リックに市場を案内されて、白い塔の上で将来の夢を手伝ってほしいと頼まれました
「えっ?」
休みの日に待ち合わせした校門でリックが目を見開いてくれた。
なんか少し固まっているんだけど……
私はビアンカ達によって例のごとく、いや、この前以上に着飾らされていた。
嫌だって言うのに軽く化粧までされていたのだ。
「やっぱり変だよね。直してくる!」
私があわてて、部屋に戻ろうとしたら、
「ちょっと、待った!」
その腕をリックに引かれた。
「アミが化粧していたから一瞬誰かわからなかったよ。でも、それだけ素敵だから」
リックが、そう言ってくれたけれど、
「変じゃない?」
私が再度聞くと、
「全然変じゃないから。寧ろ素敵だよ。可愛い感じで」
「それならよいけど、化粧なんてなれていなくて」
「いつものアミも素敵だけど、化粧したアミもきれいかな」
さらりとリックが褒めてくれた。
「よいしょしても何も出ないわよ」
「別にお世辞なんて言っていないさ」
そう言うリックが眩しかった。
「じゃあ、行こうか、僕のお姫様」
リックはそう言って手を差しのべてくれた。
「えっ」
私は少し戸惑ったけれど、
「はい、私の王子様」
私はリックの手を取った。
リックの手は昔のように柔らかくはなくて、剣だこで固くなっていた。
そのまま、リックは私を馬車の中までエスコートしてくれた。馬車はこの前と同じで紋は入っていなかった。でも中はとても重厚で豪華だった。絨毯まで足下には敷かれていたし。何回か他の馬車に乗る機会があったけど、これだけ立派な馬車は中々なかった。
そういえばリックの家の爵位は何なのだろう? 前回聞いた時は教えてくれなかったけれど、とても気になった。この立派な馬車を見ただけでも、男爵家や子爵家ではないような気がしたし……
そんなこと考えていたら馬車は市場に着いた。
「さあ、着いたよ、アミ」
真っ先にリックが降りて、私を降ろしてくれた。
うそ、市場なんて庶民の私にぴったりかもしれない。
私はリックが私に合わせて行くところを選んでくれたのが嬉しかった。
貴族街なんかに連れて行かれなくて本当に良かった!
市場の馬車の降車場は中々混んでいた。
「迷子になると困るから」
そう言うと、そのままリックは私の手を引いてくれた。
「えっ、迷子になんてならないわよ」
私がそう文句を言うと、
「昔そう言って俺の手を引いてくれただろ!」
そう言えばそういう事があった。アンハームの街もこことは比べものにならないけれど市場があったのだ。そこにリックを連れていった時は、私がそう言って手を引いていたと思う。
「これはそのお返しさ」
そう言われると断れなかった。
さすが王都の市場はアンハームとは比べられないほど混雑していて、リックの手を離したらはぐれそうだった。私は強くリックの手を握った。
人混みの中をリックと一緒に見て回った。
中にはいろんな物が売っていた。国外の貴重な物とかもあって結構楽しめた。
でも、私が一番気になったのは美味しそうな匂いのする串焼きだった。
「あっ、リック、少し待って」
そう断ると、
「おじちゃん串二本ちょうだい」
私が財布をポーチから取り出そうとすると、
「えっ、アミ、俺が出すって!」
「何言っているのよ。今日は私のお礼なんだから私が出すわよ」
お金を出そうとするリックにそう断ると私は強引におじさんにお金を渡したのだ。
「兄ちゃん。きれいな彼女を連れているね」
「やだ、おじさん、そんなこと言ってもこれ以上は買えないわよ」
「それは残念だ。はい、二つ」
おじさんは笑って串を一つずつ私達に渡してくれた。
「美味しい!」
私は歩きながら熱々の串にかぶりついた。
「本当に美味しいな」
リックも頷いてくれた。
「そう言えば昔もアンハームの街で串焼き食べたわよね」
頬張りながら行儀悪く私が言うと
「そんなこともあったな。その時は確か一本の串を半分にして交互に食べたよな」
「そうだったわね」
私はタレを落とさないように注意して頷いた。
