第一王子視点 平民女を捕まえて許しを請わせてやることにしました
「糞!」
俺は怒りのあまり握っていたグラスを地面に叩きつけていた。
ガンガラガッシャーン
グラスは下にあったテーブルごと四散した。
「おのれ、平民女め!」
俺は黒髪のあの生意気な女を許せないと思った。
彼奴は一度までならず二度までも俺に手を上げてくれたのだ。
父に母達が文句を言いに行ってくれたが、学園内のことは学園内でしか処理できないと、父が拒否してくれた。母が更にクレームをあげて、なんとか元平民王妃が対処してくれるという話だったが、母達はそれが信用ならないと王宮で平民女が王妃に襲いかかったという名目で平民女を拘束しようと画策してくれた。
しかし、それはヨーク公爵夫人等によって防がれたとか。
ヨーク公爵夫人は なんと、第一王子の俺といずれ王妃になる母に楯突いてくれたのだ。
いくら公爵家といえども俺様に逆らったらどうなるか、いずれ目に物見せてくれると俺は心に決めた。
俺が国王になった暁には罪をでっち上げてヨーク公爵家を取り潰してやる。
まあ、それやこれやもあの糞生意気な平民女のせいだ。
なんとしてでも、彼奴には仕返しをしないと俺の腹の虫が収まらなかった。
「まあ、ディートリヒ、あの平民女にはいずれ鉄槌を下してあげますから、今しばし我慢しなさい」
「母上。それはこの前も聞きました。その鉄槌とやらはいつになったら平民女に下してくれるのですか? いい加減に待ちくたびれてきました」
俺はむっとして母を見た。もういい加減に待つのも飽きてきた。
その待っている間にまたあの平民女にベルンハルトを投げつけられて俺様は怪我を負わされたのだ。
「いくら学園内とはいえ、これ以上あの平民女に好き勝手に振る舞わせると俺の威厳も何もあったものではありません。現実にあの平民女達は学園内を大きな顔で闊歩して、平民食堂で第一王子など何ほどのこともないとかほざいているそうですよ」
俺は2人にはっきりと現実を突きつけてやった。
「な、何ですって! 第一王子のあなたを蔑ろにする発言をあの平民女がしているのですか?」
さすがの母も怒り出した。
「あの平民女だけではなくて、周りの平民共も蔑ろにしてくれているのですぞ」
俺は報告に来たライナーの前で激怒したのだった。
「俺に生意気な態度を取ったその平民女を俺様の前に引きずり出せ」
と俺はライナーに命じたのだが、ライナーは平民女を恐れてか名前だけ告げて逃げるように去って行ったのだ。
「ビアンカとか言う文官の娘だそうですよ」
俺はそのライナーに聞いた名前を出していた。
「判りました、殿下。そこまで平民共が増長しているとは許しがたいですな。直ちに手を打ちましょう」
侯爵がいきなり言いだしてくれた。
「しかし、父上。どうするつもりなのです? 暗部の者はヨーゼフによって拘束されたのでしょう? あそこまでの魔術師達は中々揃えられぬと言うことだったでは無いですか」
母が侯爵に反論してきたが、
「実はのエミーリア。魔導公国のズンダーマン大使から是非とも殿下のお力になりたいと申し出があったのじゃ」
「魔導公国からですか?」
「そうじゃ。かの国は魔術の大家。多くの魔術師が国にはいるそうじゃ」
「それは力を貸して頂けるのは心強いですが、向こうには向こうの思惑がありましょう?」
母は慎重だった。
「まあ、そこは儂も他国の力を借りるのもどうかと思ったが、向こうはいたく殿下の事を買って頂いていての。公女を殿下の妻にしても良いとの申し出もあったのじゃ」
「まあ、そうなのですか? ディートリヒにも婚約者を宛がわねばと思っていましたから、丁度良いのは良いのですが、少し国の規模が小さいのではありませんか?」
母がケチをつけてきた。
「まあ、殿下に一番良いのは帝国の皇女殿下が婚約して頂ければそれに越したことはないのじゃが、あいにくと帝国には王女殿下がおらぬ。帝国の臣下の家からもらうとなると我が王国が下に見られてしまうし、どうしたものかと案じていたのじゃが、公国ならば確かに国の規模はこの国の半分くらいじゃが、魔術師の数は向こうの方が多いし、国力もある。殿下の後ろ盾としてはベストではないがベターではないかと思ったのじゃ」
侯爵は母に考えを述べてくれた。
「さようですね。お父様がそこまで言われるならば」
母も不承不承頷いてくれた。
「殿下はいかがですか?」
侯爵は俺の意志を尋ねてくれた。
「元々俺の婚約者は侯爵に一任しておる。侯爵がそれで良いのならばそれで進めてくれて構わん。それで平民女を本当に痛めつけられるのか?」
俺はそこを気にした。
祖父の話では公女の嫁入りは多少の難はあるが、認められないと言うほどの事もないと言うことだと俺は理解した。それならそれで良い……その公女が余程酷い女でない限りは。
気に入らなければ父みたいに側妃を持てば良いのだ。
手をつけている女はは既に2、3人はいる。後はどの女を捨てるかだ。
「それは問題ないかと」
侯爵は太鼓判を押してくれたのだ。
事実3日後には祖父は公国から公女を婚約させても良いという大公の内示と、呪術の魔術部隊を寄越してくれることになったと報告に来た。
俺はそれを聞いて平民女を捕まえる現場に是非ともいたいと希望を述べた。
「しかし、殿下、それは少し危険なのではありますまいか?」
侯爵が躊躇した。
「ふんっ、公国の魔術師が呪術であの平民女を無力化してくれるのであろう。処分する前に俺も恨みを晴らしたい」
と俺は希望をあげた。
「お父様。その後我が侯爵家に逆らったクリスティーネも処分するのでしょう。その前に私もあの生意気なクリスティーネの娘を甚振ってやりますわ。
あの女の娘だと思うと、せめて泣き叫んで許しを請うところを目に焼き付けたいですわ」
母も俺と同調してくれた。
「仕方がありませんな」
侯爵も最後は同席を認めてくれた。
決行日は試験の終わった日だ。
俺はその日が来るのを心待ちにしていたのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございます
ついに侯爵家と魔導公国の魔の手がアミに襲いかかります。
アミの運命や如何に?
続きをお楽しみに!








