異人と戦ったでいやがります!
2
信じられない。瑞希は行方不明になって2年間もこの世に姿を現さなかったのだぞ!
「どうして今頃になって。メールも返さないで…」俺が瑞希に怒鳴る。
「こっちは心配していたんだぞ!」
「…」瑞希は一言もしゃべらない。ただ悲しそうに下を向いているだけ。「悠ちゃん。これには理由があって…」瑞希が俺に悲しそうに言葉を返す。
「そんなの関係―ねー。せめてどこに行ったかは教えてくれてもいいだろう。俺はずっとお前がこの世から姿を消したと思っていたんだぞ!」俺がまた瑞希に怒鳴る。
「ご、ごめんね悠ちゃん。ちゃんと事情は説明するから。」素直に瑞希が謝る。
「こ、こっちこそごめん。つい熱くなってしまって……」俺は自分の頭を冷ましながら言った。
「でもうれしいな。悠ちゃんがここまで私の事、心配してくれていたなんて。」瑞希が俺に嬉しそうに言う。
照れくさくなる。でもなんか大事なことを忘れているような…
「ゆ、う、と~!この子とずいぶん仲がいいじゃない!」亜衣が俺の背後から恐ろしい声で話しかけてくる。
「あ、亜衣そのだな…瑞希は俺の昔の彼女で…今はただの…友達だ…」俺が亜衣に必死に説明する。
ちなみに亜衣が怒ると、とてつもなく怖い。以前亜衣が授業中に告られた時にクラス中が爆笑して亜衣が恥ずかしくなり、その告ってきた男子を仮死状態にしてしまったのだ。
「私たちの関係は今も続いています」瑞希が構わず答える。
亜衣がムッとする。やばいぞこれは。
「ちょっといいですか瑞希さん…これはあなたが決める事じゃなくて悠斗くんが決める事じゃないのですか?」亜衣が怒りっぽい口調で話す。
「いや、もう悠ちゃんは私の事を許してくれたのよ。だって手紙に会いたいって書いたら今、会ってくれているじゃないですか。」瑞希が勝ち誇った顔で答える。
「まさかあのラブレター出したの瑞希だったのか?」
「あら、わからなかったのですか悠ちゃん」瑞希が当然のように答える。
「ちょっとラブレターって何のこと悠斗くん」
「あのだな亜衣、俺が朝登校したときにバックの中に入っていたんだ、その、手紙が」
「気に食わない…」亜衣がとうとう怒りだした。
「まあまあ落ち着いて亜衣」俺が亜衣を慰めるように話す。
『じゃあ、悠斗くん/悠ちゃんはどちらを選ぶの!?』
「え…」俺は究極の選択肢を押しつけされた。
「さすがに今は決められませんね、悠ちゃん。この雌豚と私との差は開きすぎていて、勝負になりませんね。」
「な~に~あんただって、悠ちゃん悠ちゃん迷惑なのよ。気もいし…」
「あんた今、悠ちゃんの事を否定しましたね」
「違う!否定したのはあんたの方だって言うの!」
「まあそうですか。でもさっきの言葉はどう考えても悠ちゃんのことを否定しているとしか聞こえなかったね。ねえ悠ちゃん」
「え…」
「悠斗くん、こんなブスな女よりも私の方が魅力的でしょ!」
「そんなことはあるはずがない。悠ちゃんは私の事を選んだのよ!」
なんかだんだんわけのわからないことになってきた。終わりそうにない。
「そうだ…こんなことよりも、夕飯を食べにいかないか?二人とも…」俺が新しいことを提案した。
「悠ちゃんが言うなら…こんな女がいない方がましなのにな」
「ハハハ…面白い冗談を言ってくれるわね。もちろん悠斗くんは私といたいに決まっている。」
