この国一の魔術師のところに逃げ込んだら知らないおじさんに癒やし魔術をかけてもらいました
第三騎士団の建物は完全に破壊したはずだ。
まあ、それはどうでも良い。
重症のエーレンを何とかしないと!
でも、第三騎士団はこの国の機関で、私はそれに逆らってしまった。
下手したら国家反逆罪を適用されるかも……
エーレンを病院なんかに連れていっても、絶対に治してもらえないだろう。
どこに連れていけば良いんだろう?
本来はお母様のところに連れていくのが一番確実だ。お母様なら私達を守ってくれるはずだ。
いくら家出娘でも傷ついた娘をそのまま、出ていけとは言わない……いや、言わないよね……いや、言い出しかねない……
まあ、しかし、そもそもアンハームは今の私には遠すぎた。
もっと近場で探さないと。
後は……そうだ。ヨーゼフ先生のところに連れていこう! 確か、ヨーゼフ先生は癒し魔術も使えたはずだ。ここから近いし、ヨーゼフ先生なら私をかくまってくれるだろう。多分。
最悪、変な店に学園長と入り浸っていたと噂を流すと脅せば大丈夫だろう。
私はそのまま、エーレンを背負うと、学園に向けて駆け出した。
外に出たとたん、騎士達が騒いでいた。
「おい、これは貴様等の仕業か?」
私をにらんで止めようとしてくれた。
げっ、まだこんなにたくさんいたんだ。
でも、こいつらも馬鹿だ。私の前に立ち塞がるなんて……スタンピードの魔物の大群の前に身を投げ出すのと同じだ。
「退けーー!」
私は叫ぶと、そのまま、騎士達の中に突っ込んだのよ。
「「「ギャーーーー」」」
前にいた騎士達を強化した体で弾き飛ばしていた。
「アミちゃん!」
私を呼ぶ声がしたので、そちらを見ると、アリーナ公爵夫人達、お母様の親衛隊の皆様だった。
何故、ここにいるのか、良く判らなかったけれど……皆、武装しているのが、とても気になった。
「どうしたの? その格好は?」
ボロボロの私達の格好をみて聞いてくれた。
「こいつらにやられたんです」
私が騎士達を指さすと
「まあ、酷い! こんないたいけな女の子を皆で寄ってたかって暴行を働いたのね」
おば様達の視線が釣り上がったんだけど、
「いや、これは……」
騎士達は戸惑ってくれた。
「もう許しませんわ。皆さん、本気出して良いわよ。全員騎士の風上にもおけないやつらだわ。思う存分やってやるのよ」
夫人達が私と騎士の間に立ってくれた。
「おば様、今はこの子の治療が先なので、また」
「アミちゃん、ここは任せて!」
アリーナおば様が叫ぶと騎士達に向けて攻撃を始めたんだけど、良かったんだろうか?
「ここは良いから早く行きなさい!」
夫人達が叫んでくれた。
まあ、高位貴族のおば様方だし、後は旦那様達が何とかするだろう、と私はこの場を任せたのよ。
「お願いします!」
私はアリーナおば様に頼むと、エーレンを背負いなおした。
「児童誘拐犯共、かかってらっしゃい! このようなこと、第一王子や側妃が認めても、天は認めませんわ。天に成り代わって成敗……」
おば様方の時代劇に出てくるような威勢の良い叫び声を聴きながら、私は一気に加速した。
筋力強化した私はおそらくものすごく速く走れた。
あっという間に学園の壁についていた。
その学園の壁を一瞬で乗り越えてそのまま、魔術の塔の前に駆け込むや、
ドンドン
私は扉を叩いた。
でも、中々、誰も出てこない。
まあ、時間が時間だから仕方がないとは思うけど……
ドンドン
もう一度叩いた。
「こんな夜中に誰だ?」
聞きなれぬ声の男が扉を開けてくれた。
誰だろう? 騎士団の奴らが先回りしたのか?
ヨーゼフ先生以外は誰も魔術の塔にはいないはずなのに、この男は一体何者なんだろう?
私は攻撃しようかどうか悩んだ。
「おじさん誰?」
取り敢えず名前を聞いて上げたのだ。
「お、おじさん?」
なんか男はショックを受けたみたいだった。
「どうしたのじゃ、アミ、何じゃその格好は?」
後ろから寝巻き姿のヨーゼフ先生が出てきた。私はほっとした。同時に前の男を弾き飛ばして、ヨーゼフ先生に駆け寄ったのよ。
「ヨーゼフ先生。私はどうでも良いからエーレンをすぐに治して」
私はヨーゼフ先生になりふり構わず頼み込んだ。
「あ、アミ……」
倒れ込んだ男はとても驚いたみたいだったが、今はそれどころではない。
でも、私はエーレンのことが気になってそれどころではなかった。
「酷い状態じゃの。スタンピードにでも遭ったのか?」
「その方が余程ましよ。第三騎士団にやられたのよ」
私がむっとして言った。
「何だと、騎士団が」
男が瞬間湯沸かし器のように切れていたんだけど……
「レオ、起こるのは良いがそれよりも先に治療じゃぞ。貴様の方が儂よりも治療魔術は得意じゃろう。二人にかけてやれ」
「えっ、おじさん。治療魔術かけられるの? 私はどうでも良いからエーレンにかけて」
私は男にエーレンを向けた。
「判った。アミ! まさかまさか名前を呼べるとは……」
男が何故か私の名前を言って感動しているんだけど……
「おじさん早く!」
私はレオおじさんを急かした。
「判った。少し待て、しばらく癒やし魔術など使っていないからな」
男がぶつぶついいだしたが、
「おじさん、大丈夫? ヨーゼフ先生の方が確実なんじゃ」
私が心配して聞くと、
「話しかけるな。涙が出て来る」
男は言いながら涙流しているんだけど、本当にこのおじさんで大丈夫なの?
私が不安そうに見ると、
「ヨーゼフ、感激に浸るのはあとにせい。早くせんとその子はやばいぞ」
「判りました」
男は頷くと
「ヒール!」
私とエーレンに治療魔術をかけてくれた。
私はいらないって言ったのに!
でも、なんかとても暖かい魔術だった。
小さい頃お父様に抱きしめられた時みたいだった。
「あっ」
私はそのままふらついた。
さすがの私も限界みたいだった。
でも、そのレオとか言う人がエーレンごと私達を抱き留めてくれた。
「アミ!」
そういうレオおじさんの腕の中はとても暖かかった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
アミの前に現れたレオの正体は?
続きをお楽しみください。








