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クラスのクール美少女が、俺の弁当以外は食べないと宣言した件について  作者: もかの


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第14話 クール美少女とおでかけ

「それでは行きましょうか」

「え、あ、う、うん……行こうか?」


 コンタクトと髪のセットをして綾乃の部屋を訪れると、先ほどの出来事が嘘のように落ち着いた姿ででてきた。


 さっきは間違いなく焦っていたし、俺だってめちゃくちゃ心臓がバクバクした。

 結局いまいち収まらなかった頬の照りは、夜闇のおかげで紛れているが、それも今の綾乃を見れば少し落ち着いたかもしれない。


「……別に、綾乃はついてこなくてもよかったんだぞ?」


 エレベーターに乗り込み、浮遊感を感じながら問う。

 質問、というより、恥ずかしい出来事の後でもついてこようとする意図を知りたかった。


「いつも助けてもらってばかりなので、少しでも手伝えることは手伝おうかなと思いまして」

「ふぅん?」


 エレベーターの扉を向いたまま説明する綾乃。

 俺はその肩につん、と触れた。


「ひゃっぁ!」

「お嬢様、私もあまり無理強いをしたくはありません。ですので、ご自身で本当のことを申してください」

「な、なんで分かったんですか」

「『クール美少女』だったから」


 綾乃はおばけでも現れたような声を上げて飛び退き、自分の身体を抱き締めながらしゃがみ込む。

 綾乃の声色が冷淡なものだったので、「必死にクールを装っているのでは?」と思ったわけだが、どうやら正解だったようだ。


「ほら、なんでそんなに付いてこようとしたんだ」

「い、言いたくないです」

「俺は綾乃の弁当をどうとでもできるけど……どうする?」

「う……いじわるな桐原さんは嫌いです」

「普段の俺は嫌いじゃないみたいに言ってくれるじゃん」

「? そうですけど……まぁいいです。話します」


 鈍器で殴られたような衝撃が襲ってくる。

 綾乃はなんでもないように「嫌いじゃない」と言ってくるのだから困る。

 俺には『クール美少女』というよりも小悪魔に思えて仕方ない。


「今会わなかったら、次に会うの明日じゃないですか。その時に今日のこと思い出したら……ずっと一人で照れちゃうな、って…………忘れてください」


 段々と声が萎んでいき、最後にはしゃがんだまま下を向いてしまう綾乃。

 つまり『クール美少女』としてのプライドということなのか。それなら俺の前でも保ってもらわないと、俺が困ってしまうのだが……。


「ま、まぁ、俺も思い出したらいろいろとマズいので忘れるけど……」

「今回もWin-Winです」

「それ好きだな綾乃」

「貸しを作ったりするのが好きではないから、ですかね。あまり考えたことなかったですが」


 マンションから出て、綾乃の半歩後ろを歩きながら近くのスーパーに向かう。


「明日のお弁当は何にするのですか?」

「まだ決めてない。せっかく綾乃が付いてくるんだから、綾乃の好きなものセットにしようかな、と」

「そんな……そんなに幸福なことがあってもよいのですか」

「よし、躊躇わなくなったのはポイント高い」

「ふふ、なんのポイントですか」

「桐原ポイントを一○点贈呈」

「なんと。それはぜひとも一○○点溜めないといけませんね」

「ま、まじ? 特典考えておかないと……」


 本気で考えようとした俺に、綾乃は振り返って微笑みを浮かべる。

 グレーでチェック柄のロングスカートに黒のニットというコーデながら、まるで夜に溶けない輝きは綾乃自身のものだろう。


「後ろ向いたら危ないぞ」

「子どもじゃないです。それに、もし何かあっても桐原さんが守ってくれるのでしょう?」

「……さぁな」

「ふふ。夜に女の子の後ろを歩いて守ってあげようとするの、ほんとお優しいですね」

「どうだか」


 綾乃には何も隠せないな、と改めて苦笑する。

 そうこうしていると、すぐにスーパーに辿り着いた。


「何にしよっかなぁ……」


 体育祭の途中に挟まる昼休憩。

 最も腹が減る時間の高校生が、満腹食べられるだけの弁当となると、献立にかなり悩む。


「綾乃って唐揚げ好き?」

「唐揚げというお料理として好きですが、量は食べられません」

「……そういえば綾乃って少食だったか」


 俺の前じゃそんなの欠片も見せなかったから、すっかり忘れていた。


「桐原さんのお料理が食べやすくておいしいのがズルいのです」

「別に何も言ってないけど」

「いえ、暗に大食いと言われました」

「俺はいっぱい食べる女子の方が好きだぞ?」

「もうそれ定型文です。信用なりません」

「そんなのありかよ……」

「でも、いつもの桐原さんを見てると多分本当にそうなので、今回は許してあげます」

「さすが、よく見てるな」


 ともかく、とりあえず唐揚げは確定として、あとは何にしようか。

 冷食も入れるけど、残り全部はなんというか……俺が許せない。


「あ、私あれ食べたいです。たまごやき」

「あ〜、前に作ったやつ?」

「ですです。ほどよく味付けされていて、口当たりも良くてとっても美味しかったので」

「食レポ上手いな」

「あときんぴらさんも食べたいですね。食材の味や食感が残されていて、ほんのりとついた辛味が癖になります」

「お前……これからもたくさん作ってやろう」

「ふふ、ありがとうございます」


 純粋な感想でおだてられた気がするが、まったく悪い気はしなかった。

 というか、綾乃としては本当にただ感想を伝えただけなのだろうが。


 純粋って意味でも、綾乃は『クール美少女』なのかもしれない。


「あ、それとポテサラさんも食べたいな……」

「…………綾乃って少食だよな?」

「? えぇ……」

「食べれる?」

「桐原さんのお料理なら、いくらでも」

「そうか……いや、それならいいんだが」


 前言撤回。

 俺はやっぱり小悪魔だと思う。

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