「お前らもうやめろ!きりがない!」俺が叫ぶ。
『む~』お互いに睨みあう女子二人。大変なことになったなこれは。
☄
俺らは〝ワック〟で夕飯を食べた。女子二人はどれだけ多く食べられるかを対決している。どれだけお金使えば気が済むんだよ。これ全部おれのおごりだから、俺の財布はもう空っぽ寸前。
「私にゅ方があんたよりも食べているわね。」亜衣が食べながら瑞希に話しかける。
「何をいてにゅのでシュカ。あなたよりも私の方が食べてるね」瑞希の方も亜衣に負けない速さで食べている。
はあ。また始まった…きりがない。
「あのだな…二人ともよく聞け。これは一回しか言わないぞ。お前らは同じくらい好きだから…」
『え…』二人の声が見事に重なる。
………… 沈黙が流れる。
「納得いかない。」
「え…?」次は俺が亜衣の発言に驚く。
「そうね…あなたの言葉に初めて賛成するは。」瑞希が言う。
「ふん。あんたに賛成してもらわなくても私はいいんだけど。」亜衣が瑞希に突っ込む。
「なんですと~」瑞希が怒りっぽくなる。
「ストップ!もうきりがなくなる!お互い反論するのはもうやめろ。」俺がもうこの空気に耐えられず叫びそうになる。
「じゃあ一つ提案がある。私とあんた、一人ずつ悠ちゃんとデートして最終的にどちらと付き合うか決めてもらう。まあ、私が勝つのは見えていますけど。」
「お、面白そうじゃん。」亜衣が賛成する。
「ちょっと待った。それ俺に利益あんのか?」俺が突っ込む。
「もちろんあるよ、悠ちゃん。悠ちゃんがまた私と付き合うことができるの。」瑞希が俺に真剣なまなざしで見つめてくる。
「はあ…」俺が半分納得する。
「それよりもデートの日を決めようよ!」亜衣が俺に言ってきた。
「それは早すぎるだろ!」俺が反対する。
そしたら亜衣が箸で俺の鼻をつつく。
「十一月二十一日は何の日だぁ~」亜衣がいたずらっぽく言ってくる。
「何にも心当たりがありません…」俺が即答にこたえる。
よほどショックを受けたのか、亜衣が下を向いて席の端っこによった。ズドン!席から落ちた。
「バカ悠斗!私の誕生日よ!」亜衣が俺に怒鳴る。
「そ、そうだっけ…」俺が驚く。前にこんな話を聞いたような気がする。
「ごめん…亜衣。俺完全忘れていた…」
「む~」亜衣が納得いかない顔で俺を見つめる。
「そ、それで、デート日をその日にしたいわけ…?」
「あたりまえでしょう!」
「やった~じゃあ私は悠ちゃんとクリスマスイブデートを予約!」瑞希が元気良く叫ぶ。
目線がすごい…ジロジロ見られている。
「ママ~デートだって。」どこかの子供が母親にそう言っていた。
「もうここから出よう…」俺はそういって、片方に亜衣の手を。もう片方に瑞希の手を握ってマックから出る。
「わ、どうしたの悠ちゃん…」
「悠斗くん…そんなに勢い良く…」
俺は黙って二人の手を引きながら走る。外は真っ暗だった。もうこんな時間か…
「もう暗いから帰ろよ。」俺がふたりに言う。
☄
散々な目にあった。なんで今頃、瑞希と再会しなければいけないんだろう。それよりもデートって瑞希とはしたことあるからわかるけど…亜衣はどこに行ったら喜ぶんだろう…
道の角を曲がる。
ドン!
誰かにぶつかる。
「あ、すみません。前を見ていなかったので…」俺がぶつかった人を見ずに謝る。
「キミが望月悠斗くんかな?」
『お兄さん。そんな確認必要ないよ。』
え…?!
