母の親衛隊が学園で頼んでもいないのに全面的に応援してくれることになりました
「ディアナ! 大丈夫か?」
それから、今度は陛下が血相を変えて飛んできた。
公爵夫人とアナおばちゃんが私を巡って対峙しているところに、私達は全く無視してアナおばちゃんのところに駆け寄ったのだ!
アナおばちゃん一筋なのは今も変っていないみたいだ。
昔、アナおばちゃんが我が家で旦那に対してのろけていたのを覚えているけれど……と言うか恋敵だったらその母の前で絶対にのろけたりしないよね! そんなの母の前でやったら自分で死刑宣告するみたいなものだし……母もそれを聞いて「相も変わらずアナのところは熱々だな」と呆れていたし……本当に母と陛下とは何もないんだということは改めて判った。
「ディアナ、だから言っただろう。クリスティーネの娘なんて呼ぶから」
陛下が私の前で平然と言い出してくれたんだけど……
ちょっと待ってよ。それで無くてもアナおばちゃんと公爵夫人が私を巡って火花を散らしているのにそれに薪をくべるのは止めて!
「陛下、それは我がヨーク公爵家に喧嘩を売っておられると言うことですか?」
その言葉に公爵夫人が切れてくれて今度はそれを抑えるのがまた大変だった。
「これは公爵夫人ではないか」
陛下は初めて公爵夫人がいるのに気付いたみたいだった。
その態度に切れた公爵夫人よりも早く後の近衛騎士団長が反応した。
「アリーナ、お前が言いたいことは判るが、陛下はクリスティーネにはいろいろと迷惑をかけられてだな」
陛下に代わって後にいた近衛騎士団長が話し出した。公爵夫人の実家は近衛騎士団長の伯爵家で、近衛騎士団長は夫人の兄だった。
「はああああ! お兄様は何を言っているのですか? そもそも陛下の婚約者はクリスティーネ様だったではありませんか! それをディアナなんて言う平民にうつつを抜かした陛下が悪いのではありませんか? ……」
その言葉に完全に公爵夫人は切れてしまった。マシンガントークのように話し出したのだ。
正論なだけに誰も反論できなかった。それでも必死に騎士団長は公爵夫人を黙らせようとしたところが騎士団長の奥様が公爵夫人の援護に入ったことで撃沈。陛下を慌てた宰相が迎えに来るまで女性陣の集中砲火を浴びていたのだ。
「女どもが跋扈するなど嘆かわしい事だ」
ハウゼン侯爵が呟いたが、大量のご婦人方に睨まれてしまって黙ってしまった。
結局、私はアナおばちゃんともう少し話したかったが、おばさま方に囲まれてはそういうわけにもいかなかった。結局陛下まで出て来たのでなんか全てがうやむやになってしまったのだ。まあ、ハウゼン侯爵が第一王子の外戚という事もあって、侯爵は王妃に対する忠義で動いたという事になったみたいだ。
私の行動も手が滑ったという事で納めてくれたので私としては多少納得したが、おば様方は納得いかないみたいだったが……
次にやったら侯爵家を潰すと全員でシュプレヒコールをあげてくれていたんだけど……
私はおばさま方に引き連れられてそのまま学園に連れ帰られたのだ。
私は緊張するので、出来たら辻馬車か何かを捕まえて1人で帰りたかったんだけど、それが許されるはずもなく、誰の馬車に乗せるかでまた一悶着あって、結局アリーナおばさまの馬車に乗せられたのだ。
その後に何故か騎士団長の奥様のブリギッタお姉様とカミラお姉様が乗ってきて、馬車は一杯になった。そして、3人から矢のような質問を受けたのだ。
主に母についてだったが……最初は当たり障りないことを答えていたのだが、いい加減に飽きてきて、私は料理から炊事洗濯ありとあらゆる家事雑用をさせられている事や、訓練で千尋の谷に突き落とされたことなどを延々とばらしたのだ。
少しくらい母にかかっているフィルターが解けると思ったのに、
「まあ、じゃあ、アミちゃんのいない今は、家事をクリスティーネ様がされているのですか?」
「何て不憫な!」
とか母にだけ同情しだしてくれたんだけど、いや、そこは子供の頃からやらされた私に同情してほしいんだけど……それにあの人が家事をする事なんて絶対にない。前はお父様がしていたし、今は他の下僕にさせているに違いないのだ。
千尋の谷の話云々では
「実の娘にそこまでされるなんて!」
「本当にアミちゃんはクリスティーネ様に愛されているのね」
おばさま方、いやお姉様方はそう言いだしてくれたんだけど……絶対に母は私を一からちまちま教えるのが面倒だから、決死の状態にして、私の魔術の覚醒を促したに違いないのだ。
確かに死ぬとなったときに魔術が覚醒したけど、一つ間違っていたら確実に死んでいたわよ!
