表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスのクール美少女が、俺の弁当以外は食べないと宣言した件について  作者: もかの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/27

第26話 言及はなし、です

 まぶたの上から感じる穏やかな光。

 そんな朝日で目を覚ました。


「…………え?」


 甘い香り。

 人肌の温もり。

 なぜか俺の膝の上にいる綾乃は、俺の背中に手を回して抱きしめていた。


 顔は見えない。俺に体を預けていて、肩に頭を乗せているからだ。

 麗しい黒髪が頬に触れる。押し付けられる女の子らしい柔らかな体は、思春期の男子高校生には居心地が悪かった。


「……どういう状況?」


 しかしあまりにも異質なので、逆に冷静になれたのは助かった。

 変な気を起こしてもおかしくない状況だし……。


「おーい綾乃……って、起こしたらマズいか」


 どいてもらって何があったか聞こうと思ったが、今起きたら何されるか分からんな……。


 今は日曜日の朝七時。

 学校もバイトもないし、綾乃が起きるまでゆっくりするか。

 ……なるべく早く起きて欲しい。


 そう願うこと二十分ほど。


「ん……」

「お。おはよう、綾乃」

「うん……ん?」

「お嬢様、朝ですよ。挨拶できますか?」

「ん……ふぇ、えと……おはよ……?」

「正解。おはよ」

「んふ……せいかい。おはよぉ」


 まだまだ意識は覚醒していないようで、声は聞こえてくるものの抱きつく姿勢はそのままだ。

 お硬いクールな雰囲気も眠気の前では消えていて、言い換えればふにゃふにゃになっていた。


「おはよ。挨拶は十分に分かったからさ、そろそろどいてもらうことは可能でしょうか」

「んー……、や」

「ダメかぁ……」


 綾乃に言われてしまえば無理に起こせない。

 もう少し待つことにした。



 ◇ ◆ ◇



「あの…………」


 スマホをいじって待っていると『クール美少女』の声が聞こえてきた。


「あ、起きた。とりあえずどいてもらえると非常にありがたいのですが」

「い、言われなくとも…………っ」


 綾乃はそそくさと立ち上がってソファに座る。

 こころなしか距離が遠い気がするが、正常な判断ができているようで安心した。

 本当に。


「それで、その、もしよければなぜ俺の上に綾乃がいたのかお聞きしたいのですが……原因俺?」

「えっと……まぁ、そうですね?」

「……土下座と何が必要でしょう?」

「い、いらないですっ……お互い言及はなし、で手を打ちませんか」

「…………俺が寝てる間になんかした?」


 今のって明らかにそういうことだよな?


「お互い言及はなし、です……っ!」

「えぇ……俺も昨日の話を持ち出されたら何も言えないから助かるんだけど……。やっぱ聞いちゃダメ?」

「絶対ダメです。言おうとしたら今日のことをクラスで偏向報道します」

「そ、それはかなり困るな……」

「……桐原さんの朝ごはんで許してあげます」


 綾乃はここぞとばかりにつけ込んでくる。


「それはなんとも安上がりなことで」

「至福の時間ですもん」


 恥ずかしさで顔を真っ赤に染めていた綾乃の顔がほころぶ。

 なんでもないように嬉しいことを言われてしまえば、言及する気も失せてしまう。


「では朝食をご用意いたしますので、ごゆっくりとおくつろぎくださいませ。あ、一回部屋戻る?意図せず泊まったし……」


 言いながら改めて思ったけど……綾乃が俺の家にお泊りしたと考えると、いろいろと別の恥ずかしさが湧いてくる。


「せっかくの休日ですし、桐原さんがよければパジャマで過ごしちゃいます」

「俺はいいけど……明るくなったらそれで部屋まで帰ることになるぞ?」

「…………たしかに」

「一回帰ったら? その間に朝飯作っておくから」


 今日はバイト入れてないし、別に一日中いたって俺は問題ないけど、綾乃が動きにくいだろう。

 まぁそもそも、どれだけ信頼されていようとも男の家にずっといるってのも、気分がいいものではないはずだ。


「…………昨日は離してくれなかったのに」


 しかし綾乃がそれを否定した。

 最悪の理由付けとともに。


「ねぇ俺ほんとに何したの……? やっぱ朝抱きしめてたのって……」

「言及はなしです」

「綾乃が掘り返したのに」

「桐原さんがズルいのがよくないです」

「聞きたいんだけど」

「だから私もずるく行きます」


 後ろから頰がつつかれた。

 昨日のことから明らかに接触が増えて心臓に悪いが、綾乃の言い方からして、抱きしめたのが俺からかもしれないので何も言い返せなかった。


「……俺も触るぞ」


 せめてもの抵抗だけしておく。


「触れるので?」

「…………綾乃ずるい」

「ふふ。夜以外は負けません。夜の桐原さんは……すごいので勝てないですが」


 聞く人が勘違いしそうな言い方をするな……。


「やっぱいいです」

「いいって……何が?」


 急に話題が変わり、聞き返す。


「家帰るの、大丈夫です」

「でもそれは綾乃が困るんじゃ……」

「今日はずっと、桐原さんと過ごしちゃいます」


 思わず振り返ると、はにかむ綾乃の姿があった。


 それを言われちゃ……なんも否定できないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