔に触れた者は彼の逆鱗に触れ恐怖することになる。


少女。

彼女は、少年とは違い、一般的な日本人の特徴であった。夜の様な流れる黒髪。少女はその長い黒髪をポニーテールにしていた。

優しさと凛々しさを兼ね備えた女の子で周囲からなにかと人気があった。

のちにこの少女こそ”ウィストレア”と呼ばれ、学院の名になる。


少年と少女。

この二人は御互いに別の場所で生を受け、そして、惹かれ合うかのようにであった。

後に2人は、あの出会いは運命だった、と語った。


少年と少女には誰にも言えない、生みの親である両親にも言えない秘密があった。

その秘密こそが、のち”神秘”と呼ばれる超常的な力であった。

生まれながらに得ていた魔法の様な不思議な力。

2人は出合い合う前まではこの力を秘密にし誰にも告げる事なく生活していた。

それは幼いながらに2人は理解していた。

自分達のこの力は周囲の人間にとっては異端な力であると。

知られても周囲には理解されることはないと何故かそう感じ取っていた。

それゆえに出逢う前は正直2人は孤独感で一杯で不安な毎日だった。


幼少の頃、少女の暮す街に、少年がやってきた。

『銀色の髪をした変な子が来たぞ~』。

少女はそんな噂を聞き、その噂の少年を一目見ようと赴いた。

そして――。


『あっ…』

『うそっ…』


2人は出合って一目躱した瞬間に理解した。


『「この子は自分と同じだ」』


と――。


少年も少女も、この出会いによって御互いを本当の意味で理解してくれる同胞に出会えたと思い歓喜し安堵した。

ずっと孤独感を秘めており、誰にも言えず相談も出来ない。迂闊に親しい友人でも作ると間違ってこの”力”を知られるのでは?と不安でもあった。


『初めまして!私、こんな力を持ってるんだけど、君もこんな力を持ってるよね?』


そう少女は少年に告げた。

確信を籠めて。

少女は掌に小さい光の球体を作って見せた。


『…うん。できる――よっ!』


少年は頷くと両手を叩く様に合わせた。

すると周囲の時間が停止していた。

人も動物も何もかもが止まっていた。


少女は只々驚いた。

一定の空間の、おそらく『時間』を操り止めている事に。


『わあ!すごーい!…あなたって凄いのね!今の私でもこうも凄いことは出来ないもの!』

『そ、そう…かな?』


少女の純粋な言葉に照れる少年。


『ええ。凄いわ。…ふふっ』

『どうしたの?』


急に笑う少女。

どうして笑うのと不思議がる少年。


『だって凄くうれしいんだもん♪やっと……やっと自分と同じ人に出会えたんだもの!』

『そ、そうだね、ボ――』

『だってこんなにもかわいい女の子(・・・)に出会えたんだもん♪』

『!?………だ』


急に俯きその長めの銀髪で表情を隠す少年。なんだか震えてすらいるようだった。

少女は急な少年の態度に不思議そうに、そして『”もしかしたらすごく喜んでくれているんだろうか!”』とか思っていた。


『えっ?どうしたの?』

『…ボ……は、……だ』


ぼそぼそと振るえるような声。


『えっ、なに?』


ふと少女は気付き始めた。

時が止まっているはずの空間内が揺らぎ振動しているのに。

それはまるで――『怒っている』と感じさせられた。


(あれ?もしかして私何か間違えてる?)


そう思った瞬間。少年がばっと俯いていた顔を上げた。

愛らしい顔を、眉ねを上げながら叫んだ。


『誰が女の子だぁ!ボクは男っだぁあああぁ!!』

『ご、ごめんなさーいっ!?』


少女は勘違いしていた。

目の前の少年を自分と同じ同性の女の子だと。

少女の勘違いは無理もなかった。

今まで見ていた男の子に比べて長めでサラサラと手に流れるような銀色の髪。睫毛も長く整っている。

背丈も自分と同じくらいのきしゃなイメージを抱かせる。

なにより声が、まだ声変わりしていない時期と言うのもあったが、父親のような男の人と違う高めの、自分と同じくらいの声量であった。


少女はすぐさま謝った。

少年は能力を解いた後もしばらくは頬を膨らませプンプンと怒っていた。

少女はその少年の様子に(可愛い…)と思っていたが、決して口にはしない。地雷を踏むのは一度にしないとね、と。


こうして少年と少女は出会った。

この出会いの後、2人は唯一無二の親友となった。

いつも一緒に行動もした。

時には揶揄われたりもしたが、2人は決して気にしなかった。

自分達は二人で一人。

どちらが欠けてもダメだと、御互いに感じていたから。


同じ仲間を得て孤独から解放され幸せな時間を過ごす。

少年と少女の幼少期はそうして過ぎ小学生になった。




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