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7:

ヒサメ君――。


私にとって何よりも大事な友達。

ううん。違う――。

私にとって何より大切な恋した男の子。


ヒサメ君との出会いはこの島にやってきて暫く経った頃。


彼との出会いの前に、私がこの島にやってきた後を思い出す。



【初等部4年時】


「はぁ…」


また溜息が出る。

この島――。

日本から少し離れた孤島であるこの島には、”神秘”と呼ばれる、今まで架空の存在であった、小説とか映画に出てくる魔法と類似した力を持った人間が集められている。


私こと(きさき)ヒメも今はこの島に連れて来られ過ごしている。

連れて来られたのは私の意思じゃない。



この島に来る前。

私は普通の人間として、優しく大好きだった両親に、大切だとも思っていた友達もいた。

なに不自由のない普通の生活を送っていた。

けどあの日。

私の世界が移転して変わった。


――私が”神秘”と言う非日常を象徴し、普通の人達から嫌悪として向けられる存在になったからでした。

私は”神秘使い”となってしまった。


私がこの”神秘”に目覚めた事で、友達だった皆は、私を化け物でも見るような目を向けてきた。

優しく私を守ってくれるはずの両親も、私がこの力に目覚めた事で、私を捨てた。

そう。文字通りに私は捨てられたんだ。

この島に。


この時はまだ、自分がこんな周囲から化け物のようだと蔑まれる様な嫌な力を持ってしまったことに忌諱を感じていた。

どうしてこんな力なんて持ってるんだろう、と。


でも――

私は後に感謝することになる。

だって、この”神秘”に目覚め、この島に連れて来られたことで、私は()と出逢う事が出来たのだから。



「はぁ…」


また溜息が出る。

私はこの島にやってきて何度目の溜息を付いたのだろうか。


周囲からは何度も溜息を付く姿から【溜息姫】なんて呼ぶ子もいた。

どうでもいいから気にしてないけど……。



私は両親から捨てられた現実から涙が溢れいつの間にか眠っているうちに此処に連れて来られた。

何だか怖い印象のあるスーツを着た大人の人。一緒に付いて来た高校生のお兄さんが【先生】と呼んでいたので教師か何かの人と思う。

そしてジャージの高校生のお兄さん。名前はアツマさん。


そのお二人に島をまず案内された。

孤島らしく小さい島。

名もない島。

自然のある空間。

空気も何だか何かが違う様に感じられた。


それから歩く。

元無人島だったらしいけど、今では本島とこの島を繋ぐ長い橋。

その橋の下から今まさに向かっている場所まで舗装された道を歩いて行く。

私は暗い表情のまま後を追う様に歩く。

そんな私を気遣ってかアツマさんが励ますかのように話しかけてくれた。

それでも私の心はほんの少ししか癒えない。


歩いてると一つの建物が見えた。


「目の先に見えるのが今日からヒメちゃんが過ごす学生寮だよ。最近改修したから見た目も中も綺麗なんだ。他の子も結構気に入ってるんだ」

「…そうなんだ」

「ぁ…ああ」


そんなの正直どうでもいいと思った。

けど何だかアツマさんががっかりとしていたのが、なんだか申し訳ない気がした。

私を気遣ってくれるのに、いくら気分が暗くなっているとはいえ、子供ながらに悪いことをした気になった。


目的はこの寮ではなく、今後通い学ぶことになる学院らしいので、スルーして進む。

寮から10分くらい歩いて行く。この島で一番奥、そこには大きな敷地に洋風の建物が目に入った。

中でも長い建物があり、てっぺんの所にはカチカチと動く時計があった。

運動場もあり、遊びに耽っている生徒と思われる子供の姿が見える。


(……あの子達も、私と――)


先頭を歩いて案内していた怖めの先生が此方に振り返った。


「…今日から君が通い”神秘”を学ぶ場所。名称を【時計塔学院】、殆どの者は【ウィストレア学院】と呼んでいる。…ここで多くを学び、君が”神秘使い”として成長するのを期待している」

「……わかりました」


ただそう一言返した。

正直期待なんてされたくないと思った。





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