俺はぶつかった人を見る。そこには二人の男性がいた。一人は結構背は高く、髪が赤色の青年だった。顔の右側に大きなイレズミがあったけど。もう一人はすごく不気味だった。顔半分が闇で覆われていて見えないのである。こっちの方がもう一人の男性よりも背が高い。
「もう一回聴く。お前が望月悠斗というガキかな?」今度は顔にイレズミガあった方の男性が話す。大迫力だ。
『兄さんこの子、怖がっているよ。』もう一人の男性が話す。でもなんかすごく不気味だった。なぜなら、その人の声はなぜか二人の異なる人が同時に話しているように聞こえるのである。
「お前は少し黙っとけ、ルノワール。」どうやら不気味な男性に名前はルノワールというらしい。
『わかったよ、リクお兄さん』お兄さんの方はリクという名前らしい。
「それよりもこの目的のガキは捕まえた。」
「え…?」思わず声が出る。
「申し遅れました。俺の名前はリク・ザターンでございます。こっちの方はルノワール・ザターンです。」リクが丁寧に自己紹介をしてくれた。
「俺になんかようですか?」俺はさっきよりも恐怖を感じずに質問した。
「ああ、そうです。では、答えてもらいましょうか。剣の卿聖鋼はどこにいる!」
「剣の卿聖鋼…?」
『トボケない方がいいですよ。お兄さんが怒ると…死にますよ。』ルノワールが俺に忠告してくれた。
「でも俺知らないよ。ていうかなんだよ剣の卿聖鋼って!」俺がリクに怒鳴る。
「オオ。いい度胸だこの俺様に剣の卿聖鋼の居場所を伝えようともしないなんてな。でも罪を犯した人には罰を与えなければいけないな。」リクが俺に上から目線で言う。
「罰…?」
俺の声と同時にリクがパチンと指を鳴らす。その途端、それは違和感を感じた。だんだん気持ち悪くなってくる。く、苦しい。
「ハハハ。愉快なもんだ。こういう大事な情報を素直に俺に伝えないからこうなるんだよ!」リクが愉快そうに笑う。
「あ~あ。だから言ったじゃん。お兄さんを怒らせたら駄目だって。お前さんの周りの酸素をお兄さんに抜かれてしまったね。まあこうなることは知っていたけれど。」ルノワールが言う。
「グァ…」俺は自分の首を抑える。このままだと死ぬ…だれか…
『もう、こんくらいにしてあげなよ。こいつも一応あの噂が本当ならその力に目覚められたら厄介だよ。』ルノワールがリクに言う。
「それも一理あるな。」リクが納得する。
パチン
リクが再び指を鳴らす。同時に俺は地面に倒れこむ。
「結構苦しがっていたようだな。」リクが何にもなかったように言う。
『でもこのことがあいつらにばれたら厄介なことになりますぜ兄さん』ルノワールがリクに言う。
「くそ…」悔しい。ただもて遊ばれた気しかしない。
ルノワールが俺に背中を見せる。しめた!俺は地面に大量にある砂利をつかんでルノワールめがけて投げた。しかし驚いたことにルノワールはすべてよけた。まるで俺がルノワールにめがけて砂利を投げる事を知っていたかのように…
『わかりやすいですねお前さんは』ルノワールが俺に話しかけてくる。
「どうやらこいつは本当に剣の卿聖鋼のことは知らないらしい。つまらねーの」リクがルノワールにつまらなそうに言う。
『兄さん…ひとつ問題が…あいつらが俺たちの気配を感じてここに1分後来るよ。』ルノワールが意味がわからないことを言ってくる。
「逃げるか。」リクがそう言った同時に光の矢がリクの頬を掠める。
「え…?」俺が驚きの声を上げる。
ヒュッ
俺の頭上で誰かが下りてくる音が聞こえた。
「はは。もう追いつかれたか。さすがは隊長さんだな。」リクが楽しげに言う。
俺の目の前で誰かが下りてくる。男性だった。俺よりも少し背が高い。白いマントに身をくるんでいる。右手には光っている弓矢を持っている。
「リク・ザターン、ルーノワール・ザターン。国際秘密重要指名手配。散々探したぜ。」俺の目の前にいる人がリクたちに向けて言う。
『ずいぶんと早い到着ですね。私の推測では1分後に来るはずでしたがね。』
「俺はもうお前の能力を知っている。ルノワール。未来を見る事が出来る能力者。厄介な能力だが、自分の未来しか見れない。」目の前の男性が言う。
うそ!未来が見える?
