公王視点 想い人を手に入れるときが来ました
俺の名前はアナスタージウス・オストホフ、この魔導公国の公王様だ。
公王って何だ?
貴様等知らんのか?
王の中の王と言うことだ。
出来た時が小国だから周りに王と名乗るのがはばかられたからそう名乗ったとか、どこかの国の公爵が王と名乗りたくて言いだしたとかでは決してない…………
下らんことは良い。魔導公国はノルトハイム王国の北に領土を接する魔導国家だ。
国民の大半が魔術が使える。国土がノルトハイム王国の半分しかないが、魔術と言えば魔導公国とその名声は大陸の隅々にまで響き渡っていた。
その上我が国はその多くの魔術師の中から精鋭を選抜した魔導師団をもっており、その戦力は強力だった。我が国が戦って負けるのは広大な領土を持つ帝国くらいだ。他の国と戦争しても大半の国には勝ててしまう。
それが判っていて、何故今まで他国に戦争を仕掛けなかったかというと、父の代から仕える宰相のグランが何かにつけて文句を言ってきたからだ。魔物の流入を防ぐために、ノルトハイム王国に出兵するのも止められたし、元公爵令嬢の犯罪者を隣国のランフォース王国と共同で捕獲しようとしたときも反対された。
本当に忌々しい宰相だった。
しかしね何故か国民受けが良かったので、仕方なしに見逃してやっていたが、この度やっと死んでくれた。死の間際の遺言も隣国、特にアンハームには絶対に手を出すなと言う余計な一言だった。よぼよぼ爺が余計な事を言うな!
と俺は余程言いたかった。
まあ、良い。やっとこれで、爺が死んでくれて、好きに出来る。
かの憎きクリスティーネに仕返しをして、愛しのディアナを手に入れる時がきたのだ。
俺様はこの国の第二王子として生まれたが、元々魔力も多く、この国を継ぐ者として教育されていた。
そして、12歳の時に見聞を広めるために、隣国のノルトハイム王国に留学させられた。
そこで、当時の新進気鋭の魔術師、ヨーゼフをスカウトするように父から指示されていたのだ。
魔導公国は大陸最高峰の魔導の国だ。その次期国主の俺様自らがスカウトを申し出れば、ヨーゼフは喜々として俺様に付き従うと俺様は考えていた。
まさか、俺様からの申し出をそのヨーゼフが拒否するとは思ってもいなかった。
「アナスタージウス様。儂をスカウトするには少し足りませぬな」
一言だった。
何だと、俺様の何が足りないのだ?
美貌はこの大陸最高だと周りの側近共には言われ、100キロ近い体重は公王としての貫禄を既に備えていらつしゃると重臣共から認められている俺様に何が足りないというのだ?
その上、俺様はそのヨーゼフのクラスにさえ入れてもらえなかった。
未来の魔導公国を引き継ぐのが決まっている魔術師の俺様を受け入れないとはどういう事だ?
俺様は完全にぷっつん切れた。
しかも、奴のクラスには黒髪の傲慢な女のクリステイーネがいた。こやつは俺様が貴様は見目が良いから俺様のセフレにしてやろうと初対面の時に挨拶代わりに言ってやったら、俺様を張り倒してくれた傲慢女だ。
一応社交の挨拶に言ってやったのに、そのような凶暴なことをするとは、なんと言うことだ!
その女が奴のクラスにいるだと。
おのれ、俺様が傲慢女風情に負けるというのか?
