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クラスのクール美少女が、俺の弁当以外は食べないと宣言した件について  作者: もかの


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9/22

第9話 ……低くないです

「はぁ」

「お前そんなに運動嫌いだったっけ?」


 時は流れて一週間後の月曜日。

 今週末ついに開催される体育祭に向けて、これからのホームルームで出場種目を決めるところだ。


「別に嫌なわけじゃないけど……強制されて見世物になる体育祭はなぁ」

「思考が歪んでやがる」

「まぁそもそも運動が得意なわけでもないからな。お前と違って」

「サッカー推薦どもども」


 ニッと歯を見せて笑う柊。うちはサッカー強豪校としても有名で、柊はスポーツ推薦で入学してきたのだ。

 運動ができて性格も良くて、さらには人当たりもすごくいい。

 なんで彼女がいないのか不思議なくらいだ。


「柊くんは何にでーるのっ!」

「いってぇ! 叩く力つえーんだよ、あお!」

「柊くんにしかしないからだいじょーぶ」

「オレにもしたらいけないんだよ……ったく」


 あぁ、柊に彼女ができない理由、めちゃくちゃあったわ。


 柊の背中を元気に叩いた女子生徒、胡桃(くるみ)(あおい)

 綾乃が『クール美少女』なら、胡桃は『元気系美少女』とでも言えようか。

 クラス中を明るく照らしてくれる性格で、薄い亜麻色のショートの髪に童顔の紛れもない美少女。


 どうやら柊の幼馴染らしくて、教室でも常にベタベタしている。

 あまりよろしくない言い方だが、クラス中が認知していることなのでいいだろう。


 万能イケメンの柊と明るい美少女の胡桃。

 二人ともモテるはずなのに、二人で独自の世界を気づいてるから誰一人近寄れないのだ。自分たちが挟まるのではなく、傍から眺めていたいような尊い関係。


「お前らはほんとに……」

「「え? なに?」」

「いや、なんでも。顔が良すぎるよなと思っただけ」

「「いや~それほどでもあるかも」」

「仲良しか。息ぴったりすぎるだろ」


 幼馴染とは小さい頃から距離が近すぎて恋仲には……、みたいな話は聞いたことあるが、それにしても「付き合えよ」とは思う。

 生殺しにされている他の生徒たちが可哀想なのだから……。


「オレは順当にリレーかな。あんまり参加したがるやつもいないだろ」

「お前が走りたいだけだろ」

「バレた?」

「うちもリレーかな~。柊くんの正妻としてバトン渡さなくちゃ」

「ならオレも男女混合リレーに立候補しておくかぁ」

「倉田さん……そこは否定しておかないといけませんよ」


 黙っていられなくなった綾乃が呆れるように柊にツッコむ。


 弁当発覚事故があってから、俺と綾乃が学校で会話しても何か言われることはなくなった。

 もちろん俺を羨むような視線はひしひしと伝わってくるが、関係を持っているということが周知されたおかげでそれ以上のことは何も無い。

 結果的に見ればよかったのかもしれないが、クールじゃない綾乃を知っている俺としては、学校の姿が『冷たい』と感じてしまう。

 俺の我儘なので絶対に口にはしないが。


「綾乃さんもリレー来るのか?」

「行きませんよ」

「えぇー! 一緒に走らないの?」

「さすがに部活で走りを専門としている方たちには負けてしまいますので」

「すーちゃんなら負けないと思うけどなぁ……」


 俺と話すようになったことで柊とも話すようになり、さらに胡桃とも話すようになったということで。

 俺の知らないところで、まるでドミノ倒しのように関係が築かれていっていた。


 俺以外は生徒公認のイケメン、美少女、美少女なので非常にいたたまれない。


「すーちゃん呼びはやめてください……誰もいなかったらしてもいいですが」

「言った!! 今言ったね!?」


 あまり深くは考えずに返事をした綾乃だったが、その言葉を胡桃は聞き逃さずまくしたてるように確認を取る。

 いつも元気な胡桃がさらにパワフルになるものなので綾乃も驚きながら、「は、はい」と目をぱちりと見開きながら頷く。


「みんなぁー! 女子リレー出たいよって人――」



 ◇ ◆ ◇



「今年は走るつもり無かったので油断してました……」

「うちの胡桃をナメちゃいけませんよ、お嬢さん」


 結局リレーをすることになった綾乃は、俺の部屋にジャージ姿で弁当を持ってきていた。

 真面目な綾乃は、体育祭に備えて走る感覚を取り戻したいらしい。


「そういえば、桐原さんは運動しないのですか?」

「ん? 俺はいいよ。障害物競走だし」

「いえ、体育祭というのもそうですが、筋肉をつけるとか体型維持とか……」

「めんどい」

「言うと思いました。もう、育ち盛りに運動しないと大きくなれませんよ」

「親かよ。これ以上高くなったら綾乃の首がもげるぞ」

「……低くないです」


 俺を見上げながら言っても意味ないだろ、と思いつつも、怒られそうなので黙っておく。

 俺も一七〇センチほどなので男子の中では特段高いわけでは無いが、綾乃はそれ以上に低いのでいつも少し見上げている。

 近くにいる時は上目遣いっぽくなり子供らしさが増すのも、クールらしさが見えなくなる原因の一つかもしれない。


 また、走るためだろう、今は髪を高い位置で一つに結っているので、なおさら子供っぽい。


「よければ今度一緒に走りますか?」

「学校の奴らに見つかったらどうするんだ」

「ふふ。冗談です」

「ったく……あ、うち来るの何時頃になりそうだ? 飯もそのくらいになるようにするから」

「ありがとうございます。どうでしょう……三十分ほど走るつもりですが、お風呂入ってからになるので……」

「なら走り終わったら教えてくれ。そん時から作り始めたらちょうどいいだろ」

「分かりました。すみません、合わせてもらって」

「気にすんな。じゃ頑張ってな」


 いってきます、と言って俺の部屋から出ていく綾乃。

 同居感が増してなんか恥ずかしいな。


 今日は夕飯遅くなりどうだし先に課題を終わらせておくかと思いリビングに座る。

 しかしそこで俺は、衝撃の事実に気づいてしまった。


 この後……風呂上がりの綾乃がうちに来んの?

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