『あんたも能力者でしょ、サツキ・ノル・ダノエール隊長さん。あんたの能力は気配を感じ取る能力者の中でもトップクラスの能力を操るSDKTの隊長を今、努めている…』ルノワールがサツキという男性に言う。
「は!お前みたいなやつに俺の能力にかなうわけがない…リク!今日は素直に消滅他界しろ。そろそろ護衛も来るだろう。」サツキが言う。
『お兄さんあと5分後に本当に護衛が来るよ!』
「その前にこいつを始末すればいいじゃないか。」リクが言う。
それと同時にパチンと指を鳴らす。
「やはりそうきたか。」サツキがそう言い、瞬間的に別の場所へ移動した。
「リク・ザターン。能力者の中で最も危険と恐れられている男。自分の半径5メートル以内の気体を変化させたり、操ることができる。あんたを殺したら俺の尊敬度が確実に上がる。」サツキが余裕をもって言う。
「ちっ、外したか。」リクがまた指を鳴らそうとする。
それと反射的にサツキが自分のポーチに手を突っ込み、手榴弾を三つ取り出してリクにめがけて投げる。
「そうきたか…」リクが悔しそうに言う。
パチン、リクが指を鳴らした。
さっきまで爆発しそうだった手榴弾が音を消した。多分周りの酸素を抜いたのだろう。サツキはそのままリクに突っ込んでいく。サツキは自分の弓に光の矢をセットしてリクに狙いを定める。しかし、その未来を察したルノワールはサツキの前に現れた。
シュッ
サツキが弓を放つ。
『グァ!』ルノワールが矢を自分の胸があるあたりに受ける。
しかしおかしい。ルノワールの能力はあくまでも自分の未来を見る能力…なのに兄のリクの未来を見た。
「ルノワール!俺をかばうなんて馬鹿げたことを考えるのをやめろ!」リクがルノワールに怒鳴る。
『もともとそういう未来なのさ、兄さん…』ルノワールが苦しそうにリクに話す。
そういうことか…自分が矢を受ける未来を見て、自ら矢を受けたのか…
「くっそ!」そう言いながらリクがサツキがさっき投げた手榴弾をサツキに投げる。
それと同時にパチンと指を鳴らす。
「爆発するぞ~」サツキが叫び、俺を抱いて、遠くに逃げる。
ドオオオオオオオオオオオオオオオン!
激しい音とともにさっきいた場所が爆発する。
「投げるときに酸素を濃くしやがった。」サツキが悔しそうに言う。
「あ、あの…ありがとうございます。サツキさん…でしたっけ。」俺がサツキに礼を言う。
「ああ、気にするな…俺はもともとあいつらを追ってこの星に来ただけだからな…」サツキが言う。
「この星…?」俺が疑問を口にする。
「知らないのかお前。俺はSDKTという組織の隊長をやっている。」サツキが俺に説明してくれた。
「あっ」サツキがいきなり驚きの声を上げる。
俺はサツキが見ている方向を見る。そこには小さな二つの人影が空中を飛んでいた。よく見ると、リクがルノワールを肩に抱いて宙に浮いているのだった。
「さすがはリクだな。十二新能力の一人。」サツキが意味不明な言葉を発する。
「十二新能力?」
「このことも知らないのか?十二新能力とはだな…能力者の中でも最強の十二人の事を言う。ちなみに俺のその中の一人さ!」サツキが自慢げに言ってくる。
「はぁ」俺は返す言葉がなくため息をついた。
十二新能力、能力者、剣の卿聖鋼、何が何だか意味がわからない。もし、あの出来事が本当なら、俺はなぜそれに関わらないといけないんだ!そういえば、リクは剣の卿聖鋼という人物を探していたな…
「おっと、もうこんな時間か…」サツキが時計を見る。もうとっくに夜の十時を回っている。
「ではちょっと俺は用事があるから先に失礼するよ…またやつらは追ってくるだろう…その時はその時で俺が助けてやるから安心しろ。」
「ちょっ。剣の卿聖鋼ってなんだ?リクが探していた…」俺がサツキを引きとめて聞いてみる。
「剣の卿聖鋼?あいつらそれを探しているのか…お前は何にも知らないやつだな~」サツキがいう。
「は?」俺は何か知っているはずなのか?リクたちは俺の名前を知っていた…
「まあ、そのうち知ることになるだろう。身近な人がお前の友達でいるからな…」
「は?」再びわけのわからぬことを言うサツキ。
サツキは俺のことを気にせず俺に背中を向ける。もう行くのだろう。
「今日は会えてうれしかったですよ……初代十二新能力さん…また会いましょう。」
そういってサツキは空高く飛び、俺の視界から消えていく。
「初代十二新能力?」確かサツキが俺の前からいなくなるときに俺のことをそう呼んだ。
頭の中が疑問でいっぱいになる。俺はあいつらとどのような関係なんだ?別に俺は特別なパワーを持っているわけでもない。しかも、身近な人が俺の友達?
わけがわからない。
「能力者……」
どこかで聞いたことのあるような響き…
ズキッ
急に頭に激しい頭痛が襲ってくる。そのことを思い出そうとしても何かがさえぎっているような…
俺は家に帰り、すぐにベットにもぐりこんだ。