三流恋哀小説
一般的な恋愛作品。それは恋愛を作者が独自に解釈し書き上げるものである。この作品もそんな恋愛作品の一端である。
三流恋哀小説
やあ、君たちは恋愛ものを読みたくてこの本を取ったのだろう。この一文だけ見ると「お前やあ、
君たちは恋愛ものを読みたくてこの本を取ったのだろう。この一文だけ見ると「お前は誰だ」状態
なのは見え見えだ。まあまあ、私も君たちの一人、ナレーターだとでも思ってくれたまえ。
彼女は今日も準備をする。今日はいつもよりも浮かれているらしい。鼻歌交じりに髪を結い、ス
キップをしながら部屋を移動している。
「どの服にしよう?」
彼女のかわいい声が今日初めて発せられた。どうやらデートに行くようだ。こんなに浮かれてい
るということは、よほど待ちわびていたのだろう。おっと、話している間に準備を終えたようだね。
……なんと美しい。白く細い首筋に、思わず指を伸ばしたくなるほどにね。君はどう思うかね?
おっと、小説だから見えないんだったな、すまない。
少し場所を移そう、彼女を見失ってしまう前に。
さて、紹介が遅れた。彼女は高木冴(22)。一人暮らしの新卒だ。数カ月前に職場で恋に落ち、ト
ントン拍子に交際を始めた。なに? その馴れ初めを見せろというのかね? そんなもん見せられ
るなら見せているさ……。職場のシーンなんて、書く側からすれば退屈の極致だからね。
さて、彼女は待ち合わせ場所に着いたようだ。「ものすごく楽しみ」と呟く彼女に、二人の男が近づ
く。……いわゆる王道展開というやつだ。待ち合わせ中に絡まれるなんてテンプレも程々にして
ほしいものだが、ここで彼氏くんが登場し、「俺の連れだ」と腕を差し込む。
……吐き気がするね。ヤラセを疑うレベルの安っぽい演出だ。だが、せっかく手に取った本だ。こ
んな稚拙な筋書きでも、作者は必死に絞り出したんだろう。もう少し、我慢して付き合ってやってく
れないか?
……ようやくレストランだ。見てくれ、冴くんの顔。緊張でメニューが逆さまなことにも気づいていな
い。対する彼氏の佐藤。どこにでもいそうな名前、どこにでもありそうな気遣い。
『ここのパスタは絶品なんだ』
聞き飽きたセリフだ。君はここのシェフか何かか? 冴くんも「すごい、物知りなんですね!」じゃな
いだろう。その無垢な瞳は、泥を投げつけたくなるほどに輝いている。
おっと、彼が身を乗り出した。
『実は、冴さんに伝えておきたいことがあって。親父の借金が、まだ一千万ほど残っているんだ』
ははっ! こりゃたまげた。恋愛小説から急にドロドロの金銭問題か?
「そんな大金、支払えるわけないわ!」
『……でも、あと百万円あれば完済の目処が立つんだ。だから、冴。僕と結婚して、一緒に歩んで
ほしい』
「……そんなこと。もちろん、いいに決まってるじゃない!」
ガッテム! 結局は愛の力で解決か。構成が下手すぎて反吐が出るよ。短編小説とはいえ、こん
な救いようのないハッピーエンドを誰が望むというんだ?
さて、我々の出番ももう時期終わりだ。どうだったかな? このテンプレート観察は、私にとっては
……殺してしまいたいほどに、胸糞が悪かったよ。
君たちの感想も、この「不快感」に同意してくれることを切に祈るよ。
では諸君、また次回作で会おう。
読んでくださりありがとうございます。初作品となりますので短編ですが、いかがでしたでしょうか?
今後も短編となりますが作品を出していこうと思いますのでよろしくお願いします




