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クラスのクール美少女が、俺の弁当以外は食べないと宣言した件について  作者: もかの


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第28話 あーん

「……と言いますと?」


『もっと子供扱いしていいと思いませんか?』


 あまりにも不思議な文章で何を言っているのか分からなかった。


「そのままの意味です」

「…………と、言いますと?」

「なんで分からないんですか」

「いや分かんねえよ普通は」

「……甘やかせ、ってことです」


 言いながら、綾乃は横に倒れて頭を俺の肩に預けた。隣に並んで飯を食うようになったので、そうやって触れるのは『簡単なスキンシップ』となってしまった。


「桐原さんってあったかいですよね」


 半袖を着て露出している俺の腕にそっと手を添えながら言う。


「綾乃が冷たいんだよ」

「私はもともと体温が低いので。もしかして、人肌をもっと感じるためだったのですかね?」

「馬鹿言うな。そもそも自分からあんまり触りにいかないだろ」

「でしたら、桐原さんの体温を感じるため?」

「それこそ馬鹿言うなよ……」


 呆れる俺を見て綾乃はクスクスと上品に笑う。


 残っていた最後のホットケーキを食べるため、体を起こしていても俺とぴったりくっつけるまで近づく。食べづらいからなのだろうが、それなら離れればいいのに……。


 綾乃はフォークを伸ばし、しかし刺す寸前でピタリと動きを止めた。


「桐原さん」

「……なんでございましょうか」

「子供扱い、してくれないのですか?」


 フォークを俺に渡しながら綾乃は言った。

 羞恥心を隠すのではなく、からかってくるのではなく、ただ純粋な笑顔を浮かべて聞いてきた。


「……子供扱い、嫌じゃなかったのかよ」

「桐原さんの子供扱いって、言い換えれば甘やかしてくれてるということだと思って」


 桐原さんに甘やかされるのは好きです。

 今回は、はにかむように微笑みながらそう言った。


 微かに照れる顔を浮かべる綾乃に、何故か無いはずの母性がくすぐられてしまって。


「ったく……今日だけだからな」


 渡されたフォークでホットケーキを刺し、綾乃の口元に運ぶ。あと、せっかくなのでホイップクリームも乗せておいた。


 ミニサイズで食べさせやすいのは、偶然の産物だったかもしれない。


「ん……おいひいへふ(おいしいです)

「それはよかったですお嬢様。けど、食べてから喋ろうな」


 そう言うと静かに味わい、幸せそうな笑みを浮かべる綾乃。かなり恥ずかしかったけど、この顔を見れただけで俺も小さく笑ってしまうのだから、安い男なのかもな。


「……ん、えへ……いいですね、これ」

「もうしない」

「えー、だめですか?」


 駄々こねる綾乃の口元を見ると、クリームがポツンとついていた。

 人に食べさせるなんてしたことなかったので、下手くそだったか……。


「ちょっと動かないで」

「へ……?」


 左手を綾乃の後頭部に回して支え、右手の親指の腹でそれをすくった。


 困惑した様子で固まる綾乃に、

「クリーム、付いてたよ」

 と言いながらそれを舐めた。


「……そういうところです」

「何が」

「桐原さんのズルいところ」

「物理的距離が近くなった綾乃の方がズルいと思いますー」

「人に甘えるのってすごくいいのです」

「……さいですか」


 過去の話を聞いた上でこの言葉を聞くと、その深みが増していた。しかもそんな過去をすごして、俺に心を開いてくれているのだから。


「あっ、いいこと思いつきました」

「本当にいいことなのかヒジョーに気になりますが、とりあえず聞こうか」

「一学期末テスト、終わったらご褒美ください」


 体育祭が終われば、学校の雰囲気は早くも期末テスト一色になっていた。

 七月上旬にテストがあって、その後二週間も経てば夏休みが始まる。時の流れが早いものだ。特に綾乃との日々が始まってから。


「それはもともと何かしようとは思ってたけど……まぁ、綾乃がそう言うのならそれでいきます」

「ふふ……やった。頑張る理由ができました」

「こんなのが理由になるのか……? ってか、これなくても綾乃は頑張ってるだろ」

「それでもご褒美があれば嬉しいというものです。絶対ですからね?」


 俺の頬に指を突き刺しながら念押ししてくる。

 正直、ここまで頼まれればテスト無くともやってあげたっていいのだが、ご褒美を求めてくる綾乃がやっぱり子供っぽくて可愛いので何も言わない。


 代わりに頭を撫でておく。


「むぅ……こういうのもご褒美にやってもらうものではないのですか?」

「じゃ、やめとく」

「……いじわる。やめるのもダメです」


 離そうとした手を綾乃が掴み、頬を擦り寄せてくる。肌と肌が触れ合い、思わずピクッと震えてしまう。


「そうだ。テストのご褒美、私も桐原さんに何かしてあげます」

「ほぉ~、それは魅力的な提案なことで。ちなみに例えば何をしてくれるんだ?」

「例えば……は、思いつかないですけど」


 そう言って苦笑する。

 思いつきで言ったことだったようだ。


「私にできることなら、なんでも」

「ッ」


 しかし、それがゆえに、とんでもないことを言い出した。


「…………まぁ、その。楽しみに待ってます」

「え、えぇ! 任せてください」

「俺も頑張ります」

「一緒に頑張りましょ」


 恥ずかしさが溢れ出してきたので、俺は無理やりこの話を打ち切った。

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