帝国を使って傲慢女の注意を向けて、隣国を攻め取ることにしました
ガンガラガッシャーン
ガラス細工の机が大きな音を立てて四散した。
力任せに叩きつけた杖が机を破壊してくれたのだ。
俺様はとても機嫌が悪かった。
折角小娘を捕まえたのに、愚かなハウゼンはその小娘を逃がしてしまったのだ。
我が方の優秀な魔導師3人も使い物にならなくなった。
本当にハウゼンは使えん。
俺様は切れていた。
折角小娘を餌に傲慢女を呼び寄せて、積年の恨みを晴らしてやろうと思ったのに、どうしようもなかった。
俺様は奴隷を鞭打って憂さを晴らした。
まあ、5人くらい使い物にならなくなったが、致し方あるまい。
「公王様、ハウゼン侯爵がやってきて、更に力を貸してほしいと申して参りましたが、いかがいたしましょうか?」
ノルトハイムに大使として出しているズンダーマンとの魔導通信の定期連絡で大使が尋ねてきた。
「我が方は既に3人もの魔導師を廃人にしているのだぞ。それもハウゼンの不手際のせいでだ。ハウゼンはその分を含めてどう補填してくれるのだ?」
俺様は不機嫌に話すと、
「金銭で補填すると申しておりますが」
「金銭は当然の事だな。それ以外は」
「公王様にアンハームの地を差し上げると申しております」
「あの傲慢女がいる地か? それは傲慢女をこちらで処分しろという事か? 自分が処理できないとからと言ってこちらに任せるとはそれはちと、虫が良すぎるのではないか?」
俺は鼻で笑ってやった。
「さようにございますな。やはりここは断りますか」
大使が頭を振ってくれた。
「うーんそうじゃな、まあ、待て、アンハームだけではなくて、ヨーク公爵領の飛び地とランプレヒト伯爵家の土地を寄越せと申しておけ」
「ヨーク公爵家の飛び地とランプレヒト伯爵家の土地ですか?」
「いずれも今は反第一王子派になっておろう。その土地ならばハウゼンにとって不要の土地のはずじゃ。それを飲めばこちらは魔導師団の魔導師100人を出してやると伝えるのじゃ」
「なるほど、それは素晴らしい案でございますな。直ちにハウゼンと交渉いたします」
画面から大使が消えた。
「宜しかったのですか? ハウゼンにそこまで加担して。失敗すれば我が国は窮地に立ちますが」
後ろで聞いていた宰相補佐のオッペルが俺様に確認してきた。
「構わんよ。我が方も少しはリスクを背負わんとな」
俺はそう言うとほくそ笑んだ。
「それよりも、確か隣国に赴任してきた帝国の野望に長けた将軍から共にノルトハイム王国に攻め込まぬかと申してきたの」
俺はオッペルに確認した。
「隣国と申しますと帝国の属国のラフォース王国でございますか」
「そうじゃ、アンハームで傲慢女が暴れるから魔物が流入して困ると何度もノルトハイム王国に抗議しているラフォース王国じゃ」
「ノルトハイム王国側もクリスティーネに遠慮してか全く何もせずと言うことでしびれを切らしたラフォース国王が魔物討伐の為に帝国に依頼して騎士団を送ってもらった曰く付きの騎士団ですな」
「その騎士団長がとても野心溢れる男だそうじゃ。少し示唆すれば、上手い具合に働いてくれるのではないか?」
「どのようにされるのですか? まさかその男の申し出を飲まれるのですか?」
「そうじゃ。帝国の申し出を受けるのじゃ。アンハームが落ちた暁には将軍に差し上げると」
「宜しいので。そのようなことを約束して」
俺様の言葉にオッペルは目を見開いてくれた。
「ハウゼンは俺にくれると申しておるのじゃ。それが別に帝国になったところで変わりはあるまい」
「なるほど、それでクリスティーネの相手を帝国にさせるおつもりですな」
納得したようにオッペルは頷いてくれた。
「そうじゃ。帝国が勝てばそれで良し。帝国が負けてもクリスティーネ怒りは帝国に向かうであろう。最大の危険分子を帝国に押しつけるのじゃ」
「確かにクリスティーネの対策はそれで宜しいかと存じますが、ハウゼンを助けて我が方は何のメリットがあるのです?」
オッペルが不思議そうに聞いてきた。
「それはしれた事じゃ。我らはその間にノルトハイムの王都を落とす」
俺様ははっきりと攻撃目標を話した。
「ハウゼンを手伝うのではなく、我が方が落とすのですか?」
オッペルは瞠目した。
「最初はハウゼンを手伝う。ハウゼン等が決起して奴らが邪魔者を全て一掃してくれるじゃろう。それを横で手伝う振りをして見届けた後で、ハウゼン等を一網打尽にすればそのままノルトハイム王国を奪えるわ。国を奪うのにこれほど楽なことはあるまい」
俺様はそう言うと笑った。そのためにわざわざ留学して知り合いを増やしていたのだ。俺様がノルトハイムの国王になればすぐに誼を結ぼうと寄ってくる貴族達は二桁では済むまい。
「果たしてそこまで上手くいきますかどうか」
「傲慢女さえアンハームに足止めできれば我が魔導師団に対抗できる輩はノルトハイムにはほとんどおるまい。なんとでもなろう」
「さようでございますな。クリスティーネをアンハームに如何に足止めするかでございますな」
オッペルは考え込んだ。
「まあ、あの傲慢女にしても今の国王夫妻には恨みしかあるまい。わざわざ助けに来ることは無いと思うぞ」
俺はそれだけは自信があった。
あの傲慢女は断罪されるときには余裕の顔をしていたが、心の底は屈辱で怒り狂っていたはずだ。その傲慢女に感謝されこそすれ、助けに来ることなどあり得なかった。
これでやっとディアナを儂のものに出来るのじゃ。ここまで十数年、本当に長かった。
「判りました。直ちに使者を送ります」
慌てて部屋を出ていくオッペルを見送りつつ、俺様はディアナを手に入れた後にするあれやこれを考えて1人笑っていたのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
ついに決戦の時来たり。
果たして公王の思い通りに話は進むのか?
続きをお楽しみください








