古代竜がぶつかってもびくともしないはずの魔術の塔を傾けさせて泣いていたら友達が迎えに来てくれました
私はなんか完全に切れていた。
「アミ!」
エーレンか誰かが止めようとしてくれたけれど、私は無視して廊下に飛び出したのだ。
何か王子の護衛らしい騎士達が私の前に飛び出してきたような気がするけれど……弾き飛ばした気がする。
基本的に私が駆けている時に前に出るのは危険なのよ!
アンハームの街では有名な事なのだ!
母に酷い目に逢わされて、「お母様なんてもう知らない!」って叫んで家から走り出る私を止めようとした親切な人は例外なく弾き飛ばされて……誰も私を止めようとする人はいなくなった……
そんな私を捕まえようとした酔狂な人さらいも当然弾き飛ばしたし……そいつらは全治三ヶ月の重傷を負っていた。
昔リックを傷つけられて怒り狂った私はスタンピードの大軍の中に真正面から突っ込んでそれを逆流させたこともある。
だから高々王国の近衛騎士くらいでは私を止められないのだ。
というか、やるなら王子を傷つけられる前に出てこいよと私は思った。護衛失格だ。まあ、魔物達にリックを傷つけられた私も失格だけど……ちょっと横の美味しいダンジョンリンゴに目がくらんでいたすきにやられてしまっただけよ。
その後お母様にどれだけ怒られたか…………
あれっ、お母様はリックにも愛情をかけていた?
まあいいや、それは……
何しろあの世界最強を自慢しているヨーゼフ先生ですら「発狂したアミを止めるなんて危険なことはせんわ」とお手上げの状態なのだ。
そんなことをチラリと考えたからだろうか
ドシーーーーン!
私は魔術の塔に激突したのだ。
流石に魔術の塔、私にぶつかられても倒れなかったのは凄い!
私は下らないことに感激していた。
「うわーーーーん」
私は何故か大声出して泣いていた。
なんか世界が滅亡しようとするかのごとき大声で泣いていて大変だったようだ。後でヨーゼフ先生にどれだけ怒られたことか…………
なぜだか無性に悲しかった。
リックに裏切られたような感じだったのかもしれない。
リックが第二王子だとリックから直接話されたのではなくて、他の者から聞いたのがショックだったのかもしれない。平然と母から口止めされていたから言わなかったとリックに私よりも母を優先すると言われたからかもしれない。
私の中のリックに対する信頼が損なわれたんだと思う。
昔はほっておいたら本当に死にそうで、私が必死に魔物から守ってやっていたのに、実は秘密を抱えていたなんて許せなかった。
高々リックのくせに!
私は完全に切れていた。
「隕石でも衝突したのかと思ったらアミか! 一体何事じゃ!」
ヨーゼフ先生の叱責が聞こえたが、私は無視した。
「おおおお! 嘘じゃろう! 魔術の塔が傾いているではないか! 古代竜が体当たりしてもびくともしない守りの魔術をこれでもかとかけていた魔術の塔が……アミどうしてくれるのじゃ?」
私は横でなんかヨーゼフ先生が叫んでいたが、全く聞いていなかった。
「リックのバカバカ!」
私は怒りで塔を叩いていたのだ。
「アミ、止めろ、本当に塔が崩壊する!」
恐怖に震えたヨーゼフ先生の声が聞こえたような気がしたが、私は無視した。
そのまま泣いていたら、いつの間にかいなくなっていた。
昔からリックは何も出来なくて、剣術も魔術も私が教えたのだ。
もっともリックは物覚えが悪くてほとんど出来なかったけれど……
「それはあなたの教え方が酷かったんじゃないの?」
前に話したときにエーレンに言われたが、そんなことはないはずだ。
まあ、リックの「何故そうなるんだ?」の質問にはほとんど答えられなかったし、
「詠唱なんて必要ないわ。心で念じて、えい、や! で終わりよ」
としか私は教えなかったが……
「どこが教えているのよ」
ってエーレンに呆れられたけれど、それ以上どう教えようがあるのよ!
「あんたは人には教えない方が良いわ。前もそう思ったけれど」
エーレンに完全に馬鹿にされてしまった。
うーん、魔術は良く考えたことなんかなかった。転生者だからチートで出来るからかな?
泣きながら昔のことを思い出していたら、
「アミ、大丈夫?」
エーレンが迎えに来てくれた。
「エーレン!」
いい加減塔の壁を叩くのに飽きていた私はエーレンニラ抱きついた。
塔からほっとしたため息が聞こえたような気がしたけれど、気のせいだ。そうかヨーゼフ先生のため息だったのかもしれない。
「ギャッ、アミ、苦しい!」
エーレンが悲鳴を上げてくれた。変ね、加減したつもりなのに!
「あんたは馬鹿力なんだから、そっと触るくらいが丁度良いのよ!」
って後でエーレンに文句を言われたけれど……馬鹿力って何よ! 大人しい控えめな淑女を捕まえて!
そう言ったら、呆れた顔をされたんだけど……何故に?
私はエーレンとそれを遠巻きに壊れ物を見るような感じでついてきていたエッダとビアンカと一緒に寮に帰ってそのままベッドに入れられたのだった。








