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6:後悔と決意の…

【本編軸―中等部2年】


そんな経緯で、私はこの島にやってくることになった。

その当時は目つきが怖いと思ったけど、生徒思いのカタギリ先生と、当時は高校生だったアツマさんに連れられて着たんだよね。

まあ私はただ両親からも捨てられた事実に悲しく涙を流し、いつの間にか泣き疲れて眠ってしまっていたので、目覚めたら島だったのもあり、あっと言う間って感じだったかな。


”神秘”に目覚め、そしてこの島にやってくることになった時を思い出していたら、目新しく建てられた校舎が見えた。

此処は私が現在通っている新設時計塔学院の校舎。

数年前の”ある出来事“が起きた際に当時の校舎、今の旧校舎が使用できなくなり、急遽本校舎を創設し移設したのである。

しかし今はここに用はない。


私はさらに島の奥に入っていく。

私の目的はその奥にあるもう一つの校舎である旧校舎の方なのだから。


歩いて数分。

旧校舎が見えて来た。

旧校舎に近づくに連れ冷やかな空気が漂ってくる。

今の季節は春。元々この島は温暖な気候で冬でも秋頃の気候で過ごす事ができるはずなのだ。

だけど、旧校舎から漂う空気は冬の中の様である。

まるでここに誰も近寄らせない意思でも感じる様に。


私は「はあ~」と白い息を吐きながら立ち入り禁止と看板のある旧校舎を抜ける。旧校舎は所々に亀裂が走っており、一部には残された凍て付いている部分もあった。


そして最も寒気のあるグラウンドに足を踏み入れる。


私にとってあの時に強い後悔と罪悪感、そしてある決意をした場所――。

その場所に眠りつく君の元に。


グラウンドに降り立つと後悔の瞳をグラウンドの中央に向ける。

私の瞳に映るのは、2mはある菱形のクリアブルーの氷像。

ゆっくりと氷像の元に歩いていく。

近付くにつれ氷像な中に人形が見えてくる。



ヒメの表情には憂いが浮かんでいた。

その表情に浮かぶ感情は深い“後悔”と必ず取り戻すと言う“決意”、そして……氷の中に眠る少年への純粋な“想い“であった。


この氷の中にはまだ子供と言える年齢の様相の、一見少女にも見える綺麗な首元まである薄い水色の髪、眠っており閉じている瞳の睫毛は長く、鼻も小さく整っている。体格も細身ですらっとしている。

この中に眠っている少年の“時”は数年前、ヒメがまだ小学4年の頃、つまり島に来た時に出会ったあの頃から止まっている。


ヒメがこの氷の中に眠る少年の前に立つと、氷に右手を触れる。

触れて感じるのは只々“全てを拒絶している”と言う絶望だった。



「……まだ…ダメ、なのかな…」


触れた右手を少し離すと、右手に光の球を作る。そして氷全体に染み込ませる様に作った光の球を氷に当てる。

当てた光が氷像全体に行き渡り淡い光に満ちる。

作ったこの“光”には、対象の痛み、苦しみ、怒り、と言った負の心を癒す効能が籠められている。

あの時……あの後悔した日から今日までずっと、こうしてこの氷の中に眠る彼、氷雨(ヒサメ)君の傷付いた心を癒し、この全てを失い拒絶した心を象徴する氷の檻を解かし助け出す為ずっと続けていた。

氷雨君の深く傷付いた心を()(ほぐ)すには至れずにいた。


今日も失敗。けど、諦めるわけにはいかない。


「必ず…私はあなたを…ヒサメ君を、その止まった心に触れる。そして……私は、今度は必ず、ヒサメ君の手を取って見せる!あの時は…私は怖くて、ヒサメ君の手を取る事が出来なかった。私にとって、この学院で唯一の友達だったのに。いや、だからこそ、今度こそはヒサメ君の支えとなり助けとなってみせる!…だから、また明日も来るね。ヒサメ君が、拒絶した私を許し、この中から出て来てくれるのを!」


私はいつもの様に色んな話をする。

もしかしたら私の声が届いると信じて。


「…それじゃ、また来るね。ヒサメ君…」


そう告げて旧校舎を後にする。





『‐----ヒ――メ――ちゃ―ー――』



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