俺様はその公爵家の娘のクリスティーネに決闘を申し込んでやった。戦う前に向こうから恭順の姿勢を示すかと奴のために思ってやったのだが、傲慢女がそんなことをしてくる訳はなかった。
そして、俺様はコテンパンにやられたのだ。
俺様が戦うのも何だからと俺様と一緒に留学してきた一番優秀な奴を傲慢女と戦わせたのだ。
そうしたらなんと傲慢女は油断した俺ごと雷撃で攻撃してくれたのだった。
完全に油断していた俺様が馬鹿だった。傲慢女にはルールなどという規則が通用しないのだ。
代理に出してやった男もクリステイーネからの攻撃を防げないとはふがいない。
必死に謝ってきたからその後も使い続けてやったが、こやつは本当に使い物にならなかった。
「本当に大したことはないわね。魔導公国の名前が泣いているわよ」
その時に吐いたクリスティーネの言葉だ。
俺様は絶対にクリスティーネを許さないと心に決めた。
俺はそれから虎視眈々とクリステイーネを倒す機会を狙っていた。
しかし、奴は帝国の皇太子とつるんでいて中々俺様が攻撃する機会を与えてくれなかった。
本当に卑怯な奴だ。
こちらはいつも成績優秀な魔導師を5人ほど護衛代わりに近くに置いて、機会を虎視眈々と狙っていたのにだ。
そんな俺様の興味を惹く女が出来た。
まさか俺様が平民の女に興味を持つことになろうとはその時まで想像だにしなかった。
桃色の美しい髪を持ったその女の名はディアナと言った。
いけ好かないこの国の王太子と仲良くしているが、この国の王太子の婚約者はあの傲慢なクリスティーネだった。
その王太子と仲良くしても無駄だと俺様は最初は親切心からこの女に教えてやったのだ。
「アナスタージウス様。私に忠告して頂いて有り難うございます。本当に私の事を思って頂いて嬉しいです」
俺様はここまで聞いて有頂天になっていたのだ。
「でも、私はアーデルベルト様を諦められないのです」
そう言ったディアナの言葉を俺様は聞いていなかった。
それから俺様は何度もその女ディアナにアプローチした。
花を贈り、何度もデートに誘ったのだ。
しかし、尽く断られた。
一度など魔導師を使って強引に連れてこようとしたこともあった。
しかし、その魔導師の前にあの傲慢なクリステイーネが現れて、我が魔導師を吹っ飛ばしてくれたのだ。
そして、俺様の顔の横に特大のファイアーボールを通過させてくれた。
「次にやったら殺す」
とクリスティーネは公国の公子の俺様を脅してくれたのだ。
でも、俺は傲慢女の脅しには屈しなかった。
傲慢女が絶対にいない隙を見つけてディアナを物にしようとしたのだ。
しかし、何故かそこに悉く傲慢女が現れて邪魔してくれたのだ。
そんな傲慢女も最後の時が来た。あまりにも傲慢女がディアナを虐めるから、ついにその婚約者の王太子から断罪されて、国外追放の目にあったのだ。
ざまあみろだ!
そうか、ディアナはこの傲慢女に虐められていたのか? 俺様がもっと早くに救い出してやれば良かった。
でも、これで邪魔者の傲慢女が消えた。
これでディアナを物に出来る。
俺様のディアナを邪魔な王太子から取り返そうと俺様が行動を起そうとした時だ。俺様は急遽公国に連れ戻れたのだ。
何故か激怒した父と宰相の元に。
俺様は即座に気に入りもしない妃を何人かあてがわれ仕事を与えられたのだ。
やっとその煩い父も宰相もいなくなった。
その存命中に何度かアンハームにいる傲慢女に仕返ししようとしたが、大半は父と宰相に止めれた。
唯一魔導師に命じて古代竜を暴れさすのは上手くいった。もっとも夫を殺された傲慢女が怒り狂ってせっかく上手く誘導できるようになった古代竜を処分されたのは誤算だったが……
父と宰相が死んでくれて、俺様は早速、ノルトハイム王国のお家騒動に介入することにした。
側妃の第一王子と、ディアナの産んだ第二王子が王太子の座を争っているとのことだった。
心情的にはディアナの第二王子に加担してやりたかったが、一度ディアナとその事で相談したいと、公国に呼びつけようとしたら、はっきりと断られた。
ならばやむを得まい。俺様は第一王子を応援することにした。
そして、俺様の意を受けた魔術師達の活躍であの傲慢女の娘を捕まえたという報告が上がってきた。
傲慢女をこの娘を餌に呼び出せばのこのこ出てくるだろう。
そこを捕まえてやる。
そして、俺様を馬鹿にしたことを心底後悔させてやるのだ。
そして、俺様は待ちに待ったディアナを手に入れるのだ。
「アナちゃん。やっと君を手に入れられるよ。本当に待った甲斐があった」
俺様は目を爛々と光らせて行動に移すことにしたのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございました
ついに黒幕の登場です。
続きをお楽しみください。