「こういう時にきれいな服は汚さないように食べるのが大変なのよね」
「だから、アミはいつもジャージだったよね」
「今でもそうよ。今日はエッダ等がデートだからちゃんとした服着て行けって許してくれなかったんだよね。私とリックの間なんだから服なんて気にしなくて良いのに!」
私がブツブツ文句を言っていると反応が全然ないので、リックを見ると少し赤くなっているんだけど……
「えっ、どうしたの、リック?」
「いや、昔、服を汚して帰ってアミのお母様に怒られたことがあったなと思って」
首を振ってリックが答えた。
「そんなこともあったね、あっ、今度はあのクレープ食べたい」
私は横の美味しそうなクレープを見つけてリックを引っ張っていった。
「いや、アミ、今度は俺が払うから」
「駄目だよ。今日は私のお礼なんだから私が払うからね」
そう言うとここも私が払った。
まあ、屋台くらいなら私でも払える。
私はリックのチョイスに感謝したくなった。
小腹がいっぱいになった私はリックに引かれていつの間にか前に登りたいと希望した白い高い塔の前にいるのに気付いた。えっここまで連れてきてくれたと言うことはひょっとして上に登れるんだろうか?
「少し待っていて」
リックはそう断って、塔の前で警備している兵士の所まで歩いて行くと何か書き付けを見せていた。
最初はこちらを胡散臭そうに見ていた兵士も、その紙を見ると表情が変った。
「さあ、どうぞ」
なんと私達を中に入れてくれたのだ。
「えっ、良いの?」
私がリックを驚いて見ると、
「この塔は我が家が管理しているから、問題なく入いれるんだ」
そう説明してくれるとリックは私の手を引いて階段を登ってくれた。
階段は結構長かったけれど、日々トレーニングしている私には楽勝だった。
塔の高さは百メートルを超えていた。
途中までは階段の数を二人して数えたけれど、あまりにも多いので諦めた。
やっとついた屋上は屋根付きの展望台みたいになっていた。
そして、そこからは王都全体が一望できたのだ。
下に動いている人が見えたが豆粒のように小さかった。
「凄いね、リック、王都が全て見えるよ!」
私は手を広げて感激した。
「あっ、あのきれいなのが大聖堂だよね。下に見えるのは市場だし、遠くに王宮も見えるよ」
私はリックの前でお上りさん宜しくはしゃぎ回っていた。
「ほら、アミ、あれが魔術学園じゃないか」
「本当だ。あっ、私のいる寮はも見えるよ」
私達がいつも生活している魔術学園も遠くの丘の上に見えた。
私が一通り見て終えて、感動していた時だ。
「どう、満足した?」
リックが聞いてきた。
「リック、ここに連れてきてくれてありがとう。まさか本当に登れるなんて思ってもいないくて、大満足だよ」
私は目を輝かせてリックにお礼を言った。
「アミ、この塔には昔から時々くるんだ。なんかここにいるとこの国の天辺にいるような気になるだろう?」
「そうね。私もそんな感じがする」
私はリックに頷いた。
「そして、ここにいたらここから見える景色を守らないといけないと思えてくるんだ」
リックが何か大きな事を言いだしてくれた。まあ、確かにリックはこの国のお貴族様で、騎士団か何かの関係者なのかもしれない。そう考えたら、リックの言うことも頷けた。
「そして、俺はここから見えるこの国の人や街を守りたいんだ」
リックが将来の夢的な事を語ってくれた。
「へええええ、そうなんだ。それは凄いね」
私は単純にリックが将来的に騎士か何かになってこの国を守りたいと言っているんだと思った。
「アミも俺が手伝ってほしいと頼んだら手伝ってくれるかい?」
だから、リックがそう聞いて来た時も軽い気持ちで答えた。
「出来ることならやるわよ。この国は私の国でもあるから」
私は軽い気持ちで頷いていたのだ。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
リックの立場とアミの立場微妙に違う二人が合わさる時はあるのか?
ここから山場に入ります。
お楽しみに!