その後はヨーゼフ先生を呼び出して私に教えさせていたから。だから私に魔術の基本を全部叩き込んでくれたのはヨーゼフ先生なのだ。
「まあ、あの世界最高峰と言われるヨーゼフ先生をアンハームまでアミちゃんの為に呼ばれたのですか?」
「普通はヨーゼフ先生は頼まれても教えては頂けませんのよ」
「うちの息子にもお願いしたんですけれど駄目でした」
アリーナおば様まで言ってくれるんだけど……なるほどこの前ヨーゼフ先生が「儂に教えてもらえるなどとても幸運だと思え」と宣っていたけれどどうやら本当のことだったらしい。
それにヨーゼフ先生の講義料はとても高いのだとか。
知らなかった。
この前皆に教えてもらったときはお願いだけで終わらせてしまったし、うーん、この前、リックにもらったあのきれいな石をお礼として渡した方が良いんだろうか?
そうこうしているうちに馬車は学園について私はやっと解放されてほっとした。
でも、それは甘かったのだ。
そのまま何故か私は一年A組の前まで連行されたのだ。
A組では嫌みなリップマンが講義をしていたのに
「失礼するわよ」
強引に扉を開けて中に入ってくれたのだ。私を連れてぞろぞろと皆で10名くらいの高位貴族のお姉方も一緒に……
「ちょっとヨーク公爵夫人困ります」
嫌みが慌てて注意してきたけれど、
「すぐ済みますわ。あなた私達に逆らうの?」
逆にリップマンを睨み付けていた。
リップマンは青くなっていた。
話に聞くと昔は我が母に走り使いをさせられていたとか……そうか、それで逆恨みして私に冷たいのか?
私は母を恨みたくなった。
「フランツ!」
公爵夫人はお構いなしだった。
「母上! 今は授業中ですが……」
フランツはとても困惑していた。
それはそうなるわよね。
「我が儘な母を持つとお互いに苦労するわね」
私が後で言ってあげたら
「貴様のせいだろうが」
と逆ギレされたんだけど、酷い! 私も被害者なのに!
「すぐ済むわよ。あなた私達に何かあるの?」
実の母に凄まれてフランツは首を振った。
まあ、10人も高位貴族のご婦人方が見ているのに、何も言える訳はないわ。
「あなた判っているわね。アミちゃんは我が公爵家の人間です。王子だろうが侯爵だろがアミちゃんに手を出してきた者は徹底的に排除なさい。判ったわね!」
いや、止めて! 皆の前でそんなこと言わないで! 手を出してきたら私が対処するから!
私はそう叫びたかったけれど、おば様方には到底言えなかった。
「リップマン先生もご理解賜りましたね。もしアミちゃんに変なことしたら昔の事全部バラさせて頂きますから」
アリーナおば様は容赦なかった。何故か脅えたようにリップマンが頷いていたから、余程の弱みを握られているみたいだった。
「アミちゃん、これで大丈夫だと思うけれど、もし何かあったらすぐに私達に言いなさい」
アリーナおば様達はこう言うと去って行って、やっと私は解放された。
でも、その後お姉様方が、学園長室に突撃したとは知らなかった。
学園長は一緒に来たお姉様方10人に囲まれて私を王妃のもとに差し出すとは何事だと、お姉様方から二時間くらい集中砲火を受けたらしい。
「アマーリア、お前、何故あやつらを連れてきた!」
後で学園長から延々と愚痴を聞かされたんだけど、いい気味だと思ったのは秘密だ!
ここまで読んで頂いて有り難うございます。








